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じゃくまる

ノームの問題

 ボクたちはゆっくりと屋敷への道を歩いていく。
 後ろにはミアとルードヴィヒさんがいる。
 鍛冶の話をした時のエダムさんはなんだか辛そうに思えた。
 腕に自信がある職人なら、自分から『落ちぶれた工房』などとは言わないと思う。
 一体何があったんだろう。

「お嬢様、申し訳ございません。エダムは腕のいい鍛冶精霊でしたが、いつからか鎚を振るうことができなくなってしまったのです。エダムは現在齢三百歳です。直接の原因はおそらく絆の要塞の稼働停止とそれに伴う技術の要塞の連鎖的停止だと思われます。ただ、それでも百年ほどは変わらずいい仕事が出来ていたのです」

 この世界が汚染されたのはおおよそ二百年前と言われている。
 その後百年、エダムさんが変わらない仕事ができていたのだとすると、原因はほかにあるのかもしれない。
 お酒持って行って、話を聞いてみる方がいいのだろうか?

「ご主人様、ノームは偏屈者ですが、仕事に対してはプライドを持っています。利用されるだけの歴史がある以上、アルケミアスライムとしてはノームは好みません。が、今のままではご主人様が求めているものは手に入らないのではないでしょうか?」
 ミアはボクに自分の事情と感情を打ち明けてくれる。
 ノームにとっては、何でも錬金できる生命体であるアルケミアスライムはどうしても欲しい存在だろうと思う。
 それでも何とかしようと考えてくれる時点で、ボクのことを最優先で考えてくれてるのだとわかる。

「そうだよね。ボクの装備はボク自身が作らなければいけないものもあると思うんだ。だからやっぱり技術を学ぶことは大事だと思う。精霊鍛冶屋ってきっとほかにはいないよね?」

「精霊鍛冶屋はほかにもいることはいます。ですが、エダムは他より頭一つ分抜けていると考えて間違いはありません。もしよろしければ、エダムを助けていただけないでしょうか?」
 ルードヴィヒさんのお願いに、ボクはどう答えるべきだろう?
 邪険にされたということは、気にするほどでもないというか、頑固職人さんというそのままのイメージの人だったので怒る気にはならなかった。
 でも、ボクにはどうすることもできないよね。

「引き受けたいのはやまやまなんですけど、ボクにもどうしていいかわかりません」

「出過ぎた真似を致しました。もしよろしければでいいので、頭の片隅にでも置いていていただければ結構です。その時、何かお礼になるものもお出ししたいと思います」
 ボクの返答に気を悪くすることもなく、ボクのことを優先的に考えてくれているようだ。

「あっ、そうだ。もうレベル20になったんだよね。ゴブリンアーミー召喚術師戦でたくさん経験値手に入れたんだよ」

「おぉ、なんと目出度いことでしょう。二次転職が可能になると聞き及んでおります。突破された際にはパーティーを開くといたしましょう」

「おめでとうございます。新しい職業になるご主人様ですか。戦力アップは確実でしょうけど、どんな職業になるのかとても楽しみです」
 ボクの報告に、ルードヴィヒさんもミアも嬉しそうにお祝いの言葉をかけて来てくれた。
 とりあえず帰ったら、真っ先に転職方法を調べないといけないね。


*******************


 屋敷に辿りついたボクは、ルードヴィヒさんのエスコートで扉をくぐった。
 ミアまで入ると、ぱたんと扉を閉め、すぐに前へと移動する。

「カルナ、お嬢様に何か飲み物を」
 気を利かせてすぐに声を掛けるルードヴィヒさん。
 少ししてトレーの上に飲み物入りのグラスを載せたメイド長のカルナさんがやってきた。

「お帰りなさいませ、サロンまでお持ちいたします」
 トレーを傾けずにぺこりとお辞儀をしたカルナさんは、ボクたちの後を歩きサロンへと向かった。

「う~ん、問題山盛りって感じだね。まずはエダムさんのやる気を出させる方法か」
 正直言えば、ボクはノームという精霊がどんなものを好むのかを知らない。
 本人はドワーフのように酒を持ってこいと言っていたけど、それだけでいいのだろうか?

