【Vease:Day】〜VRMMOだけして、稼ぎたい‼︎ 〜
《第一章》第3話 『王城帝国』
〜西暦2045年 10月1日 AM9:20〜
《王城帝国郊外 南》
「はぁー死ぬかと思った…。」
あれから俺は死のスカイダイビングを満喫?したが、地面につく直前にフワッと体が浮きなんとか激突は免れた。
「あの神様…、落とすなら落とすってちゃんと言えよな!!」
俺は天に向かって文句を言った。その後すぐに携帯の通知音のようなものが鳴った。と、同時に俺の目の前に画面が現れた。
『メール(冒険者への道のり)を受信しました。受信BOXにて閲覧できます。』
「『冒険者への道のり』?てかどうやってメール見るんだ?なんかあんまり親切設計じゃないよな〜、この【Vease:Day】。自分のステータスの見方すら知らされないし。ステータス見たい時どうすんだよ。」
俺が軽快に愚痴をこぼしていると、画面が切り替わり、ステータス画面になった。
《ステータス》
〈名前〉『リュウ』 LV.1
〈年齢〉25歳〈性別〉男
〈種族〉【龍人】SP+1
〈職業〉なし。SP±0
〈所持スキル〉なし。
HP450/MP350/SN200/
AK270/BK210/
MA240/MB210/
AGI 70/
陽属性LV1 地属性LV2
空属性LV1 星属性LV1
《装備》
・初心者の装備一式(胴、腕、腰、足、靴)
《受信BOX》
・(未読)冒険者への道のり [ギフト]
《オプション》
「おっこれ?俺のステータスか?」
(てかなんでステータス画面が表示されたんだ?まさか、俺がステータスを見たいと思ったからか?)
俺は試しに受信BOXにある『冒険者への道のり』を開くよう頭の中で念じた。すると受信BOX画面からメールが開いた。
「おっ開いた!やっぱり俺がしたいことを読み取って表示してくれるんだ。」
使い方が分かった俺はメールの内容を見始めた。
冒険者への道のり
『今回は【Vease:Day】をプレイして頂き誠にありがとうございます。
さっそくですが『リュウ』様には冒険者ギルドに行き、冒険者登録をして頂きます。まず始めに、
《王城帝国》の正門をくぐって頂き、そのまま冒険者ギルドへ向かって下さい。そして受付で登録手続きを完了すれば、晴れて貴方も冒険者の仲間入りです。
正門では検査がございますので、入国できるように許可証などをお送り致します。では受付でお待ちしております。』
[ギフト]
・入国許可証×1・アイテムBOX機能付き鞄
・MAP
「おっ、なんかでたぞ。」
メールを読み終えた頃にギフトに書いてあったアイテムが出現した。俺は肩掛け鞄にギフトで出た他のアイテムを全部入れ、自分が何処にいるかを知るために、MAPを開いた。
「なんだ?王城帝国のすぐ近くじゃないか!」
(まぁ最初に選んだ国から離れてるってことは普通ないもんな。)
俺はMAPを見ながら、そそくさと王城帝国へ向かった。
〜西暦2045年10月1日AM9:23〜
《王城帝国南方》
「ここが王城帝国!!」
俺は目を輝かせ周りを見渡し、感動に浸った。
「中世を感じさせる家の作り、街を巡回している兵士、無骨な職人が営んでいる武器屋、そして商人に冒険者!夢にまで見た異世界だぁ!」
俺は人目を気にせずかなりはしゃいだ。それは無理もない。この街並みを見て誰もが興奮するに決まっている!。そう思うほどにこの体験は衝撃だった。
(おっと、落ち着け俺…。興奮している場合じゃない。まずは冒険者ギルドへ行かなければ。)
俺はギフトで貰った鞄からMAPを取り出し冒険者ギルドへ向かった。
《王城帝国 南東方面》
〜冒険者ギルド会館〜
「お〜すげぇ!意外とキレイで、デケェな!」
冒険者ギルドの外観は中世ヨーロッパに作られたマンションのようだ。飾りなどの装飾はなく質素な見た目をしていた。
