アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
第2章 第14話 メルヴェイユギルドへようこそ再び
天狗温泉から帰ってきた日の翌日、お昼過ぎにボクはゲームにログインした。
今日の目的は美影と瑞樹とのフレンド登録と簡単なクエスト攻略だ。
「う~ん、まだかなぁ~」
もうすぐシステム時間では十三時、つまり午後一時になろうとしている。
おそらくキャラクタークリエイトに手間取っていると思うけど、少し心配だ。
「スピカちゃんどうしたの? そわそわしちゃって」
現在ボクは、冒険者ギルドの待合スペースのベンチに座っている。
ここが待ち合わせの場所だから、様子を見に行くわけにもいかない。
「友達が来るんですよ。でも、遅いから気になっちゃって」
美影達はボクの幼馴染だからどうしても気になってしまう。
ちゃんと作成できただろうか?
間違って作ってないだろうか?
「スピカちゃんの不安そうな顔はかわいいなぁ」
アニスさんはやたらとご機嫌である。
ボクの不安そうな顔がそんなに気に入ったんだろうか。
「なんだかその言い方、犯罪っぽいですよ?」
「はんっ!?」
ボクがそう言うと、アニスさんは口を半開きにした驚きの表情のまま固まってしまった。
どうやらクリティカルヒットしたらしい。
「うぅ~……。スピカちゃんのバカァ」
アニスさんはそう言い残すと、ギルドカウンターの奥へと駆けこんでいってしまう。
「ちょっとやりすぎたかな? でも、たまにはいいよね」
ボクだってやる時はやるさ。
たまにだけど!
「今日は強いなスピカちゃん。いつもはアニスにやられてばっかりなのにさ」
冒険者ギルドには色々な冒険者の人がいる。
今話しかけてくれている人もそんな冒険者の一人だ。
「ふふ、そうでしょう? ちょっとは成長してるんです。いつも負けてばかりじゃないんですよ?」
アニスさんには悪いけど、今日くらいはちょっとだけそう言わせてもらうことにしよう。
かっこ悪いところを友達に見せるわけにはいかないからね。
「え~い!!」
「わひゃっ」
突如背中に冷たいものが入り込み、思わず変な声を出してしまった。
冷たい液体のようななにか……。
「あはは、スピカちゃんの負けだね」
振り向くと笑顔のアニスさんが、その手に液体の入ったグラスを持って立っていた。
「なっ、何するんですかっ!? 何入れたんです!?」
慌てて背中をまさぐって確認するも、何も見つからず。
「ほんのちょっとだけ水滴をね? びっくりするスピカちゃん可愛かったなぁ。お姉さんは満足だよ。はい」
してやったりといった顔をしているアニスさん。
その手に持ったグラスをボクに差し出してくる。
「これは?」
それは茶色い透明な液体の入ったグラスだった。
何かの薬草のような香りがする。
「これはムーンリーフのハーブティーよ。安らぎ効果があるって有名なの。お友達来るまで不安なんでしょ?」
どうやら気を利かせたアニスさんの差し入れだったようだ。
「ありがとうございます。初心者でも良さげなクエストってありますか?」
ついでなので先にいくつかクエストを見繕っておこうと思う。
「う~ん、そうねぇ。南部森林方面じゃないんだけど、東門から出た先に北門へと広がる森があるのよ。そこにいる大きいキノコの妖精種を五体倒してきてほしいのよ。妖精種といっても完全に安全って訳じゃなくて、胞子で繁殖するから定期的に倒す必要があってね」
アニスさんからの依頼は『マタンガ』と呼ばれるキノコの妖精の討伐だった。
それに付随するように、同時に三つの依頼も受注させられた。
「これはマタンガの傘の採集ね。それと胞子袋の採集。あとはマタンガ本体の採集ね。本体は切って料理に使うみたいよ」
渡された紙に記載されていたのは、それぞれのだいたいの大きさだった。
マタンガは最大三十センチほどになるらしく、そのサイズのは傘の採集と胞子袋の採集用。
それより小さい十五センチ未満のマタンガは料理用らしい。
「うっ、これ思ったより数ないです?」
大きいマタンガが五体とそれぞれ取れる部位を五つずつ。