「どうぞ、お嬢様」

「ありがとう、カルナさん」
 カルナさんは果実水を目の前に置くと、ぺこりと一礼し去っていく。

「フルーツフレーバーの水かな? いただきます! うん、おいしい!!」
 ボクは果実水を一口口に含んだ。
 水がいいのか、とても飲みやすく、リンゴのような風味と甘みが口いっぱいに広がっていった。
 味はリンゴに近いので、たぶんリンゴだと思う。

「お気に召したようで何よりです」
 ニコニコと微笑みながらそう言うルードヴィヒさんは、サロンに常備されている棚からクッキーを取り出してボクたちの目の前に置いてくれた。
 一口サイズの小さなクッキーがたくさん器に入っており、ボクはそれを一つ摘み上げると口に入れる。
 うん、程よい砂糖の甘さが最高です!

「ご主人様は美味しいものを食べるととても可愛らしい笑顔になりますね」

「ふへ?」
 クッキーを頬張るボクを見て、ミアが急にそんなことを言いだす。
 思わず口に物を入れたまましゃべってしまったじゃないか……もう。

「いつも見ていて思っていましたから。コノハ様やマイア様も同じように可愛らしい笑顔になりますしね」
 たしかにミアの言う通り、無表情なコノハちゃんも表情豊かなマイアも、美味しいものを食べると表情が緩んでいるっけ。
 特に甘いものが好きで、途端に笑顔になるのは何度も見ている。
 個人差はあるけどね。

「まぁ、美味しいものを食べると幸せになれるしね! ミアたちはほとんど食べないけど、もし味覚があるんだったら色々な物を食べてみるといいと思うよ?」
 ボクがそう言うと、ミアはクッキーを一つ摘み、口に入れた。
 そして一言、「味覚は難しいかもしれません」とだけ言って苦笑する。
 それから少しの時間、ボクとミアはエダムさんについて話をした。
 何が原因でやる気を失ったのか、何を出せばやる気がわくのか。
 ルードヴィヒさんの意見も聞いてはみるものの、原因不明なのでやはり解決策は出てこなかった。
  
「あっ、クッキー!」
 ひょっこりサロンに顔を出し、クッキーを見つけて指をさして叫んだのは妹のマイアだった。 
 その妹をよく見てみると、少し寝ていたのか服にしわがついている。

「食べる? というか寝てたの?」
 とてとてと歩いて近づき、お行儀悪くクッキーの入った器に手を伸ばすマイア。
 一枚だけ摘むと、口にぽいっと投げ入れた。

「おいひぃ。おふぇーひゃんほこひっへはほ~?」
 口の中でクッキーを転がして遊びながら、ボクにどこに言ってたのか尋ねる。

「もう、食べてからしゃべりなよ。ちょっと精霊鍛冶屋さんを見に行ってたんだよ」

「んくっ。ふぅ。なかなかおいしいクッキーだね。精霊鍛冶屋さん? もしかしてエダムさんとこ?」
 クッキーを散々転がして遊んだあと、咀嚼して飲み込んだマイアは、ボクの方を見ながらそんな名前を口にした。

「えっ? うん。知ってるの?」
 思わぬ名前が出たことにボクはびっくりしていた。
 まさかマイアがエダムさんを知っているとは。

「うん、知ってるよ? というかお兄ちゃんとアモスさんが鍛冶屋さんの前に居た時、近くで話しているのを聞いてたんだよね」
 ニコニコと微笑みながら知った経緯を話すマイア。
 なんだかボクよりも活発に活動している気がするのは気のせいだろうか?

「へぇ~。その時はアーク兄たちは何か作ってもらってたの?」
 その時の話を聞いてみると、マイアは口許に指を当て「う~ん」と悩み始めた。
 しばらく悩んだ後、マイアは一言「断られてたよ」とだけ教えてくれた。

「アーク兄たちでもだめだったのか。でもなんで?」

「えっとね、何か大事なものを失ったらしいよ? それがないと何も作ることができないんだってさ」
 妹の口から思わぬ情報が飛び出してきた。
 どうやらその「何か」を手に入れれば、エダムさんは鍛冶の仕事をしてくれるようだ。

「でも、それが分からないとどうしようもないよねぇ」
 何かを手に入れる必要があることまではわかったものの、その何かが何なのかわからないので、結局また悩む羽目になるのだった。
 

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