暗黒騎士物語

根崎タケル

ランタン男

 もうすぐ夜になる夕暮れのヴェロス王国の王宮前の大広場には篝火が焚かれ、広場を明るくしている。
 その広場には多くの人々が集まっている。
 集まった人達の多くは武装した戦士である。
 戦士達は広場の中央にいる私達を囲むように集まっている。
 目の前にいる女の子を見る。
 綺麗な赤毛をポニーテールにした活発そうな女の子。
 女の子の名はカリス。
 ビキニアーマーを着た、戦いの女神アマゾナを信仰する戦士である。
 片手用の戦斧を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべている。
 シロネは彼女との勝負を受ける事になってしまった。
 最初は断ろうと思ったけど、どうしてもと頼まれて断れなかったのである。

「お嬢――――! 頑張れ――――!」
「応援しているぜ! カリスお嬢――――!!」
「カリスお嬢―――――!!」

 半裸のいかつい戦士達がカリスを応援する。
 カリスの父親である赤熊アルカスの仲間達で、傍から見ても力と戦いの神であるトールズの戦士である事がわかる。
 戦士達の応援にカリスが手を振るとさらに歓声が上がる。
 彼女は戦士達にかなり人気があるようであった。
 シロネから見てもカリスは中々可愛い子だ。
 しかも、男性が喜びそうなビキニアーマーを着ている。
 実際にカリスを応援する男達の中には好色な視線を向ける者もいるようであった。
 だけど当の本人は気付いていないのか無邪気な笑みを浮かべている。

「シロネさ~ん。頑張って~」
「頑張るっすよ。シロネさん」
「頑張って~。シロネさ~ん」
「頑張れよ。シロネ」

 チユキ達がシロネを応援する声が聞こえる。
 シロネは仲間達の方に手を振って応える。
 今の所、シロネを本気で応援してくれているのは仲間だけのようだ。
 一応他にもシロネを応援してくれている人はいるようだけど、それは賭けの対象としてだ。
 取り巻きの戦士達からどっちに賭けるかという声が聞こえる。
 シロネに賭けた戦士が勝ってくれるように応援しているのだ。
 シロネとしては賭けの対象として応援されても、はっきり言って嬉しくない。

「えへへへへ。勝負を受けてくれてありがと。初めてなんだ。同年代で戦士やってる女の子と会うのはさ」

 カリスは嬉しそうに語りかける。
 この世界では女性戦士の数は少ない。
 私は彼女を応援している戦士団を見る。
 見事に男ばかりだ。もしかすると彼女には同年代の女の子の友達がいないのかもしれない。
 少しだけ彼女が可哀そうに思えた。

「それじゃ! 行くよ―――!!」

 カリスが斧を構えると私に向かって来る。

(あっけっこう速い)

 シロネはあっという間に背中を取られる。
 カリスが斧の刃の付いていない方で殴ろうとするのをシロネは背中で感じる。
 観客から「おーっ!!」と歓声が上がる。
 だけど、そんな簡単に勝負が決まるわけがない。
 シロネは少しだけ動く。

「えっ?」

 斧を振るったカリスの驚く声。
 当然だろう、絶対に当たると思っていた一撃が空振りに終わったのだから。
 シロネはほんのすこしだけ体を動かしてカリスの一撃を避けたのだ。

「こなくそぉう!!」

 カリスはそのままシロネの周りを素早く動くと、縦横無尽に斧を振るう。
 だけど、シロネはその全てを避ける。
 全ての攻撃を避けられたカリスが一旦離れる。

「すごいや、全く攻撃が当たらない」

 カリスは嬉しそうに言う。
 負けているのに何だか楽しそうであった。

「本気で来ても良いよ。受け止めてあげるから」

 シロネは腰を落すと剣を抜く構えをとる。本当なら剣を使わなくても勝つ自信がある。
 だけど、少しだけ本気を彼女に見せたくなったのだ。

「本当に? じゃあ本気で行くね」

 カリスは笑いながら言うと、彼女の肌の刺青が血のように動き出す。
 獣の霊感である。
 アマゾナの戦士もトールズの戦士と同じように獣の霊感を得る事ができる。
 カリスは、既に獣の霊感を得ているようであった。
 カリスの瞳が猫科の動物のように変化する。
 シロネはその様子からカリスが得たのは豹の霊感だと判断する。
 熊や狼の霊感よりも力はないが、素早く、しなやかに動ける。
 獣の霊感は使い続けると暴走して狂戦士バーサーカーとなる危険性があるが、シロネは暴走する前に終わらせるつもりであった。