小さい食用マタンガが五体必要なようだ。
「数だけで言えば十体だけど、大きいのはそれなりにタフかな? 小さいのは弱いけど速いから気を付けて。逃げられたら見つからないと思うからね」
素早く走るキノコとタフなキノコ。
聞いた言葉から想像すると、相当気味が悪い。
「キノコ嫌いになりそう」
もともとキノコは好きというわけではないけど、さらに嫌いになりそうだった。
「でもね~、とっても美味しいのよ? 小さいマタンガは。大きくなると味が薄くなるけど、小さいのはうま味が詰まってるのよ」
そんなアニスさんの話を聞いて、ボクは椎茸を想像してしまった。
きっとそんな感じなのだろうなぁ。
カランカラン
ギルドのベルが鳴り、新しい人がギルドへやってきたことを知らせる。
ボク達が話してる間は人の出入りが全くなかったため、久しぶりに誰かやって来たという感じがする。
「ここがギルドかぁ。えっと~……。あっ、いたいた!」
ギルドの入り口でそんな声が聞こえたかと思うと、こっちに誰かが近づいてきた。
「す~ば~る~!」
「ちょっと美影、名前違う」
「あっ」
ボクの本名をしっかり呼んでくれたのは、どうやら慌てん坊の美影のようだ。
瑞樹はそんな美影に注意していた。
「もう、二人とも遅いよ!」
ちょっとは怒ったふりしてもいいだろう。
よく見てみると、二人の外見と名前は現実の姿と名前と一つも変わらなかった。
「もう、せめて名前くらい変えなよ。それじゃバレバレだよ?」
一応オープンな場ではあるので、個人情報には気を付けてほしかったのだけど、二人とも気が付かなかったようだった。
「うぅ、ごめん。何か名前考えたんだけど、あれも使われててこれも使われてて、うんざりしちゃってさ……。つい」
「ごめんなさい、昴。こういう時、どんな名前付けていいかわからなかったの」
二人は思ったよりもネット関係は初心者だったようだ。
もしかしたら、他の場所でも本名登録なのかもしれない。
「もう、仕方ないなぁ。とりあえずパーティー組もう? 依頼は受けておいたから一緒に狩りしながら覚えようよ」
「うん」
「わかった」
ボクの言葉に二人は頷き、パーティー加入申請を承諾してくれた。
「それじゃ~」
「ちょっとまって!」
ボクがそう言いかけると、アニスさんからストップがかかる。
「ほえ?」
「ほえ? じゃありません。冒険者登録してからにしてください。まったく。こほん」
そう言えばすっかり忘れていた。
アニスさんに怒られて思い出したよ。
ありがとう、アニスさん。
「それでは、気を取り直して。メルヴェイユへようこそ、新規登録は簡単最速! この水晶に手を当てれば冒険者カードの出来上がりです――」
ボクの時にも説明されていたっけ。
アニスさんは、前に聞いた言葉と一言一句違わぬギルド説明をしてみせたのだった。
今日の目的は美影と瑞樹とのフレンド登録と簡単なクエスト攻略だ。
「う~ん、まだかなぁ~」
もうすぐシステム時間では十三時、つまり午後一時になろうとしている。
おそらくキャラクタークリエイトに手間取っていると思うけど、少し心配だ。
「スピカちゃんどうしたの? そわそわしちゃって」
現在ボクは、冒険者ギルドの待合スペースのベンチに座っている。
ここが待ち合わせの場所だから、様子を見に行くわけにもいかない。
「友達が来るんですよ。でも、遅いから気になっちゃって」
美影達はボクの幼馴染だからどうしても気になってしまう。
ちゃんと作成できただろうか?
間違って作ってないだろうか?
「スピカちゃんの不安そうな顔はかわいいなぁ」
アニスさんはやたらとご機嫌である。
ボクの不安そうな顔がそんなに気に入ったんだろうか。
「なんだかその言い方、犯罪っぽいですよ?」
「はんっ!?」
ボクがそう言うと、アニスさんは口を半開きにした驚きの表情のまま固まってしまった。
どうやらクリティカルヒットしたらしい。
「うぅ~……。スピカちゃんのバカァ」
アニスさんはそう言い残すと、ギルドカウンターの奥へと駆けこんでいってしまう。
「ちょっとやりすぎたかな? でも、たまにはいいよね」
ボクだってやる時はやるさ。
たまにだけど!