「扉が結構大きいな。まぁ大きい武器持ってる冒険者が通ることもある扉だから、当然ちゃ当然の大きさだな。とりあえず入るか。」
俺は扉をあけてギルド内全体を見渡した。中は想像していたよりも広く、冒険者が思ったより静かだった。そしてホールの左手に受付があるのを確認し、受付の方へ向かった。
「あの?すみま…」
「すいません。こちら順番待ちとなっているため番号札を取って、お待ちになって下さい。」
いかにもお堅そうなお姉さんが、表情一つ変えずに俺に対して言い放った。
「あはは…すいません…慣れてないもんで…。」
俺は受付のお姉さんに軽〜く会釈をし、少し腰を低くしながら、受付の机にあった番号札を取った。
(めっちゃ美人だけど、こえー。)
俺はそそくさと受付の前にある木で作られた椅子に座った。
(なんか役所みてぇだな。それにしてもおっかない人だったな〜。耳とんがってるから妖精族かな?というか他の受付嬢も妖精族か…。みんな美人でモデル体型ときた!。でもあのおっかない人には受付されたくないなー。)
色んな受付嬢を見ているうちに順番が回ってきた。俺は番号札を受付に渡し、登録手続きをした。
「すいません。冒険者になりたいんですけど、登録するにはどうすればいいですか?」
「はい。でしたらまず、このステータスボードに手をかざして下さい。」
(よかった〜。めっちゃ優しそうな人だ。しかもさっきの人と違って巨乳ときた!テンション上がる〜。)
俺は心を一旦しずめて、お姉さんが持っている半透明のプレートに手をかざした。するとプレートに大雑把だが俺のステータスが表示された。
名前『リュウ』種族『鎧鱗族』LV1
職業『なし』冒険者ランク:なし
「『リュウ』さんでよろしいですね。LV.は1で、種族が、…!!鎧鱗族って珍しいですね!私、初めて見ました!意外と人間っぽいんですね。」
「あはは。よく言われます。」
(初めて言われたけど適当に話あわせとこ。てか龍人の表示じゃないんだな。多分プライバシーに考慮して、簡素なステータス表示にしてるんだろう)
俺はあまり深く考えず、受付のお姉さんの話しを聞く。
「ですけど、まだ職業登録お済みでないんですね。よろしければこちらで登録しちゃいますか?」
「!?。はい!ぜひお願いします!」
俺はこの時、自分の心拍数が上がったのを感じた。というのもこの職業システムは、このVerse:Day最大の特徴であり、冒険者には欠かせないものである。
ーー遡る事、約4ヶ月前…
西暦2045年6月10日PM7:00に天使グループのチャンネルにゲームシステムについての詳しい説明動画が投稿された。その内容というのが主にこの職業システムだった。
その内容とは、様々な職業による違いや、装備できる武器、取得可能スキルなどが紹介された。
その中でも俺が特に注目したのが階級進化と職業融合だ。階級進化とは、職業のLV.が最大まで溜まると進化できる仕様のことだ。そして職業融合とは、職業同士で融合をし、新たな職業を生み出すことだ。
職業は最大でそれぞれ5つまで登録可能。
つまり5つまで職業を選び組み合わせ、階級進化や職業融合などをして、自分だけのスタイルを築き冒険をするのが、このVerse:Dayの醍醐味である!。
そしてその動画以降、一つの職業に焦点をあてた動画が随時、投稿されたのだ。それはまた後でお話しするとして…
ーー俺はそれを思い出しながら職業を何にするか決めた。というよりは決めていた。
「ではこの中から自分に合う職業を選んで下さい。ですが条件があり、必ず戦闘職業を一つ選んで下さい。でないと冒険者登録ができませんので」
そう説明した受付のお姉さんはステータスボードを違う画面に切り替えた。
《戦闘職業》
【剣士】
・斬属性の武器を扱うのが得意な職業。伝説の英雄王のメイン職業として、有名である。
[装備可能武器]
・片手剣・大剣・斧・刀・盾
【騎士】
・守りが得意な職業。数少ない、重装備が可能な職業である。