「はあああああああああ!!」

 豹の霊感を得たカリスが動く、先程の動きの3倍は速い。
 カリスは縦横無尽に広場を走り回る。
 観客から驚きの声が上がる。
 普通の人間なら、この動きを見切る事はできないだろう。
 だけど、シロネにはその動きの軌跡がはっきりと見える。
 カリスの斧がシロネに迫る。
 シロネは少し体を横に動かすと、彼女の動きに合わせて抜剣する。
 そして、両者は交差する。
 カリスの手から離れた斧が、宙を舞い落ちる。
 その次の瞬間カリスは倒れる。
 観客から大きな声が上がる。
 戦いはシロネの勝利で終わったのだった。







 赤熊の戦士団が逗留している館の一室にカリスは運ばれる。
 部屋は広く、様々な調度品が置かれている。
 この館は王の賓客を宿泊させるためのものだ。
 先ほどシロネとの戦いが見事だったので、特別に王がこの館を使用させてくれたのだ。

「大丈夫? カリス?」

 レムスは先程まで寝ていたカリスに声を掛ける。
 カリスは剣の乙女との戦いに負けて倒れてしまった。
 あの強いカリスが全く敵わなかった事に衝撃を受ける。
 カリスは強い。
 大人の男の戦士にだって負けはしない。
 戦士団でカリスよりも強いのはアルカスぐらいであり、レムスと同じ歳なのに既に一流の戦士としての扱いを受けている。
 もっとも、この場合はレムスがひ弱すぎるのだろう。

「大丈夫! 大丈夫! 心配性だな~。さっき薬師さんが見てくれたけどなんともなかったでしょ」

 カリスは心配ないと状態を起こすと手を振る。

「確かにそうみたいだけど、安静にしなきゃだめだよ」
「わかっているって、こんなふかふかな所で寝られるなんて思ってもみなかったよ。前にレムスが話してくれた物語のお姫様みたい」

 カリスは寝台に寝転んで笑う。
 赤熊の戦士団は普段は野外で生活している。
 そのため、こんな立派な寝場所はない。だから、それに比べたら、お姫様と言っても過言ではないだろう。

「確かに、カリスはお姫……。そうだね、お姫様が寝てもおかしくない寝台だね」

 レムスはお姫様と言おうとして、その言葉を飲み込む。
 言うには少し気恥しかったからだ。

「ふっ、ふ~ん」

 そんな、レムスの様子をカリスは楽しそうに眺める。

「な、なんだい? カリス? 僕の顔に何かついてる?」
「別に~。それにしても強かったな。あたしと同じ女の子であんなに強い子がいるなんて思わなかったよ。レムスの言うとおり世界は広いね」

 カリスは負けたのにあまり悔しくなさそうに言う。
 自身よりも強い女の子がいる事が嬉しいのである。
 レムスもカリスよりも強い女の子がいるなんて思わなかった。
 カリスは初めて出会った時からすごく強かった。
 レムスは初めて会った時の事を思い出す。
 カリスと出会ったのは3年前。
 魔物に国を滅ぼされ逃げてさまよっている所をカリスに拾われた。
 つまり、カリスは僕の命の恩人なのである。
 レムスはそれ以来、赤熊の戦士団の一員として働いている。

「そうだね。世界は広いね」

 レムスとカリスは笑い合う。

「そう言えば、みんなはどうしたの?」

 カリスは周りを見て言う。

「ああ、それなら、みんなお酒を飲みに行ったよ。ここにいる間は王様が全ての食事を用意してくれるからね」
「そうなんだ。レムスは行かないの?」
「僕は留守番。下っ端だからね」

