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工房のノーム
巫女服姿で一日を過ごすことになったボクではあるけれど、今回は色々とやることがあるので隠れてもいられなかった。
恥ずかしいけど、仕方ないと割り切るしかないよね。
「ねぇルードヴィヒさん」
ボクはお茶を用意しているルードヴィヒさんに声を掛ける。
ルードヴィヒさんは紅茶をカップに注ぎながら、首をこっちに向けて「はい、いかがなさいましたか? お嬢様」と問い返してきた。
「この郷には鍛冶師とかはいたりするのかな? ボクのスキルには鍛治知識があるんだけど、鍛冶スキルを覚えるためにもちょっといろいろ教えてもらいと思って」
すると、ルードヴィヒさんはやや考えるしぐさをした後、一つの案を提示した。
「いるといえばいますが、偏屈者のノームでございます。不快な思いをするであろうことは想像に難くないので、おすすめは致しません」
温厚そうなルードヴィヒさんがそこまで言うくらいの人という時点で、怖いもの見たさというか興味を引かれるものがある。
いい結果にならないだろうなと思いつつも、ボクは案内を頼むのだった。
「ちょっとだけでいいんです。お願いできませんか?」
胸の前で両手を握り合わせてお願いのポーズを取る。
ちょっとわざとらしいかな? と思いつつもそうした方がいいかなと思ったので実行する。
「うっ。お嬢様にそうまでお願いされては、断るのもおかしな話でしょう。仰せのままに」
ルードヴィヒさんは左手を前にして腹部に当て礼をする。
優雅なその所作に、ボクは思わず見惚れてしまった。
「いかがなさいましたか? お嬢様」
ボクが見ていることに気が付いたのか、ルードヴィヒさんは微笑みながらそう問いかけてきた。
「あはは、なんでもないですけど、ただちょっと所作が綺麗だな~って思ってたくらいだし」
なんでもないとは言いつつも、所作を見ていたことについて話してしまった。
「ありがとうございます。私が通っていた侍従学校では王侯貴族にも対応できるように、色々な礼儀作法を学ばされます。いえ、学ぶことができると言うべきでしょうね。やらされているという考え方は執事や従者にとって毒以外の何物でもありませんので。それでは参りましょうか」
軽くルードヴィヒさんと会話した後、ボクたちは屋敷の外に出た。
するとそこへ、ミアが現れた。
「ご主人様? ルードヴィヒさんとどちらへ行かれるのでしょう?」
ミアはボクたちを見やると、そんな質問を投げかけてきたので、簡単に経緯を伝える。
「なるほど、それでそのノームに会いに行こうというのですね? 差し出がましいかもしれませんが、よろしければ私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
ミアは控えめに言いつつも、一緒に行きたいとはっきり伝えてきたのでボクは当然許可を出す。
すると、ミアは嬉しそうに頷きながら「ありがとうございます、ご主人様」と言って、ボクの後ろに回った。
この村は自然と共存している村ではあるものの、道は石畳が敷かれていて街のような雰囲気になりつつあった。
土木をメインにしている職業精霊が担当しているということだったが、自然重視の村といった雰囲気にしなくてもいいのだろうか?
「不思議に思われているようですが、私ども精霊は、故郷の精霊界では人間と変わらない過ごし方をしています。ですので、街といったものも作り住みやすくしているのです。完全に自然そのものの中で生活しているのは元素精霊くらいなものではないでしょうか? とはいえ、必要以上に傷つけない、汚染に繋がるような行為はしないというのが大前提ですので、出来るだけ自然をそのまま取り入れるような作り方をしています」
精霊はやはり精霊ということなのだろうか?