[装備可能武器]
・大剣・ランス・レイピア・盾
【重戦士】
・全職業の中で随一の攻撃力をもつ職業。重装備可能。機動性に難あり。
[装備可能武器]
・大剣・斧・ハンマー・盾
【弓狩人】
・全職業の中で唯一の遠距離物理武器をメインに使う職業。故にこの職業をとる人はマニアが多い。
[装備可能武器]
・レイピア・弓・鞭・ブーメラン
【拳闘士】
・全職業の中で武器を持たない職業。故に格闘で攻撃するのが主になり、攻撃力は防具によって上昇する。
[装備可能武器]
・籠手・ブーメラン
【調教師】
・唯一魔物を使役できる職業。故に魔物を使役しないとあまり意味をなさないスキルが多い。
[装備可能武器]
・片手剣・鞭・杖
【索敵者】
・探索に必要なスキルを多くもつ職業。どちらかというと補助的な役割が多い。
[装備可能武器]
・片手剣・弓・ブーメラン・杖
【魔法師】
・MPを消費して攻撃魔法を多用する職業。伝説の賢者がもっていたと言われた職業でもある。
[装備可能武器]
・杖
【気功者】
・SNを消費して攻撃する技能をより多く覚える職業。SN自体の強化もする。
[装備可能武器]
・籠手・ハンマー・ブーメラン・盾
【支援者】
・MPを消費して支援することに特化した職業。味方を回復する魔法なども覚える。
[装備可能武器]
・杖
《副職業》
【商人】
・商売において役立つスキルを多く覚える職業。
【運送屋】
・アイテム保有数の上限を上げたり、運搬速度を上げたりできるスキルをもつ職業。
【薬学師】
・薬草などを調合してアイテムを製作できる職業。
【料理人】
・食材などを調理して効果がある料理を作れる職業。
【大工】
・建物などの建築物を作れる職業。さらに作った建築物に効果を付与できるスキルを覚える。
【鍛冶屋】
・採石場などでとれる鉄などを加工して武器や防具などが作れる職業。
【裁縫者】
・魔物の皮や、布などを使用して、防具や服飾などが作れる職業。
「ではこちらから5つ選んで下さい。」
「じゃあ俺は…。」
俺は迷う事なく職業を5つ選んだ。
「…はい。ではこちらで登録致しますね。少々お待ち下さい。」
と、満面の笑みで言った受付のお姉さんは奥の方にある何やら大きな機械に先ほどのステータスボードをセットした。
するとすぐ横にある顕微鏡のようなものが作動し、レンズのようなものからレーザーが出始め、そのレーザーから3Dプリンターのようにひし形の小さな青い石が形成された。
出来上がった青い石をお姉さんが紐をつけてペンダントのようにして、そのペンダントをこちらへ持ってきた。
「おまたせ致しました!では登録が終わりましたので、次の項目に移させて頂きます。まずはこちらをお渡しします。」
受付のお姉さんは先程作ったペンダントを俺に渡した。
「これは、なんですか?」
「そちらはあなたの情報が記録された『記録石』になります。」
「記録石…?」
「はい!それはあなたがこれから活躍することも記録してくれる便利な物になります。
クエストやダンジョン攻略などの成功報酬を受け取る際に、記録石を見て確認致します。なのでかなり重要なものですので無くさないようにお願いします。
ちなみに再発行料金はお高めの小金貨百枚、つまり金貨1枚になります。」
(なるほど…、ゲームのログ機能ってことなのね。しかもログをみて成功報酬をあげるか判断をするなんて、なんか合理的だな。)
妙に納得した俺は記録石を受け取り、自分の首に掛けた。
「おめでとうございます!これでリュウさんも、Fランク冒険者となります。」
お姉さんは満面の笑みで俺を祝福してくれた。
(なんか照れるな〜)
俺はこそばゆい感覚と同時に、目の前の受付のお姉さんが素直に祝福してくれることに、キュンっと自分の胸が締め付けられたような気がした。
(おっといけない。相手はNPCだぞ。恋なんてしても儚い恋に終わるだけだ。だが、嫁にするのは悪くない!)
