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じゃくまる

道士見習いの初戦闘


 アニスさんとのドタバタした登録の後、ボクとアーク兄は『解体講習』というのを受けることになった。
 ちょっとグロテスクなので詳細は省くけど、バーベキュー動画などで狩って来た鳥を捌くように、動物や魔物の部位を解体していくという作業だった。
 食べられる動物の捌き方、魔獣などからの魔石類の取り出し方など、一通り説明されてから一冊のマニュアルを渡された。
 紙で出来たマニュアルで、版画のように同じように刷られている。
 印刷技術については不明なため、版画などの方法で量産してるんだろうと考えた。

「うぅ。解体とか捌きとか……」
「大丈夫か? スピカ。このゲームの辛い点ではあるな。倒したらそのままドロップアイテムを落としてくれるという親切設計じゃないからなぁ。基本的に『死体』をドロップするから自分で解体するか、専門の人に解体してもらうかになる。ただ必要部位が壊れている場合があるから完全な物じゃないと受け取ってもらえないので注意が必要だぞ」
 ボク達は今、ギルド近くにあるカフェに来ている。
 そこでちょっと休憩しているのだ。
 ボクがダウンしたことが原因なんだけどね。

「ふぅん? 武器類とかはどうなの?」
 魔物達によっては武器を持っていることがある。
 それは確定ドロップなのか気になるところだ。

「確定といいたいところだけど、そういうものはやたらと頑丈な石斧だったり棍棒だったり価値のないものだな。金属製武器類は金属疲労なのか所有制限なのかはわからないけど、対象が死ぬと大体は崩れて消えてしまうんだ。検証組の話では、そういうものは魔物が自分で生成しているんじゃないかってね」
『検証組』とは、この世界を本当の意味で楽しみ解明しようとしている人達のことだ。
 彼らはベータ時代から存在していて歴史考証組などと組みながら、さながら遺跡探索物の冒険映画のような活動をしているらしい。
 この辺りの話はアーク兄からの受け売りなので、ボク自身は実際に見たことはないけどね。

「ねぇ、アーク兄。ここって『チュートリアル』みたいなものはないのかな?」
『チュートリアル』とは、ゲームの進行方法を教えてくれる親切な解説システムだ。
 このゲームにはなぜかそれが存在していない。

「戦って覚えろっていうのがこのゲームの方針みたいでね。そこまでリアルにこだわらなくてもとは思うんだけどなぁ」
「ふぅん、そうなんだ。それで戦い方ってどうやるの?」
 争いのない現代社会に住むボクは、今まで戦いというものを経験したことがなかった。
 まぁ、尻尾を噛まれたりとかすることはあったけど……。

「それじゃ最初はお馴染みの敵のゴブリン討伐からだな」
「うん、よろしくお願いするよ!」


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 ゴブリンとは小鬼タイプの魔物のことだ。
 ゴブリン内にはカーストというものが存在しているようで個体の強弱の差が激しい。
 特に強いものは圧倒的に強く、賢いものは圧倒的に賢いらしい。
 今ボク達の目の前にいるゴブリンは最弱の最底辺とのことだ。

「ゴブリンって言っても、最弱の存在って訳じゃない。それぞれに強大な群れに居られない理由があったりして追い出された個体もいる。そういうのが今目の前にいるいわゆる『はぐれゴブリン』なんだ」
「ゴブリン社会厳しすぎない?」
「学校も似たようなものだろ?」
「まぁ……」
 アーク兄の指摘に、ボクはぐぅの音も出なかった。
 ゴブリンに同情したい気分だ。

「その言い方からすると、大きな群れほど強い?」
「当然」
「と、当然なんだ……」
 迂闊に挑まないほうが良さそうだ。
 ボクなんかあっという間に転がってしまうよ。

「というわけで、さっそく行くぞ? スピカの思うように攻撃してみろ。俺達は魔術などを使う時、頭の中に使いたい術が思い浮かんでくるはずだ。それが俺達の使える『スキル』というもので、必要な行使手順も教えてくれる。それじゃあ、行ってこい」
 簡単に説明され、背中を押されるボク。

「ゲギャ?」
 今まで気が付いてなかったゴブリンは、ボクが現れてことで一瞬止まってしまった。

「あっ、どうも」
「ゲギャー!!」
「わわ、いきなり襲い掛かってくるのはなしでしょ!?」
 せっかく挨拶したというのに、錆びた長剣を振り回すのはなしだと思う。
 仕方ない、とりあえず応戦だ。

「ええ~っと、術……。あっ」
 とりあえず相手は一体、逃げつつ術について考えていると、頭の中に使用できる術が思い浮かんできた。
 これなら……、いける!

「いっけぇ! 【氷符】」
 ボクは手順通りに符を取り出し指先に挟む。
 氷の魔力が宿った符で、ボク達道士にしか使えない特殊なものだ。
 符自体は服に取り付けられたポーチから使用する時に生成されるため、紙を用意する必要はない。
 発動した符は一瞬青く煌めき、小さな氷の刃を一本生成した。
 生成された氷の小刃は、ボクの意思通りにゴブリンへと向かって飛んでいく。

「ゲギャギャッ」
 ゴブリンが飛び掛かろうとするタイミングで、放たれた氷の小刃は、ゴブリンの胴体を軽々と切り裂いた。
 小さなゴブリンの身体程度なら、この程度でも十分らしい。
 真っ二つにされたゴブリンは崩れ落ち、その断面は凍り付いていた。

「上出来じゃないか! 道士というのは初めての実装だからな。どういう攻撃か気になってたけどなかなかロマン溢れる術だなぁ」
 そう言いながら、アーク兄はゴブリンを解体する。
 取り出す物は魔石と納品用の木製の認識票だ。
 ゴブリン文字で書かれたそれは、ゴブリンが死んだときのみ身体から取り外すことが出来るらしい。

「魔石は無事っと。お? 錆びた長剣がそのまま残ってるな。これはいい収入になるぞ?」
 ゴブリンの側には錆びた長剣が一本そのまま残されていた。
 消えていないということは、ドロップしたということらしい。

「錆びてても鉄は鉄。あとで鍛冶屋に持って行ってやろう。鉄不足だからすごく喜ぶぞ?」
 アーク兄はウキウキした表情で錆びた長剣を『インベントリ』にしまう。
 インベントリといえば、疑問があったんだっけ。

「インベントリって制限あるの? 重量とかそういうの」
「制限? インベントリは拡張型だから初期はそんなに多くは入らないかな? 総重量も決まってるけど拡張していけば大抵のものは入るぞ? あと死体を収納する場合はインベントリの横にある『保管庫』に入れるんだ」
 アーク兄はそう言うと、ボクに端末を見せてくれた。
 インベントリはいわゆる空間収納型なようで、端末操作で出し入れが可能となっている。
 なおこの端末、他人が操作することも出来ないが、他人が取得することも出来ない。
 見せたくないものはフィルターで制限を掛ければ大丈夫という安心設計だ。

「へぇ~。アイテムと死体は別々になってるのか」
「そうそう。まぁ保管庫は本来は『ほかんこ』ってのが正しい読み方なんだけど、人によっては『アイテムストレージ』なんて言い方をする。どっちも同じ意味だから覚えておくといいぞ? さて、続きやりますか」
 アーク兄はそう補足すると立ち上がって次の獲物を探しに行く。
 ボクもそれに小走りで着いていく。
 それからしばらく、二人で何体ものゴブリンを狩るのだった。

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