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じゃくまる

オークションシステムと精霊たち

「う~ん……。この防具はいらないなぁ。道士には使えないし」

「いい弓ない。がっかり」

 現在、ボクの目の前の端末には、オークションウィンドウが開かれている。
 コノハちゃんと並んでオークションの内容を確認しているところだ。
 これは、戦利品や製作物を競売に掛けるときに使うもので、レイドなどの大規模討伐パーティーのドロップ品の売買によく利用されているそうだ。
 ちなみに、委託販売所というか預り所もあるので、製作物などの委託販売に利用されていることも多い。
 ボクはこの機能を使ったことはないので、今回が初めてとだった。
 まぁ、製作メインの人とかはこの機能で色々な物を販売しているみたいだけどね。

 一応相場保護機能というのがあり、NPCたちも製作できる品物に関しては最大割引額、言い換えれば出品最低金額が決まっている。
 この辺りは、NPCたちとの話し合いで設定価格が変わるようになっていて、ずっと同じ金額が設定できるわけではないようだ。
 具体的に言うと、税率が上がったとか、戦争特需が生まれたなどで、NPCたちの生活に関わってくる地域情勢次第となっているようだ。
 ちなみに、もし好き勝手に設定できるようになったとしたら、プレイヤーたちとNPCたちの間に大きな溝が出来ることになってしまうだろう。
 そうなれば、NPCからの支援を受けることができなくなってしまうのだ。

「あっ、これいいなー。アクセサリーかー」

 隣でオークションの出品物を眺めているリーンさんが一つのアクセサリーを見ながらそう言う。
 今出ている出品物は、黒いチョーカーだ。
 銀色の鈴が付いたシンプルなもので、魔力強化と防護のエンチャントが付与されているみたいだ。

「オークションって便利だね。ボクたちは帰りながらそれに参加できるんだから」

 アルケニアオンラインは、このオークションシステムがあるため現地に集まって戦利品の売買をする必要がない。
 レイドなどでは戦利品のオークション登録の可否が選べ、事前に設定しておくことで取得戦利品が記録されるようになる。
 その結果、持ち逃げなどが出来ないようになっており、登録されたものの売買が終了するまで主催者すら触れられないようになっている。
 唯一触れられるのは、ドロップを回収する瞬間だけだ。
 ちなみに、ボクの拾った黒い石とゴディアスから贈られた装備はオークションの対象にはならなかった。
 何か違いがあるんだろうか?

「やったー! チョーカーゲットー!!」

 ボクより年上なリーンさんが件のチョーカーを落とすことができて大喜びしている。
 そして、ボクの方向を見るとこう言うのだ。

「はい、権利プレゼント。使ってね?」

 すると、ボクの端末にメッセージが表示される。
『プレイヤー:リーンからオークションアイテムの権利譲渡が行われました。引き換えは最寄りの委託販売所、もしくは精霊便でお受け取りください。どちらで受け取りますか? 委託販売所・精霊便』

「えっと、いいんですか?」

「もちろんだよ!!」

 やたらとテンションの高いリーンさんが、ボクの問いに対してすぐに答える。
 どうやら、ボクにプレゼントするために選んだようだ。

「ありがとうございます。でも、チョーカー二つ目かぁ」

 実はボクは最初の時に能力なしのチョーカーをアニスさんから貰っている。
 あの時の戦慄は忘れられない。

「へぇ~。同じこと考える人がいたんだね」

「同じこと?」

「ううん。なんでもないよ?」

 ニコニコ笑顔で話を打ち切るリーンさん。
 ボクはよくわからないなと思いつつ、精霊便で受け取ることを選んだ。
 精霊便は現地配達か拠点配達が選べ、ボクは拠点配達を選んでおいた。

「便利だよね、精霊便ってさ」

 向かい側に座っているエレクトラがボクの端末を見ながらそんな感想を口にする。
 現在、ボクの端末には『荷物預かり中』の文字が表示されていた。
 端末の情報は基本的に他人から見ることはできないが、許可することで一緒に見ることもできるようになる。
 スマフォとかでいう覗き見防止機能がついているのだ。

『精霊便』とは、『委託販売所』という場所から出ている宅配便のようなものだ。
 配達を生業にしている職業精霊が、職業精霊たちによって運営されている委託販売所から荷物を受け取り配達している。
 アイテム送付や現金送付はこういった職業精霊によって配達されるようになっているのだ。
 