人間なら汚染を顧みない開発もしばしば行ってしまうだろうと思う。
隣の芝生は青いから同じようにしたいという気持ちが、過度な汚染に繋がった例はいくらでもあると思う。
そういう意味では、ボクたち妖種は文明的に遅れているのだと思う。
なぜなら、精霊達と同じように自然ありきで開拓と開発を進めているからだ。
ボクたちの話を興味深そうに聞いているミアは、自分の意見をあまり言わない。
でも、彼女も自然と共存する精霊である以上、無縁とは言い難いかもしれない。
別の意味で汚染されていた過去もあるわけだしね。
ボクたちは石畳の道を歩き、屋根はあるものの、開放的な作りの工房へと到着した。
完全に壁で囲まれてはおらず、雨風凌げる程度に覆われたその工房では、体ががっしりとした、ボクくらいの身長の男性が椅子に腰かけて休憩していた。
「こんにちわ、エダム」
ルードヴィヒさんが工房の主と思われる男性に声を掛けた。
男性は瞑っていた目を開けると、ボク達を一瞥する。
「娘っ子どもとルーか。何の用で来た?」
エダムと呼ばれた男性はぶっきらぼうにそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。
「相変わらずですね、エダム。こちらは私がお仕えしているお嬢様の、スピカ様です。そしてこちらがその使い魔のアルケミアスライムのミア様です」
「ど、どうも……」
(ぺこり)
ボクはおっかなびっくりといった感じで挨拶をする。
ミアはただぺこりと頭を下げるだけだった。
(どうしたの? ミア)
(いえ、問題はありません。ただ、ノームとはいささか相性が悪いと言いますか……)
念話で確認すると、ミアはやや言葉を濁して話す。
スライムの精霊にも相性の悪い相手がいるのかぁ。
「アルケミアスライムだと? だとしたら、特殊な金属も作れるはずだよな?」
ずいっとミアに迫りながらそう言ってくるエダムさん。
特殊な金属がご希望なのだろうか?
「作れないことはありません。ですが、材料がなければどうすることもできません。それに、特殊な金属を作ったところで、今の貴方たちに利用する術はないと思いますが」
少し不機嫌そうに、でもはっきりとそう伝えるミア。
それを聞いたエダムさんも不機嫌そうに鼻を「ふん」と鳴らす。
「確かになぁ。ただこのマンネリ化した状態を抜け出すくらいはできるかもしれんと思っただけだ。あまりにも高度なものは技術の要塞が停止している以上、作ることはできんしな」
腹立たし気にそう話すエダムさんの表情は暗かった。
怒っているのだろうけど、それ以上のやるせなさがあるようだ。
「んで、そこの娘っ子はなんだ? 何の用があってこんな落ちぶれた工房に来た?」
ボクの方を見ながら威嚇するかのように強めの口調で問いかけてくる。
とりあえずボクのやることはただ一つだ。
ご機嫌取りは趣味じゃないのでやらないけど、スキルを伸ばすためにも必要なので当たって砕ける覚悟で突っ込んでいく必要がある。
「鍛冶スキルを学びに来ました」
「はっ! 学びたいだって? そんな細い腕で鎚がふるえるのか? いいか、工房は遊び場じゃねえんだ! わかったら帰りな」
どうやら門前払いのようだ。
たしかにボク自身の見た目は細いもやしのような感じかもしれない。
そう言われるのも納得できる部分があるのは悔しいけど……。
「エダム、お嬢様に力を貸してもらうことはできないのか?」
ルードヴィヒさんとエダムさんは付き合いが深そうに思えた。
一体どんな知り合いなんだろう?