 レムスは首を振って答える。
 レムスは戦士団の中で一番下である。
 主に戦士団の雑用ばかりさせられている。
 トールズを崇める戦士団だけでなく、魔物が多いこの世界では強い者が偉くて、弱い者は下に置かれる。
 レムスは体が小さく、力も弱い。
 そのため立場は一番弱いのである。

「レムスが下っ端か……。レムスは字が読めて、頭が良くて、団の役に立っているのに……。やっぱり納得いかない。今度オヤジに言ってみるよ」

 カリスは真剣な目をしてレムスを見る。
 実は戦士団で字が読めるのはレムスだけだ。
 それなりに裕福な家に生まれたレムスには読み書きを学ぶ機会があった。
 だから、レムスは赤熊の戦士団の書記のような事もしている。
 もっとも、評価されているとは言えなかった。
 それがカリスには不満なのである。
 戦士団は野外で生活をしているが、都市に住む者と接点がないわけではない。
 都市の商人と交渉する時に字が読める者がいると団は助かるのである。
 レムスの前に字を読める者はいたが、待遇が悪くて団を抜けてしまった。
 待遇が悪くても、団に残るレムスは貴重なのである。

「いや、いいよ。カリス。僕は今の立場に満足している」

 レムスはカリスを止める。
 そんな事をすれば戦士達が反発するだろう。
 カリスの立場を考えればやめるべきであった。

「そう、レムスがそう言うなら……」

 カリスは不満そうな顔をする。
 その顔を見てレムスは何とか機嫌を良くしてもらいたいと思う。

「そうだ。昨日、この国で売っていた本を手に入れたんだ。すごく面白そうだからカリスにも聞かせてあげるよ」
「ホントに?! じゃあ聞かせてよ」

 カリスの瞳がキラキラと輝く。
 戦う事しか教えられなかったカリスにとってレムスが本で知った話はとても面白いものであった。
 自分の知らない世界が有る。
 戦う事しか教えられなかったカリスはその事が嬉しいのだ。
 まるで、子供みたいだとレムスは思う。
 本の内容を教えているうちにレムスとカリスはとても仲良くなった。
 カリスは起きるとレムスの隣に座る。
 カリスは露出の多い格好をしているので肌が腕に当たるとレムスはドキドキしてしまう。
 レムスのそんな様子を気にせず、カリスは話を今か今かと待ちわびる。
 そんなカリスをレムスは愛おしく見つめるのだった。





 夜になり闇の帳がヴェロス王国を覆う。
 ヴェロスの王宮前の広場では篝火が焚かれ、出店がならんでいる。
 まるで、ちょっとしたお祭りであった。
 王宮のバルコニーの下の広場では戦士達が馬鹿騒ぎしている。
 治安を維持するために巡回している騎士や兵士達は忙しく歩き回る。
 王であるエカラスは護衛を連れて戦士達の様子を見に行っている。
 そのため、王宮にはいない。
 チユキはご苦労な事だと思う。
 ちなみにチユキ達はそのまま王宮に残り歓待を受けている。
 豪華な食事とお酒が振る舞われ、綺麗な踊り子が目を楽しませる。
 吟遊詩人が歌い、勇者を讃える歌を響かせる。
 踊り子はともかく、吟遊詩人は今回の遠征を歌にするために集まってきた者達だ。
 吟遊詩人は世の中の様々な事を歌にして、世の中に知らせる。 
 それが、吟遊詩人達の存在意義である。
 レイジに限らず仲間であるチユキ達も多くの吟遊詩人に歌われている。 
 その彼らの歌を聴きながらチユキ達はゆっくりと食事とお酒を楽しむ事にする。

「お疲れ様。シロネさん」

 チユキはカリスとの戦いを終えたシロネに労いの声をかける。

「確かにチユキさん。ちょっと疲れたかも。怪我をさせないように気を付けなくちゃいけなかったから」

 シロネは果実酒を飲みながら言う。

「そう言えばシロネさんは手加減をするのが苦手だったわね。あの子、今頃大丈夫かしら?」

 チユキはそう言って意地悪そうに笑う。

「そうだよ。あの子、大丈夫かな? 大変な事になっていたりして」
「確かにそうっすね~。もしかして今頃死んでいるかもしれないっすよ」
「ちょ! ちょっと! リノちゃん! ナオちゃん! ちゃんと手加減したってば! 大丈夫に決まっているよ!!」

