暗黒騎士物語

根崎タケル

宴の後

 夜が終わり朝が来る。
 レーナは目を覚ます。
 誰かが上に乗っているからだ。
 上に乗っているのは黒い髪の男性だ。
 暗黒騎士クロキ。
 それが彼の名だ。
 そして、互いに裸である事に気付く。

「ふえクロキ……えっなんで」

 レーナは驚き、疑問に思うが昨夜の記憶に靄がかかって朧気だ。
 しかし、だんだんと記憶が戻ってくる。

(うそ!? まさか!?)

 レーナは嘘だと思おうとするが、下半身の違和感が現実に引き戻す。

(誰も触れられぬ女神として生まれた私が、こんな事になるなんて!?)


 レーナは上のクロキを見る。
 クロキは幸せそうに寝ている。
 それの寝顔を見るとレーナは苛立ちを覚えると同時に愛しく思う。

(まだ、薬の影響が残っているのかしら? いや、違うわ……。この気持ちは本物? そんなわけが……。そんな事より早く彼を起こさないと)

 レーナはクロキを揺さぶると、その頬をひっぱたく。

「起きなさいクロキ!!」
「ふえ?」

 間抜け声を出してクロキが目を覚ます。
 寝起きで思考が鈍っているみたいだ。
 レーナは突然クロキの顔を引き寄せる。

「わっ、私の目を見なさいクロキっ!!」
「あっ!? はいいっ!!!!?」

 頭が混乱しているクロキは言われるがままにレーナの目を見る。
 輝く美しい瞳がそこにあった。
 その瞳が光る。その光は目から体に入り、全身を駆け巡っていくようだった。

(忘却の魔法……?)

 クロキは何らかの魔法をかけようとしているのがわかったが、抵抗できなかった。

「ぜぜぜぜーーーんぶーーーわーすーれーなーさーいっ!!!!!」

 レーナが絶叫する。
 クロキは抵抗する事が出来ず、受け入れてしまう。
 
「ふええええええええええん!!!!」

 レーナが泣きながら何かをしているのが聞こえていたが、クロキはもはやどうする事もできなかった。



◆黒髪の賢者チユキ

 チユキは朝一番珍客を迎える。
 目の前には翼の生えた人がいる。
 いわゆる天使という奴だ。
 天使族が地上に降りてくるのは珍しく。正に珍客であった。
 チユキはまだ眠っている所をこの天使に起こされたのだ。

「朝早くにすまないなチユキ」

 その天使の口振りはあまりすまなそうに感じない。
 天使族は美しい翼を持つ綺麗な種族だが、高慢な所があり人間を見下す所があるため、チユキはあまり好きになれなかったりする。

「まあ別に良いわ……。どうしたのニーア?」

 チユキは本当はまだ眠いが緊急の用なので仕方なく相手をする。
 ニーアはレーナに仕える戦乙女隊の隊長を務める女性の天使だ。過去に一度会った事がある。
 ニーアに会うのはその時以来だ。
 そのニーアにまだ寝ている所を突然に起こされたのだ。

(一体何なのだろう?)

 この館の周りで人が騒ぐ声が聞こえる。天使が降りて来た事で騒ぎになっているようだ。
 少しで良いから隠れて行動する能力を持って欲しいとチユキは思う。
 これでは騒がしくてたまらない。

「こちらにはレーナ様が来ていないようだな?」

 ニーアが詰問するように聞いてくる。

「えっレーナがなんで?」
「実は昨晩からレーナ様と連絡が取れないのだ。こちらに来ているはずなのだが……」

 ニーアが困ったように言う。

「レーナが? こちらには来てないわよ」

 チユキが答えるとニーアの顔が青くなる。

「まさかレーナ様の身に何かが……」

 ニーアは震えている。
 
(かなりひどい事を想像しているようね。子供じゃないんだから一晩ぐらいで考え過ぎじゃないの?)

 朝早く起こされたためチユキは機嫌が悪くなる。

「早急に捜さなくては!!!」
「あの……ニー……」

 チユキは慌てているニーアを落ち着かせようとした時だった、外から強い魔力を感じる。
 窓の外から見ると曇っている空に光る物体があった。

「あれはレーナ様!!」

 ニーアは叫ぶと、そのまま光る物体はエリオスの方へと飛んでいく。

「わっ! 我々はレーナ様を追う! チユキっ! 後の事は頼んだぞっ!!!」

 そう言い残してニーアは窓から外に出ると光る物体を追いかけていく。

「何なの一体?」

 部屋に残されたのはチユキは1人首を傾げるのだった。



◆暗黒騎士クロキ

 夜が終わり朝が来る。
 クロキは目を覚ます。

(あれ? 何か左の頬が痛い)

 鏡がないからクロキは気付けなかったが、左の頬に紅葉型に赤くなっていた。

(それにしても、なんでこんな所で寝てるんだ。寝相が悪いにもほどがあるだろう?)

 クロキは床の上で寝ていた。
 そして、昨晩何をしていたのか思い出そうとする。

「あれ!!昨晩何してたっけ?」

 昨晩何をしたのか思い出せない。

「そうだ。レーナに突然キスされて……。えーっと、そこから先……何も覚えていない……」

 クロキはレーナの綺麗な顔が迫ってくるのを思い出す。
 それを思い出し、身悶える。

(キスする時に眠り薬でも飲まされたのだろうか? そして、自分が眠っている間に何かをしようとしたのだろうか?)

 クロキは思い出そうとするが、何も思い出せない。

(なんか良くわからないけどレーナの顔が頭から消えない。本当に何があったんだろう?)

 そのレーナがいなくなっている事にクロキは気付く。

「わからーーーーーん!! なにがあったーーん!!!」

 クロキは頭を抱えて床の上を転げまわる。
 転げ回っていると体に何か当たる。

「うん?」

 良く見ると床に小瓶が転がっている。

「なんだこれ?」

 小瓶は空であり中には何も入っていない。床の上に全て零れたようだ。

(レーナが落した物だろうか?)

 中に入っていたのは魔法の薬みたいだが、全て零れてしまってクロキには何の薬かわからなかった。

(レーナが何をしようとしていたのか、手がかりになるかもしれない)

 他に何か無いか探してみる。
 部屋を見る。ちょっといやかなり汚れている。

「やばい……。何があったのかわからないけど……掃除しないと……」

 クロキはベッドのシーツを魔法で掃除しようとシーツを触ると2つの何かが落ちる。
 1つは何かの布きれだ。
 布きれをみる。面積が少ない。
 それはある物を連想させた。

「これは持っておこう……。うんそうしよう」

 なぜかクロキの本能がそういっている。
 もう1つは何かの金属だ。
 クロキは拾ってみる。
 中心に黒い宝石がついた装飾品だ。

「これは首飾り?」

 クロキは何かの手がかりなるかもしれないと思い、その首飾りも持っておこうと思うのだった。

コメント

  • Kyonix

    黒木「殺戮の女神」

    0
  • ノベルバユーザー375143

    おパン2?

    0
  • ペンギン

    クロキ惜しいことしたね...w思い出せないなんて...wなんか、可哀想やね

    7
  • ノベルバユーザー278584

    クロキの夜パートをkwsk!w

    8
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