俺はそんな妄想めいたことを想像している自分に、鎮めるように言い聞かせ、呼吸を整えた。
「あの〜、これで終了ですかね?」
「はい!これで以上になります。」
「あっすいません…あといくつか質問してもいいですか?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
受付のお姉さんは俺の目を見てニコッと笑って返事をした。
(か、かわいい…。き、君のエメラルドグリーンの瞳に吸い込まれてしまいそうだ。)
俺はいかんいかんと思い、顔を引き締め、赤らめそうな顔を必死に堪えた。そして俺は可憐で美しいお姉さんに質問する。
「ファのッ、ソのっ、えっとー、クエストを受ける時は、どうすればいいのでしょうか?」
何故か俺はあたふたして、声が上ずってしまった。恥ずかしいぃ…。
「クスッ。そんな慌てなくても大丈夫ですよリュウさん。」
「あっその、すいません…。」
(あっ絶対今変なヤツだって思われた〜。)
俺は気をつかわれ余計に恥ずかしくなった。受付のお姉さんはそんなことを気にも留めずに説明をしてくれた。
多分こういう対応は慣れてるんだろう。色々とツラィ。
「まずクエストを受ける際には、あちらにあるクエストボードから自分が行きたいクエストをとり、こちらで手続きをいたします。クエストを完了した際は、また受付で手続きをして終了となります。
注意点があるとすれば自分のランクに見合ったものしかクエストを受注できないことと、もし失敗した場合は違約金が発生するくらいですかね。」
(なるほど。ランクを上げていくにはクエストの数こなしていけば上がるのかな?まぁ大体こういったゲームはそういう感じだし、クエストをやってけば勝手に上がんだろ。てかお姉さんの髪綺麗だな〜。ボブってところがまたいいよな〜。)
俺はお姉さんが金色の髪を耳にかける動作を見つめながら、もう一つ質問した。
「あっありがとうございます。あともう一つ失礼します。泊まれる宿とかってどこにありますでしょうか?」
声を発する度に俺の言動がおかしくなってきた。めっちゃはずい。だがお姉さんはそんなこともつゆ知らず、少し考えた面持ちになった。
「………それなら、いい宿がございますので、そちらで手続きをお願いします。場所はたしか…」
と言い出すとお姉さんはステータスボードをMAP画面に切り替えて場所を教えてくれた。
「ありがとうございます。えっとあの〜」
「クスッ、私の名前はリーファです。これからもお世話すると思いますので今後ともよろしくお願いしますね♪」
俺はその瞬間、心を射抜かれた。
(お世話されたい。ぜひずっと俺のそばでお世話を…。いやいや、ここは冷静な紳士を装わねば!)