 シロネは慌てて抗議の声を出す。
 するとリノとナオが笑い出す。

「リノもナオもあんまりシロネをからかうなよ。シロネが可哀そうだろ」

 レイジは給仕の綺麗な女性から果実酒を受け取ると2人を窘める。

「本当にそうだよ! レイジさん! もっと言ってあげて!!」

 シロネはふくれて言う。

「あの女の子なら大丈夫に決まっている。俺はシロネの腕を信じているからな」
「レイジ君……」

 シロネがレイジの言葉に感動する。

「全く相変わらず、口がうまいわね」

 チユキはレイジを冷たい目で見る。
 レイジの周りにはヴェロス王国の貴族の若い女性が集まっている。
 いつもの光景だが、チユキとしては面白くない。
 気分を変えるためにチユキは用意された軽食を箸で摘まむ。
 摘まんだのは白身魚のフリッターだ。
 揚げたてはサクサクしていて美味しい。
 フリッターを堪能していると、外から歓声が上がるのが聞こえた。

「あれは何かしら? エカラス王が呼んだの?」

 チユキ達が外を見ると、広場の中央で道化師達の一団が曲芸をしている。

「わ~。何だか楽しそう」

 リノはバルコニーから身を乗り出して道化師達を見る。

「へえ、中々良い動きをするじゃないか」

 レイジは道化師の動きを褒める。
 道化師達は飛び跳ねて、空中で何度も宙返りをする。あんな動きは常人には不可能だ。
 かなり訓練を積んだに違いなかった。
 一人の道化師が空を舞いながらチユキ達に手を振る。

「あははは! 手を振ってきたよ!」

 リノとシロネが手を振り返す。

「待って下さいっす。道化師さん達が被っているのカボチャじゃないっすか?」

 ナオは道化師達を指して言う。
 中央にいる道化師を除き、他の道化達はカボチャの被り物を被っているように見えた。

「確かにカボチャね。まあ、正確にはカボチャのような野菜というべきなのだけど。でもどうしてここにナルゴルの野菜が……」

 チユキはカボチャ頭の道化師達を見る。
 この世界ではカボチャは一般的ではない。
 唯一、ナルゴルにカボチャに似た野菜がある。
 過去にナルゴルに入った時にチユキ達はその野菜を見たのである。
 その野菜の被り物を被った道化師達が躍っている。
 よく見ると目と口の部分から灯りが見える。
 まるでカボチャのランタンを被っているかのようだ。
 そのランタン男ジャック・オー・ランタン達は楽しげに踊る。
 人々は何かの催しだと思い、道化師達を見て笑っている。
 チユキ達が見ている事に気付いたのか、中央の唯一カボチャを被っていない道化師が高らかに歌い出す。
 その声は良く響き、チユキ達のいる場所まで聞こえて来る。

「名高き光の勇者が北へ来る♪ 仲間と共に北へ来る♪ 暗黒騎士を倒しに北へ来る♪」

 中央の道化師が歌うとジャック・オー・ランタン達が側にあった袋から何かを取り出す。
 それはチユキ達の人形だった。
 ジャック・オー・ランタン達は人形を取り出す。
 それはチユキ達を模した等身大の人形であった。
 ジャック・オー・ランタン達は宙を飛び、糸で人形を操る。
 人形は楽しそうに踊る。
 だけど、それは格好良いものではなく、間抜けな踊りであった。

「光の勇者が挑むれど~♪ 強い暗黒騎士には敵わない~♪」

 中央の道化師が歌うとジャック・オー・ランタンは暗黒騎士の人形を取り出す。
 その暗黒騎士の人形はチユキ達の人形を踏みつける動作をする。
 その様子に観客達が静かになる。