「今日は強いなスピカちゃん。いつもはアニスにやられてばっかりなのにさ」
冒険者ギルドには色々な冒険者の人がいる。
今話しかけてくれている人もそんな冒険者の一人だ。
「ふふ、そうでしょう? ちょっとは成長してるんです。いつも負けてばかりじゃないんですよ?」
アニスさんには悪いけど、今日くらいはちょっとだけそう言わせてもらうことにしよう。
かっこ悪いところを友達に見せるわけにはいかないからね。
「え~い!!」
「わひゃっ」
突如背中に冷たいものが入り込み、思わず変な声を出してしまった。
冷たい液体のようななにか……。
「あはは、スピカちゃんの負けだね」
振り向くと笑顔のアニスさんが、その手に液体の入ったグラスを持って立っていた。
「なっ、何するんですかっ!? 何入れたんです!?」
慌てて背中をまさぐって確認するも、何も見つからず。
「ほんのちょっとだけ水滴をね? びっくりするスピカちゃん可愛かったなぁ。お姉さんは満足だよ。はい」
してやったりといった顔をしているアニスさん。
その手に持ったグラスをボクに差し出してくる。
「これは?」
それは茶色い透明な液体の入ったグラスだった。
何かの薬草のような香りがする。
「これはムーンリーフのハーブティーよ。安らぎ効果があるって有名なの。お友達来るまで不安なんでしょ?」
どうやら気を利かせたアニスさんの差し入れだったようだ。
「ありがとうございます。初心者でも良さげなクエストってありますか?」
ついでなので先にいくつかクエストを見繕っておこうと思う。
「う~ん、そうねぇ。南部森林方面じゃないんだけど、東門から出た先に北門へと広がる森があるのよ。そこにいる大きいキノコの妖精種を五体倒してきてほしいのよ。妖精種といっても完全に安全って訳じゃなくて、胞子で繁殖するから定期的に倒す必要があってね」
アニスさんからの依頼は『マタンガ』と呼ばれるキノコの妖精の討伐だった。
それに付随するように、同時に三つの依頼も受注させられた。
「これはマタンガの傘の採集ね。それと胞子袋の採集。あとはマタンガ本体の採集ね。本体は切って料理に使うみたいよ」
渡された紙に記載されていたのは、それぞれのだいたいの大きさだった。
マタンガは最大三十センチほどになるらしく、そのサイズのは傘の採集と胞子袋の採集用。
それより小さい十五センチ未満のマタンガは料理用らしい。
「うっ、これ思ったより数ないです?」
大きいマタンガが五体とそれぞれ取れる部位を五つずつ。
小さい食用マタンガが五体必要なようだ。
「数だけで言えば十体だけど、大きいのはそれなりにタフかな? 小さいのは弱いけど速いから気を付けて。逃げられたら見つからないと思うからね」
素早く走るキノコとタフなキノコ。
聞いた言葉から想像すると、相当気味が悪い。
「キノコ嫌いになりそう」
もともとキノコは好きというわけではないけど、さらに嫌いになりそうだった。
「でもね~、とっても美味しいのよ? 小さいマタンガは。大きくなると味が薄くなるけど、小さいのはうま味が詰まってるのよ」
そんなアニスさんの話を聞いて、ボクは椎茸を想像してしまった。
きっとそんな感じなのだろうなぁ。
カランカラン
ギルドのベルが鳴り、新しい人がギルドへやってきたことを知らせる。
ボク達が話してる間は人の出入りが全くなかったため、久しぶりに誰かやって来たという感じがする。
「ここがギルドかぁ。えっと~……。あっ、いたいた!」
ギルドの入り口でそんな声が聞こえたかと思うと、こっちに誰かが近づいてきた。
「す~ば~る~!」
「ちょっと美影、名前違う」
「あっ」
ボクの本名をしっかり呼んでくれたのは、どうやら慌てん坊の美影のようだ。
瑞樹はそんな美影に注意していた。
「もう、二人とも遅いよ!」
ちょっとは怒ったふりしてもいいだろう。
よく見てみると、二人の外見と名前は現実の姿と名前と一つも変わらなかった。
「もう、せめて名前くらい変えなよ。それじゃバレバレだよ?」
一応オープンな場ではあるので、個人情報には気を付けてほしかったのだけど、二人とも気が付かなかったようだった。
「うぅ、ごめん。何か名前考えたんだけど、あれも使われててこれも使われてて、うんざりしちゃってさ……。つい」
「ごめんなさい、昴。こういう時、どんな名前付けていいかわからなかったの」
二人は思ったよりもネット関係は初心者だったようだ。
もしかしたら、他の場所でも本名登録なのかもしれない。
「もう、仕方ないなぁ。とりあえずパーティー組もう? 依頼は受けておいたから一緒に狩りしながら覚えようよ」
「うん」
「わかった」
ボクの言葉に二人は頷き、パーティー加入申請を承諾してくれた。
「それじゃ~」
「ちょっとまって!」
ボクがそう言いかけると、アニスさんからストップがかかる。
「ほえ?」
「ほえ? じゃありません。冒険者登録してからにしてください。まったく。こほん」
そう言えばすっかり忘れていた。
アニスさんに怒られて思い出したよ。
ありがとう、アニスさん。
「それでは、気を取り直して。メルヴェイユへようこそ、新規登録は簡単最速! この水晶に手を当てれば冒険者カードの出来上がりです――」
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