「あっ、ありがとうございます。今後ともよろしくであります!」
「あっはい?こちらこそよろしくお願いしますね。」
「はい!ではこれにて失礼いたします!」
「行ってらっしゃいませ!」
個人的に話したいことが色々あったが言動がこれ以上おかしくなるのは嫌なので、宿屋へ向かうことにした。
〜西暦2045年10月1日AM9:36〜
《王城帝国 南西方面》
〜宿屋兼食堂 虎の穴〜
「ここが紹介してくれた宿…」
俺はMAPに印をつけていたので、すぐに到着したが、かなり入り組んだところにあった。
「途中にも宿があったけど、なんでこんな場所にある宿を紹介したんだ?まぁあの、おねぇさんが紹介してくれた場所だからきっと穴場的スポットなんだろ!」
俺は泊まる手続きをしようと宿屋の中へ入った。宿屋の入り口を見ると1Fは食堂になっており、2Fより上が宿になっているようだ。
「っらっしゃい。何のようだい?」
少し威圧した返事で迎えてくれたのが、番台のような場所で椅子に腰かけた、パッと見グラマラスな獣人の女性だった。女性には黒と黄色の配色をした髪と虎のような耳が生えており、眼鏡をかけていた。
「あの〜。宿に泊まりたいんですけど…、いくらになります?」
「あんた?冒険者かい?」
「はい?そうですけど…」
「ふ〜ん…」
彼女は品定めをするように、俺を見て不敵に笑った。
「ふんッ、見たとこあんた冒険者初心者だね。服に傷や汚れがついてないし、あと武器もろくに装備してない。あんたそんなんじゃすぐおっ死んじまうよ!」
彼女はそう言い放つと、机を軽く叩いて身を乗り出した。座っていたので分からなかったが身長が俺ぐらいでかなり筋肉質な体つきをしていた。
「あっすいません。後で武器は調達しに行こうと思っていて、先に冒険者登録してきました。」
「フン、そうかい?で、うちに何かようかい?」
彼女の眼光が、獲物を狩るような鋭い目になった。俺は刺激しないように用件を言った。
「いや、受付の人から宿を紹介してもら
ってここにやってきたんですが…、何かここに来ちゃまずかったですか?」
「いいや。そんなことないよ。ただウチの宿を紹介するなんて珍しいからね。とりあえず部屋は空いてるよ!。値段は1人1泊朝食付きで小金貨30枚、3泊で小金貨70枚、7泊で金貨1枚だね。それ以上はまけないよ。」
彼女は落ち着いた様子でまた椅子に腰かけ、眼鏡越しに見える鋭い眼光で俺を見つめた。
(こえー。なんでお姉さんはこんな場所紹介したんだ?いや決して疑ってるわけじゃないんですけど、なんで俺こんな扱いなんだ?あくまでも客なんですけど。)
俺がビビっていると彼女はその様子を見てこう言い放った。
「……お前さん。ここはやめとけ、あんたみたいな人間族が来ていい場所じゃないよ!ここは獣人族達の憩いの場所なんだ…。分かったら他のとこあたりな!」
(………。えっまさか俺人間族と間違えられてる?)
「あの〜俺、鎧鱗族なんですけど。」
すると彼女は目を丸くし驚いた表情になった。
「えっホントかい?あんたウソつくんならもっとマシなウソつけってんだい。」
「いや、本当ですよ。…そうだ!!ほらこれ見て下さい。」
俺は誤解を解くために記録石から情報を見てもらった。
「あらホントだわ。ゴメンねぇ。あたい、背が高いからてっきり人間族かと…」
「いや、いいですよ!で、俺は泊まってもいいんですかね?」
「あ〜。構わないよ!」
「じゃあとりあえず7泊で!」
俺は鞄から金貨1枚を取り出し彼女に渡した。すると彼女の顔が一気に変わり、驚いたような態度をとった。
「あんた即決かい!?はぁ〜気前がいいのね。…気に入った!あたいは見た通り獣人のノルンってんだ!ここの店の女将をやってる。ここらじゃそれなりに名が通ってるからね!困ったらあたいのところに来な!あと本当の値段は7泊小金貨10枚だ!」
(えっこの人ふっかけてたのかよ!)