「いくらルーの頼みとは言っても無理なものは無理だ。そもそも、その腰の物からして俺とは系統が違うだろう? 妙な期待だけさせてがっかりなんてことになったらそれこそかわいそうだ」
エダムさんは無遠慮にボクの腰の打刀を見ている。
たしかにこの刀に関しては、ノームにノウハウはないかもしれない。
とはいっても、精霊たちの武具を鍛えるノームなら、もしかしたら違うタイプの刀を作ってくれるかもしれないとボクは思っている。
ついでに、その技術をボクも学べればなんて甘いことも考えたりしている。
「今は気が乗らん。今度来るときは酒でも持ってこい」
「わかりました。今日の所は失礼します」
ボクはそれだけ言うと、ぺこりとお辞儀をして工房を後にした。
恥ずかしいけど、仕方ないと割り切るしかないよね。
「ねぇルードヴィヒさん」
ボクはお茶を用意しているルードヴィヒさんに声を掛ける。
ルードヴィヒさんは紅茶をカップに注ぎながら、首をこっちに向けて「はい、いかがなさいましたか? お嬢様」と問い返してきた。
「この郷には鍛冶師とかはいたりするのかな? ボクのスキルには鍛治知識があるんだけど、鍛冶スキルを覚えるためにもちょっといろいろ教えてもらいと思って」
すると、ルードヴィヒさんはやや考えるしぐさをした後、一つの案を提示した。
「いるといえばいますが、偏屈者のノームでございます。不快な思いをするであろうことは想像に難くないので、おすすめは致しません」
温厚そうなルードヴィヒさんがそこまで言うくらいの人という時点で、怖いもの見たさというか興味を引かれるものがある。
いい結果にならないだろうなと思いつつも、ボクは案内を頼むのだった。
「ちょっとだけでいいんです。お願いできませんか?」
胸の前で両手を握り合わせてお願いのポーズを取る。
ちょっとわざとらしいかな? と思いつつもそうした方がいいかなと思ったので実行する。
「うっ。お嬢様にそうまでお願いされては、断るのもおかしな話でしょう。仰せのままに」
ルードヴィヒさんは左手を前にして腹部に当て礼をする。
優雅なその所作に、ボクは思わず見惚れてしまった。
「いかがなさいましたか? お嬢様」
ボクが見ていることに気が付いたのか、ルードヴィヒさんは微笑みながらそう問いかけてきた。
「あはは、なんでもないですけど、ただちょっと所作が綺麗だな~って思ってたくらいだし」
なんでもないとは言いつつも、所作を見ていたことについて話してしまった。
「ありがとうございます。私が通っていた侍従学校では王侯貴族にも対応できるように、色々な礼儀作法を学ばされます。いえ、学ぶことができると言うべきでしょうね。やらされているという考え方は執事や従者にとって毒以外の何物でもありませんので。それでは参りましょうか」
軽くルードヴィヒさんと会話した後、ボクたちは屋敷の外に出た。
するとそこへ、ミアが現れた。
「ご主人様? ルードヴィヒさんとどちらへ行かれるのでしょう?」
ミアはボクたちを見やると、そんな質問を投げかけてきたので、簡単に経緯を伝える。
「なるほど、それでそのノームに会いに行こうというのですね? 差し出がましいかもしれませんが、よろしければ私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
ミアは控えめに言いつつも、一緒に行きたいとはっきり伝えてきたのでボクは当然許可を出す。
すると、ミアは嬉しそうに頷きながら「ありがとうございます、ご主人様」と言って、ボクの後ろに回った。
この村は自然と共存している村ではあるものの、道は石畳が敷かれていて街のような雰囲気になりつつあった。
土木をメインにしている職業精霊が担当しているということだったが、自然重視の村といった雰囲気にしなくてもいいのだろうか?
「不思議に思われているようですが、私ども精霊は、故郷の精霊界では人間と変わらない過ごし方をしています。ですので、街といったものも作り住みやすくしているのです。完全に自然そのものの中で生活しているのは元素精霊くらいなものではないでしょうか? とはいえ、必要以上に傷つけない、汚染に繋がるような行為はしないというのが大前提ですので、出来るだけ自然をそのまま取り入れるような作り方をしています」
精霊はやはり精霊ということなのだろうか?
