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じゃくまる

ケモナーたちの争いと山賊ゴブリン


 今日はマイアたちはいないので、一人で狩りに出掛けることにした。
 正確に言うと、マイアはカレンさんたちと出かけている。
 アーク兄はお父さんの会社に出掛けているので家にはいなく、エレクトラたちは何やらあいさつにやってくる人たちの対応があってここに来れないらしい。
 そんなわけで、今いるのはボクだけのはずなんだけど……。

「なんでいるの?」
「スピカちゃんと遊びたかったから、お姉ちゃんたちのお誘い断った」
 
 ボクの隣にはマイアたちと出かけているはずのコノハちゃんがいた。
 
「それはいいけど、よかったの?」
「うん大丈夫。お姉ちゃんたちとはいつでも遊びに行けるし、それに夏休みはまだある。宿題も終わってるから遊ぶのにも問題ない。スピカちゃんは?」
「ボクも終わってるよ? ところで、ずっと気になってたんだけどコノハちゃん、見た目が変わった?」
 
 ボクの隣にいるコノハちゃんはその小さな体に細長い金色の猫尻尾を生やしていた。
 その上、頭には小さな金色猫耳がくっついている。
 その姿はまさに金猫だ。

「進化先を山猫にしたの。体が軽いし弓や短剣系のスキルが強化されたよ。さらには器用さも上がったしいいことづくめ。そして尻尾で遊べる」

 そう言いながら尻尾を振り振り。
 コノハちゃん自身には尻尾がないはずなんだけど、何でそんなに手なれてるのかな!?

「その尻尾、どうやって動かしてるの……?」
「こう、お尻に軽く力を入れるような感じで? 手間取ったけどずっとやってたら慣れたの。でも、現実にはないから物足りない……」

 耳も萎れ尻尾も下がるコノハちゃん。
 明らかに人外の連動を見せるコノハちゃんに、ボクは戸惑いを隠せなかった。
 ゲーム内限定だけど、すでに人間辞めてる!?

「そういえば、新しいスキルに変化が増えた。あと面倒なことに、街では変化しないとケモナーに追われる」
 
 そう言った瞬間、コノハちゃんの表情が陰り目のハイライトが消えたような気がした。
 うわさには聞いたことがある。
 ケモミミ至上主義者という人々がおり、ケモミミを見つけるとなでに来るんだとか。
 自身は人間のままで、ケモミミをなでることを良しとするとか。
 
 そんなケモミミ至上主義者たちに対抗する勢力としてケモミミもふもふ団と呼ばれる集団がいる。
 彼らはその真逆で、自分たちこそがケモミミになることを目的としており、『ケモミミは自分のためにある』と言ったと、公式掲示板には書かれていた。

 その後、今まで彼らはずっと争い続けているらしい。
 かたや他人のケモミミを触るために、かたや自分のケモミミを触るために。
 まったく、くだらない争いだよね。
 そんな彼らに、コノハちゃんは目を付けられてしまったのだろう。
 今後は変化で乗り切るしかないと思う。

「スピカちゃん、街にいるときはきつねにならないよね? どうしてここではなるの?」
 
 コノハちゃんの言う『ここ』とは、マタンガ集落のことだ。
 現在ボクたちは、マタンガ集落の精霊ギルドに来ている。
 これからクエストを受けてみようとしたところで、コノハちゃんに捕まったのだ。