俺は心でツッコミをいれながらも、その場を穏便に済ますため、感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとうこざいます!俺はにんげ…じゃなかった。鎧鱗人のリュウです!これからよろしく頼んます!」
「おう!よろしくな!お詫びに今ここで飯食ってくか?どうするよ?特別に無料でご馳走するよ!」
女将は腕をまくしたて、今にでも調理をするよと言わんばかりに張り切っていた。
「あのっ嬉しい申し出ですけど、すいません。武器の調達とか行かないといけませんので、後で食事を頂きます。あとお聞きしたいんですが、部屋はどこになりますか?」
「あぁすまんすまん。部屋は3Fの虎の牙って書いてある部屋だ。厠は3Fに併設してあるからそこを使ってくれ!」
「了解しました!では一旦街へ行ってきますので…」
そう言って立ち去ろうとした時にノルンが俺のことを引き止めた。
「ちょい待ち!あんた武器調達しようってんなら案内しようかい?あんた王城帝国に来たばっかりなんだろう?」
「えっ、お店大丈夫なんですか?」
「あ〜大丈夫だよ!ちょうどウチの旦那が食材を仕入れに行っていてね。ここにいてもやることそんなにないんだ。それにあたいが居れば顔がきくからね!」
「ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えて案内お願いします!」
「おう!あたいに任せな!そうなりゃすぐに出立するとしますかね。」
そう言うと女将さんはお店の奥から大きい樽を持ってきた。
「えっと〜女将さんそれはなんですか?」
俺は女将さんが持ってる樽を指差して質問した。すると女将さんはめちゃくちゃいい笑顔で答えてくれた。
「手土産さ♪」
〈第一章 第3話  完〉
《王城帝国郊外 南》
「はぁー死ぬかと思った…。」
あれから俺は死のスカイダイビングを満喫?したが、地面につく直前にフワッと体が浮きなんとか激突は免れた。
「あの神様…、落とすなら落とすってちゃんと言えよな!!」
俺は天に向かって文句を言った。その後すぐに携帯の通知音のようなものが鳴った。と、同時に俺の目の前に画面が現れた。
『メール(冒険者への道のり)を受信しました。受信BOXにて閲覧できます。』
「『冒険者への道のり』?てかどうやってメール見るんだ?なんかあんまり親切設計じゃないよな〜、この【Vease:Day】。自分のステータスの見方すら知らされないし。ステータス見たい時どうすんだよ。」
俺が軽快に愚痴をこぼしていると、画面が切り替わり、ステータス画面になった。
《ステータス》
〈名前〉『リュウ』 LV.1
〈年齢〉25歳〈性別〉男
〈種族〉【龍人】SP+1
〈職業〉なし。SP±0
〈所持スキル〉なし。
HP450/MP350/SN200/
AK270/BK210/
MA240/MB210/
AGI 70/
陽属性LV1 地属性LV2
空属性LV1 星属性LV1
《装備》
・初心者の装備一式(胴、腕、腰、足、靴)
《受信BOX》
・(未読)冒険者への道のり [ギフト]
《オプション》
「おっこれ?俺のステータスか?」
(てかなんでステータス画面が表示されたんだ?まさか、俺がステータスを見たいと思ったからか?)
俺は試しに受信BOXにある『冒険者への道のり』を開くよう頭の中で念じた。すると受信BOX画面からメールが開いた。
「おっ開いた!やっぱり俺がしたいことを読み取って表示してくれるんだ。」
使い方が分かった俺はメールの内容を見始めた。
冒険者への道のり
『今回は【Vease:Day】をプレイして頂き誠にありがとうございます。
さっそくですが『リュウ』様には冒険者ギルドに行き、冒険者登録をして頂きます。まず始めに、
《王城帝国》の正門をくぐって頂き、そのまま冒険者ギルドへ向かって下さい。そして受付で登録手続きを完了すれば、晴れて貴方も冒険者の仲間入りです。
正門では検査がございますので、入国できるように許可証などをお送り致します。では受付でお待ちしております。』