人間なら汚染を顧みない開発もしばしば行ってしまうだろうと思う。
隣の芝生は青いから同じようにしたいという気持ちが、過度な汚染に繋がった例はいくらでもあると思う。
そういう意味では、ボクたち妖種は文明的に遅れているのだと思う。
なぜなら、精霊達と同じように自然ありきで開拓と開発を進めているからだ。
ボクたちの話を興味深そうに聞いているミアは、自分の意見をあまり言わない。
でも、彼女も自然と共存する精霊である以上、無縁とは言い難いかもしれない。
別の意味で汚染されていた過去もあるわけだしね。
ボクたちは石畳の道を歩き、屋根はあるものの、開放的な作りの工房へと到着した。
完全に壁で囲まれてはおらず、雨風凌げる程度に覆われたその工房では、体ががっしりとした、ボクくらいの身長の男性が椅子に腰かけて休憩していた。
「こんにちわ、エダム」
ルードヴィヒさんが工房の主と思われる男性に声を掛けた。
男性は瞑っていた目を開けると、ボク達を一瞥する。
「娘っ子どもとルーか。何の用で来た?」
エダムと呼ばれた男性はぶっきらぼうにそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。
「相変わらずですね、エダム。こちらは私がお仕えしているお嬢様の、スピカ様です。そしてこちらがその使い魔のアルケミアスライムのミア様です」
「ど、どうも……」
(ぺこり)
ボクはおっかなびっくりといった感じで挨拶をする。
ミアはただぺこりと頭を下げるだけだった。
(どうしたの? ミア)
(いえ、問題はありません。ただ、ノームとはいささか相性が悪いと言いますか……)
念話で確認すると、ミアはやや言葉を濁して話す。
スライムの精霊にも相性の悪い相手がいるのかぁ。
「アルケミアスライムだと? だとしたら、特殊な金属も作れるはずだよな?」
ずいっとミアに迫りながらそう言ってくるエダムさん。
特殊な金属がご希望なのだろうか?
「作れないことはありません。ですが、材料がなければどうすることもできません。それに、特殊な金属を作ったところで、今の貴方たちに利用する術はないと思いますが」
少し不機嫌そうに、でもはっきりとそう伝えるミア。
それを聞いたエダムさんも不機嫌そうに鼻を「ふん」と鳴らす。
「確かになぁ。ただこのマンネリ化した状態を抜け出すくらいはできるかもしれんと思っただけだ。あまりにも高度なものは技術の要塞が停止している以上、作ることはできんしな」
腹立たし気にそう話すエダムさんの表情は暗かった。
怒っているのだろうけど、それ以上のやるせなさがあるようだ。
「んで、そこの娘っ子はなんだ? 何の用があってこんな落ちぶれた工房に来た?」
ボクの方を見ながら威嚇するかのように強めの口調で問いかけてくる。
とりあえずボクのやることはただ一つだ。
ご機嫌取りは趣味じゃないのでやらないけど、スキルを伸ばすためにも必要なので当たって砕ける覚悟で突っ込んでいく必要がある。
「鍛冶スキルを学びに来ました」
「はっ! 学びたいだって? そんな細い腕で鎚がふるえるのか? いいか、工房は遊び場じゃねえんだ! わかったら帰りな」
どうやら門前払いのようだ。
たしかにボク自身の見た目は細いもやしのような感じかもしれない。
そう言われるのも納得できる部分があるのは悔しいけど……。
「エダム、お嬢様に力を貸してもらうことはできないのか?」
ルードヴィヒさんとエダムさんは付き合いが深そうに思えた。
一体どんな知り合いなんだろう?
「いくらルーの頼みとは言っても無理なものは無理だ。そもそも、その腰の物からして俺とは系統が違うだろう? 妙な期待だけさせてがっかりなんてことになったらそれこそかわいそうだ」
エダムさんは無遠慮にボクの腰の打刀を見ている。
たしかにこの刀に関しては、ノームにノウハウはないかもしれない。
とはいっても、精霊たちの武具を鍛えるノームなら、もしかしたら違うタイプの刀を作ってくれるかもしれないとボクは思っている。
ついでに、その技術をボクも学べればなんて甘いことも考えたりしている。
「今は気が乗らん。今度来るときは酒でも持ってこい」
「わかりました。今日の所は失礼します」
ボクはそれだけ言うと、ぺこりとお辞儀をして工房を後にした。
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