「ちょっと!! これ!!」

 道化師の人形劇を見ていたシロネがその劇の内容に大声を出す。
 そうだ、道化師達の劇はレイジを馬鹿にしたものだ。

「光の勇者は気高き暗黒騎士に追いかけられて逃げ惑う~♪」

 中央の道化師が楽しそうに歌う。
 
「何よあれ! レイジさんを馬鹿にしているじゃない!!」

 リノも怒ったように叫ぶ。

「落ち着いてくれみんな! やってくれるじゃないか!」

 レイジはバルコニーから飛び道化師の元へと向かう。
 そして、チユキ達も後に続く。
 広場に降りると観客達が驚き道を空けてくれる。
 チユキ達を確認すると道化師達は劇をやめてこちらを見る。

「これはこれは、光の勇者様。初めてお会いするね~。僕達の人形劇はどうだったかな~」

 中央の道化師が一礼すると、ジャック・オー・ランタン達も同じように礼をする。

「なかなか面白い劇じゃないか? どういうつもりだ?」

 レイジは笑いながら聞く。
 顔は笑っているが、相当怒っている事は間違いなかった。

「決まっているじゃないか~。君を馬鹿にしてるんだよ~」

 中央の道化師がそう言うとレイジが剣を抜く。
 その動きは一瞬だった。道化師の首がぽとりと落ちる。
 それを見た観客から悲鳴が上がる。

「酷いなぁ~。いきなり首を飛ばすなんて~」

 しかし、道化は何事もなかったかのように首を拾うとそのまま元の位置に戻す。

「今気が付いたっす! ずっと監視していたのはお前っすね! その気持ち悪い感じは間違いないっす!!」

 ナオは中央の道化師を指差す。

「おや、僕が見ていた事に気付いていたのかい? さすがだね~。ご褒美に御菓子でも上げようか」

 道化師がそういうと一人のジャック・オー・ランタンが近づく。
 その手には籠があり中には御菓子が詰められていた。

「きゃははははは! 良い子には御菓子をあげるね~!」

 ジャック・オー・ランタンは笑いながら籠を差し出す。
 その笑い声は子供のようであった。
 チユキは籠を持つジャック・オー・ランタンの腕を見る。
 手は白い手袋で見えないが、むき出し腕は細長い木の棒であった。
 そこから、ジャック・オー・ランタンは人間でない事がわかる。

「へえ~。そいつはありがたいっすね。毒でも入っているっすか?」

 ナオは籠から御菓子を取ると匂いを嗅ぐ。

「毒なんて入っていないよ~。僕達は君達を歓迎しているんだよ~。ふふふ、君達が中々こないからね~。クーナ様はとてもお怒りだよ~。きゃははははははは」

 何が可笑しいのか道化師は狂ったように笑い出す。

「クーナ……。ふうん、貴方。あの子の使いなの?」

 シロネは前に出ると剣を抜く。
 眼には見えないが怒りのオーラが吹き出しているようであった。

「くくくく、そうだよ~。クーナ様は僕の女神様なのさ~。ハアハアハア~。クーナ様ぁ~」

 道化師は楽しそうに空を舞う。息遣いが気持ち悪い。

「チユキさん。すごく気持ち悪いよ」

 リノはチユキの背中に隠れる。

「ええ、私も同じ気持ちよ。こんな気持ち悪い奴を配下にしているなんて、やはり白銀の魔女は邪悪なのかしら?」

 チユキは道化師を見る。
 道化師とジャック・オー・ランタン達は気持ち悪い笑い声を響かせる。

「クーナ。あの時にあった銀髪の子の事だな。その美女が俺を待っているなんて光栄だな」

 レイジは不敵な笑みを浮かべる。

「もちろんだよ~。御菓子を用意して待ってるよ~。でも、もしこれ以上遅くなったら、この国の人間はこうなっちゃうかもね~。きゃはははははは」

 道化師がそう言うと突然チユキ達を模した人形の頭が爆発する。
 爆発すると中から何かが沢山飛び出す。
 チユキはその中の一つを掴み取る。
 それは包み紙に入った飴のようであった。

「はやく来てね~。きゃははははははははははは」

 道化師とジャック・オー・ランタン達が浮かび上がと夜空に消えていく。
 まるで幻のようであった。
 だけど、道化師の笑い声だけは消えずに響いている。
 チユキ達は茫然と夜空を見上げるのだった。