[ギフト]
・入国許可証×1・アイテムBOX機能付き鞄
・MAP
「おっ、なんかでたぞ。」
メールを読み終えた頃にギフトに書いてあったアイテムが出現した。俺は肩掛け鞄にギフトで出た他のアイテムを全部入れ、自分が何処にいるかを知るために、MAPを開いた。
「なんだ?王城帝国のすぐ近くじゃないか!」
(まぁ最初に選んだ国から離れてるってことは普通ないもんな。)
俺はMAPを見ながら、そそくさと王城帝国へ向かった。
〜西暦2045年10月1日AM9:23〜
《王城帝国南方》
「ここが王城帝国!!」
俺は目を輝かせ周りを見渡し、感動に浸った。
「中世を感じさせる家の作り、街を巡回している兵士、無骨な職人が営んでいる武器屋、そして商人に冒険者!夢にまで見た異世界だぁ!」
俺は人目を気にせずかなりはしゃいだ。それは無理もない。この街並みを見て誰もが興奮するに決まっている!。そう思うほどにこの体験は衝撃だった。
(おっと、落ち着け俺…。興奮している場合じゃない。まずは冒険者ギルドへ行かなければ。)
俺はギフトで貰った鞄からMAPを取り出し冒険者ギルドへ向かった。
《王城帝国 南東方面》
〜冒険者ギルド会館〜
「お〜すげぇ!意外とキレイで、デケェな!」
冒険者ギルドの外観は中世ヨーロッパに作られたマンションのようだ。飾りなどの装飾はなく質素な見た目をしていた。
「扉が結構大きいな。まぁ大きい武器持ってる冒険者が通ることもある扉だから、当然ちゃ当然の大きさだな。とりあえず入るか。」
俺は扉をあけてギルド内全体を見渡した。中は想像していたよりも広く、冒険者が思ったより静かだった。そしてホールの左手に受付があるのを確認し、受付の方へ向かった。
「あの?すみま…」
「すいません。こちら順番待ちとなっているため番号札を取って、お待ちになって下さい。」
いかにもお堅そうなお姉さんが、表情一つ変えずに俺に対して言い放った。
「あはは…すいません…慣れてないもんで…。」
俺は受付のお姉さんに軽〜く会釈をし、少し腰を低くしながら、受付の机にあった番号札を取った。
(めっちゃ美人だけど、こえー。)
俺はそそくさと受付の前にある木で作られた椅子に座った。
(なんか役所みてぇだな。それにしてもおっかない人だったな〜。耳とんがってるから妖精族かな?というか他の受付嬢も妖精族か…。みんな美人でモデル体型ときた!。でもあのおっかない人には受付されたくないなー。)
色んな受付嬢を見ているうちに順番が回ってきた。俺は番号札を受付に渡し、登録手続きをした。
「すいません。冒険者になりたいんですけど、登録するにはどうすればいいですか?」
「はい。でしたらまず、このステータスボードに手をかざして下さい。」
(よかった〜。めっちゃ優しそうな人だ。しかもさっきの人と違って巨乳ときた!テンション上がる〜。)
俺は心を一旦しずめて、お姉さんが持っている半透明のプレートに手をかざした。するとプレートに大雑把だが俺のステータスが表示された。
名前『リュウ』種族『鎧鱗族』LV1
職業『なし』冒険者ランク:なし
「『リュウ』さんでよろしいですね。LV.は1で、種族が、…!!鎧鱗族って珍しいですね!私、初めて見ました!意外と人間っぽいんですね。」
「あはは。よく言われます。」
(初めて言われたけど適当に話あわせとこ。てか龍人の表示じゃないんだな。多分プライバシーに考慮して、簡素なステータス表示にしてるんだろう)
俺はあまり深く考えず、受付のお姉さんの話しを聞く。
「ですけど、まだ職業登録お済みでないんですね。よろしければこちらで登録しちゃいますか?」
「!?。はい!ぜひお願いします!」
俺はこの時、自分の心拍数が上がったのを感じた。というのもこの職業システムは、このVerse:Day最大の特徴であり、冒険者には欠かせないものである。
ーー遡る事、約4ヶ月前…
西暦2045年6月10日PM7:00に天使グループのチャンネルにゲームシステムについての詳しい説明動画が投稿された。その内容というのが主にこの職業システムだった。