「プレイヤーしか関わることがない委託販売所って、NPCから見ればどう映るんだろうね?」

 カレンさんがボクたちの話に混ざり、この世界の不思議システムについて疑問を口にした。
 現在ボクたちは精霊馬車に乗り、マタンガの郷まで移動している。
 この精霊馬車というのも、職業精霊達によって運行されているのだ。
 お値段は距離によるものの、マルセ村からマタンガの郷までは一人当たり銀貨三枚だ。
 現在同乗しているボクたちのメンバーは、ボク、マイア、コノハちゃん、音緒、エレクトラ、ケラエノ、リーンさん、カレンさん、アーク兄、クラマさんだ。

 精霊馬車の使い方は簡単で、村や街から特殊なチケットを使い、精霊馬車を呼び寄せる。
 距離別料金がかかるので、事前に料金を支払う。
 人数は規模にもよるけど、普通の精霊馬車で十人までは同時に乗ることができる。
 言ってみれば、タクシーのようなものだ。

「ゴリアテさんたちは別の馬車に乗ることになったんだよね?」

「さすがに人数多いからね~。でもあっちはアモスさんも乗ってるし」

 マイアの質問にボクは簡単に答える。
 ボクたちが精霊馬車を呼ぶときに、ゴリアテさんたちも呼んでいたので一緒に乗っているはずだ。
 ちなみに、このゲームの通貨単位はプレイヤー側もNPCも共通して『クレディ』という単位を使っている。
 さらに言うと、十クレディで銅貨一枚であり、百クレディで大銅貨一枚。
 千クレディで小銀貨一枚、一万クレディで銀貨一枚だ。
 ちなみに金貨への交換は銀貨百枚で金貨一枚になるので、金貨一枚百万クレディということになる。
 そこからさらに上もあるらしいものの、銀貨から上の通貨は百枚で上位通貨一枚の交換が基準となる。
 十枚で交換できるのは、銀貨までなのだ。

「オークションの分配については自動振り込みなんだよね?」

「みたいだね~。便利便利」

 エレクトラの疑問に対して、ボクはワクワクしながら答えた。
 今回の分配は参加人数の関係でそこまで多くはないだろうけど、ちょっとだけ期待はしている。
 もうすぐ最低でも四人乗れる五等級馬車に手が届くのだ。
 ちなみに、座席数が増えることによって等級が上がっていくのだが、四等級は六人まで乗ることができる。
 一応、専用の精霊馬車も買うことはできるようだが特殊なクエストが必要になるという話を聞いた。
 なので、今すぐには無理だろう。

「でも、十人で三十万クレディですか。一気にお金出ますね」

「歩くの嫌だったから頼んだけど、やっぱりきついよね」

 精霊馬車は呼び出した人専用なのだが、お値段が高い。
 なので、結構お財布にダメージを受けてしまう。
 がんばってお金を貯めて、良い馬車を買えばコスト的にも助かるんだけどなぁ……。

「まぁ転移装置はそもそもが高いから遠方に頻繁に行くか、急ぐ時でもなければ使う理由もないからねぇ」

「あぁ、アモスが急いできた時に言ってたっけな。速いんだけどとにかく高いから使い勝手がなぁ」

 転移装置は距離別料金を採用している。
 メルヴェイユもしくはマタンガの郷からマルセ村までは一律一人五万クレディがかかるのだ。
 精霊馬車より高いけど早い。
 ただ、二万クレディというのは結構痛い出費だったりするけど……。

「街の安い食事が大銅貨二枚から五枚だし、青銅の武器が小銀貨数枚で宿の料金が小銀貨一枚から。ポーションは安くても大銅貨五枚からだにゃ。それくらいでも結構な出費なのにいきなり一万クレディ以上というのは結構辛いにゃ」

 音緒が溜息を吐きながらそうぼやく。
 一回の利用で現実世界で五万円ほどと考えるとかなり痛い出費になる。
 まぁ、精霊馬車も大概なんだけどね。

「とはいえ、クタクタだから、速い移動手段に頼るのも、今回に限ってはありだったわね。景色もいいし、落ち着いて帰れるし」

 マルセ村周辺は大きな農場があるため、結構風光明美な場所だったりする。
 行きは落ち着いて移動できなかったので、帰りくらいは余裕が持てることが嬉しく思う。
 カレンさんの言葉を聞きながら、ボクは流れる景色を見続けるのだった。

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