★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★

更新です。
当作品の世界観は古代メソポタミア、古代エジプト、古代ヨーロッパの文化を元に中世の騎士の要素をぶち込んで作っています。
そういうわけでアメリカ大陸原産であるカボチャは登場させてはいけないのですが、特別に出しました。
ぶっちゃけるとモンスターでジャックオランタンを出したかっただけだったりします。
カブのジャックオランタンだと、何かイメージが違うような気がするので……。

「カクヨム」にも来て下さると嬉しいです。

「暗黒騎士物語」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • Kyonix

    レイジ:私をからかいたいなぁ…
    ピエロ:やってるよ。

    その木材の品質を見てください。

    0
  • ノベルバユーザー286789

    ところでさ、まだ直接は出てないけどアマゾナってのはクロキのヒロイン候補なのか?

    今のところ、クロキのヒロイン枠に入ったキャラは全員『ナ』で終わる名前だから新しく出ると疑っちゃうんだよね。
    どうなんすか?先生。

    0
  • リトルサモナー

    そういえば、クーナ、モーナ、レーナの3キャラクターも
    元々はモデルのレーナを元に復元。そのレーナは、同じ世界の人間の命は軽く、別世界からの遺物の勇者たちをも使い捨てのつもりで邪魔扱いでリセマラの如く追い返そうとしましたよね。
    結果オーディンにより禁止され再び儀式を行うことを禁じられ、そしてクロキを自らの駒にするために動いて失敗し、その結果好きに転じましたが、未だにレイジに関してはどうでもいいようですし。

    もしかして、モーナやクーナの様な模造神は、モデルの神からコピーしたそのときのモデルの女神の精神状態から分かれるのではないでしょうか?
    だから惚れ薬などでレーナがクロキに惚れてしまった後作られたクーナはその時のレーナの状態で生まれた
    例えるならパソコンのファイルのコピー。

    作者さんによる元ネタ探しや神話などから探してくることからも相当考え込まれて作り込んでる様な気がしてきました

    0
  • リトルサモナー

    クロキのことを、自分と同じ人間のように、時には傷つき時には考え成長し変化する人間だと考えているのか
    シロネからは感じられません…
    ただひたすらクロキは騙されているんだ。それか操られているんだ のどちらかで、
    まずクロキと対峙した際にも最優先するべきだったのは「謝りなさい」ではなく「なぜクロキはそちらの立場にいる?そのクーナと名乗る女性とは?」とクロキ側の考えを理解しようという行動を取るべきだったと思います。
    クロキもクロキで、「自分がシロネをどう思っていたから自分が身を引き、その結果生み出した存在がクーナだ。これからはシロネとレイジの恋を身を引いて応援している。」くらいに突き放しても良かったと思います。それはとても辛いことだと思いますが、クロキにとってもシロネを次にすすめるための適切な行動であったと愚行します。

    とりあえず守る。というのは今見直と間違った手だったではないかな・・?
    そしてクーナが大事ならばこそクーナを真正面から見て、ちゃんとどういう人格なのか。それこそ赤子から育て上げるくらいの覚悟が必要だったのでは? …と、クロキ周りの恋愛関係が色々じれったい!!
    (いかしかしそれを敢えて作者さんはやっている演出という可能性もあるしうんぬんかんぬん)

    応援してますがんばってください

    2
  • 眠気覚ましが足りない

    ゼロさんへ。
    自分はゼロさんの考え、当たってると思います。
    モーナの描写が少ないこともあって断言できませんが、モーナもクーナもレーナと同じ性格でしょう。もちろん細かい部分に違いはありますが。
    クーナがレーナよりも幼く感じるのは、好いた相手と一緒にいられる時間がもっとも長くて、レーナとモーナは自身の立場故にクーナと同じことが出来ないだけかと。

    クーナがシロネを殺す理由は現時点ではまだ十分にあると思います。
    しかし、シロネに対抗できる戦力はクーナ自身しか居らず、指輪によって行動が制限されている事もあって実行には移せないでしょう。

    クーナがシロネの事で考えを改めるかは、7章と9章を待ちましょう。

    3
コメントをもっと見る / 書く