「ここって精霊が多いせいか変化解除してるほうが過ごしやすいんだよね。とはいえ、その危ない勢力もプレイヤーだから、ここには来ちゃうんだろうけどね」
「それは怖い」
 
 またもや表情が陰るコノハちゃん。
 小さくないトラウマを受け付けられてしまったようだ。
 小学生が相手なんだから節度を持ってほしいよね。

「よしよし、まぁボクがいるときは安心しなよ。こう見えて危険には敏感なんだよ?」
「うん……」

 コノハちゃんの頭をなでながらボクは自信を持ってそう言った。
 自分のドジ具合は棚に上げてだが。

「そういえば、どうやってここまで来たの?」

 今までコノハちゃんを見た覚えがない。
 一体どうやってマタンガたちを突破してきたのだろうか。

「進化した後、何かと戦いたくて仕方なくて、うわさに聞いたマタンガに挑んだの。弓でビュビュッとやってるうちに、ここについた」

 末恐ろしきはその弓術。
 もうすでにコノハちゃんは一流の弓術師なのではないだろうか……。
 気を取り直して早速依頼を受けるために、カウンターの人に声を掛けた。

「こんにちは、Eランク程度で受けられる依頼ってありますか?」
「いらっしゃいませ、メルヴェイユギルドのEランク冒険者様ですね? Dランク相当の実力ありということでDランク程度の依頼が受けられるようになっていますね。現在ですと、山賊ゴブリンの討伐かウォーウルフの討伐がおすすめです。ウォーウルフはメルベイユ南部森林ダンジョンのブラックウルフより強いですがマタンガ集落へと来られるなら十分に倒せるでしょう。いかがなさいますか?」

 精霊ギルドの受付の人は女性ではなく男性だった。
 エルフのような見た目で、女性に見える男性といった感じがする。

「えっと、エルフさん?」
「いえ、私は事務精霊で、精霊ギルド職員の『ケイス』と申します。どうぞよろしく」
「えっと、事務精霊ってなんなんですか?」
「はい、事務精霊というのは、各種事業所または役所などで事務を専門に行う精霊のことです。小規模な手段や大規模な国運営など、精霊が関わる場所であればどこでもいたりします。異世界人の方の場合、クラン創設受付とその管理も事務精霊の管轄ですよ?」

 ボクの疑問に丁寧に答えてくれるケイスさん。
 思ったよりも身近な精霊なようだ。
 見かけたら話しかけてみようかな?

「それで、どちらの依頼をお受けになられますか? 素早く攻撃力が高めなウォーウルフ討伐か規模によって戦力がかわる山賊ゴブリンの討伐か」

 結構な難問かもしれない。
 ボクとコノハちゃんで対応できるのかな?

「弓が当たるやつがいい」

 コノハちゃんがボクの袖口を引っ張りながら自分のやりたいことを主張してくる。
 ということは、撃ち放題なのがいいよね?

「山賊ゴブリンの討伐でお願いします」
「かしこまりました。すぐに手続きいたしますね。山賊ゴブリンの討伐ですが、集落の北側に山があるのが見えると思います。その近辺で目撃されるようです。もし拠点を見つけた場合、掃討が可能であれば掃討をお願いします。掃討が不可能な場合はお知らせください。拠点の情報だけでも報酬がありますし、掃討した場合も追加報酬をご用意しております」
「わかりました」

 山賊ゴブリンには拠点を持っている者がいるようだ。
 どんな拠点なのか気になるし、お宝なんかもあるのか気になる。

「山賊ゴブリン単体はEランク程度で討伐が可能です。拠点には上位種がいる場合もあるのでご注意ください。拠点内には、ため込まれたアイテムなどが置かれている場合がありますので、遺品でなければご自由にお持ち帰りください。それと、今回目撃された地点はメルヴェイユの街北側から延びる街道沿いの山脈付近です。小さな村なども道中あります。犠牲になられている方もいるかと思いますので、十分注意してください。討伐数は十体以上で千クレディ支払われます。十体以上になると追加で一体につき百クレディ支払われます」

 山賊ゴブリン一体につき百クレディということなので、ほどほどのお小遣いといったところか。
 十クレディは銅貨一枚なので、銅貨換算だと一体につき十枚ということになる。

「狩れば狩るだけもうかる。山賊ゴブリン一体よりも矢の代金の方が安い」

 気合いを入れるコノハちゃん。
 コノハちゃんの言う通り、矢自体は木の矢一束100本で100クレディになる。
 どう考えても損にはならない。
 最低でも一体倒せばとんとんなのだ。
 ゴブリンって最高だね!!

「今宵も矢がうなる」
「まだお昼だけどね」

 現実世界もまだお昼だが、ゲーム内もまだ日が高かった。
 
「それじゃ、行こう!」
「うん。お金は大切だけど油断は禁物」

 拠点を見つけたらどうするかはその時考えよう。
 ともかく、ボクたちは早速山賊ゴブリン討伐に出発したのだ。

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