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じゃくまる

第2章 第13話 隠された気持ちと新しい仲間

「えっと、つまり、昴君は昴ちゃんになって、妖狐族だけど天狐種だってこと??」
 美影の説明を受け、現在混乱中の狐塚さんの言葉がこれだ。

「正確だけど、混乱招いてるだけなんじゃ?」
「あはは、やっぱりかぁ~」
 分かっててやってるのかは知らないけれど、美影には反省している様子は見られなかった。

「ボクは元々天狐種だったんだよ。それに妖狐族なのはなんとなく知ってたでしょ? まぁ、自分達の種族とかあまり他人には話さないけどさ」
 ボク達妖種は、人間達が違う人種や民族を見分けるように、自分達の種族や他の種族についても見分けることが出来る。
 普段は人化しているので、簡単に見分けは付かないけど、波長というかそう言うもので見分けを付けることが出来る。

「たしかに。ふぅん。そっか。女の子になっちゃったんだ? ちょっと残念」
 狐塚さんは少しがっかりしたようにそう言うと、再び顔を上げてこう言った。

「結構いい感じの男の子だな~って思ってたんだけどなぁ。でも、そうかぁ。天狐種ってことは私達とは格が違うよね……」
 妖狐族の中でも色々な種が存在している。
 主な違いは役割だとかそういうもので、昔は特に色で別れていたという。
 狐塚さんが言っているのはそういうことなのだ。

「天狐種といえば確かに最上格と言えるけど、それはそこまで昇った人だけだよ。ボク自身にはそんな価値はまだないから」
 ボクはまだまだ未熟な子狐なのだ。

「そっか……。うん、そうだよね。ありがとう、昴ちゃん。でもどうせ一緒にお風呂入ってるんだから、みんなで一緒に入ろうよ」
 少し暗い顔をしていたものの、元気を取り戻した狐塚さん。
 ボク達を見て一緒に入ろうと誘ってきてくれた。

「瑞樹と美影はもういいの?」
 二人は今の今まで羽根の手入れをしていたのだ。

「うん、問題ないよ?」
「私も大丈夫です。一緒に入りましょう」
 こうしてボク達三人は、お母さんとミナも交えて一緒に入浴を楽しんだ。
 ボクの変化は他の人から見たら気持ち悪く感じるだろう。
 これは天狐だけの特異な変化だから、他の種では起こりえないことだ。

 今日ボクは、ほんの少しだけ自分の性別に慣れた気がした。
 でも、まだまだ慣れないといけないことは多いんだろうな……。


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「今日はありがとう、狐塚さん、瑞樹、美影」
「ううん、こっちこそありがとう。ねぇ、今度遊びに行っていい?」
「うん、大丈夫だよ」
「よかった、ありがとう」
 思わぬ提案に、ボクはすぐに返事を返した。
 初めてちゃんとした友達が出来たかもしれない。
 それはとても嬉しいことだ。

「あたし達も行くから、羊羹用意しておいてよ」
「美影? そういうのは良くないと思うなぁ」
「あぅ……。ごめん」
 美影はやはり瑞樹に弱いようで、明らかにしょんぼりしている。

「用意くらいはするけど、来るときは事前に教えてよね? あっ、あとゲームだけど、明日お昼くらいからなら一緒に出来ると思うからよろしくね」
 忘れずに待ち合わせの約束をし直す。
 やることは単純でも、いろいろ教えてあげるのが先輩冒険者の務めだと思うから。

「了解、わかったよ~」
「はい、じゃあ昴、また明日ね」
 天狗温泉から一緒に烏丸家まで帰って来たボク達は、そこで解散することにした。
 狐塚さんの家はボク達とは反対側だけど、ボクの家からだと十分ほどの距離にあるのでそこまで離れてはいない。

「じゃあ、昴ちゃん、またね!」
 狐塚さんは元気に手を振ると、商店街方面に消えていった。
 狐塚さんは一人で温泉に来ていたようで、年間パスポートを買うほどの温泉好きだった。
 天狗温泉には専用のシャトルバスが出ているので、それを利用していたようだった。

「今度また行きましょうか」
「なかなかいいお湯だった。久々に友人に会ったよ」
 お父さんとお母さんもご満悦である。

「いやぁ、堪能した。特に岩盤浴が良かったな」
 賢人兄のお気に入りは岩盤浴だったようだ。
 個人的には砂風呂も好きだったけど。

「楽しかったね、お姉ちゃん」
「そうだね、随分はしゃいだ気がするよ」
 ここ最近あまり外に出ることはなかったけど、今日は久々に楽しんだ気がする。

 女性になってからというもの、外の世界が怖かったボクとしては少しだけ外の世界に慣れたような気がした。
 今までの自分から変わってしまったこと、それによって世界の見方が変わってしまったこと。
 注目されそうで、自意識過剰だとしても怖く思ってしまったこと。
 ボクが外に出なかったのには色々な理由はあるけど、今日は良かったと思った。
 でも、学校はまだ怖いかな……。

「明日から瑞樹と美影とゲームで会うのか」
 新人二人に教えることで、ボク達のパーティーは戦力が増すことだろう。
 今後のゲーム生活がもっと楽しくなる。
 ボクはそんな予感がしていた。

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