その内容とは、様々な職業による違いや、装備できる武器、取得可能スキルなどが紹介された。
その中でも俺が特に注目したのが階級進化と職業融合だ。階級進化とは、職業のLV.が最大まで溜まると進化できる仕様のことだ。そして職業融合とは、職業同士で融合をし、新たな職業を生み出すことだ。
職業は最大でそれぞれ5つまで登録可能。
つまり5つまで職業を選び組み合わせ、階級進化や職業融合などをして、自分だけのスタイルを築き冒険をするのが、このVerse:Dayの醍醐味である!。
そしてその動画以降、一つの職業に焦点をあてた動画が随時、投稿されたのだ。それはまた後でお話しするとして…
ーー俺はそれを思い出しながら職業を何にするか決めた。というよりは決めていた。
「ではこの中から自分に合う職業を選んで下さい。ですが条件があり、必ず戦闘職業を一つ選んで下さい。でないと冒険者登録ができませんので」
そう説明した受付のお姉さんはステータスボードを違う画面に切り替えた。
《戦闘職業》
【剣士】
・斬属性の武器を扱うのが得意な職業。伝説の英雄王のメイン職業として、有名である。
[装備可能武器]
・片手剣・大剣・斧・刀・盾
【騎士】
・守りが得意な職業。数少ない、重装備が可能な職業である。
[装備可能武器]
・大剣・ランス・レイピア・盾
【重戦士】
・全職業の中で随一の攻撃力をもつ職業。重装備可能。機動性に難あり。
[装備可能武器]
・大剣・斧・ハンマー・盾
【弓狩人】
・全職業の中で唯一の遠距離物理武器をメインに使う職業。故にこの職業をとる人はマニアが多い。
[装備可能武器]
・レイピア・弓・鞭・ブーメラン
【拳闘士】
・全職業の中で武器を持たない職業。故に格闘で攻撃するのが主になり、攻撃力は防具によって上昇する。
[装備可能武器]
・籠手・ブーメラン
【調教師】
・唯一魔物を使役できる職業。故に魔物を使役しないとあまり意味をなさないスキルが多い。
[装備可能武器]
・片手剣・鞭・杖
【索敵者】
・探索に必要なスキルを多くもつ職業。どちらかというと補助的な役割が多い。
[装備可能武器]
・片手剣・弓・ブーメラン・杖
【魔法師】
・MPを消費して攻撃魔法を多用する職業。伝説の賢者がもっていたと言われた職業でもある。
[装備可能武器]
・杖
【気功者】
・SNを消費して攻撃する技能をより多く覚える職業。SN自体の強化もする。
[装備可能武器]
・籠手・ハンマー・ブーメラン・盾
【支援者】
・MPを消費して支援することに特化した職業。味方を回復する魔法なども覚える。
[装備可能武器]
・杖
《副職業》
【商人】
・商売において役立つスキルを多く覚える職業。
【運送屋】
・アイテム保有数の上限を上げたり、運搬速度を上げたりできるスキルをもつ職業。
【薬学師】
・薬草などを調合してアイテムを製作できる職業。
【料理人】
・食材などを調理して効果がある料理を作れる職業。
【大工】
・建物などの建築物を作れる職業。さらに作った建築物に効果を付与できるスキルを覚える。
【鍛冶屋】
・採石場などでとれる鉄などを加工して武器や防具などが作れる職業。
【裁縫者】
・魔物の皮や、布などを使用して、防具や服飾などが作れる職業。
「ではこちらから5つ選んで下さい。」
「じゃあ俺は…。」
俺は迷う事なく職業を5つ選んだ。
「…はい。ではこちらで登録致しますね。少々お待ち下さい。」
と、満面の笑みで言った受付のお姉さんは奥の方にある何やら大きな機械に先ほどのステータスボードをセットした。
するとすぐ横にある顕微鏡のようなものが作動し、レンズのようなものからレーザーが出始め、そのレーザーから3Dプリンターのようにひし形の小さな青い石が形成された。
出来上がった青い石をお姉さんが紐をつけてペンダントのようにして、そのペンダントをこちらへ持ってきた。
「おまたせ致しました!では登録が終わりましたので、次の項目に移させて頂きます。まずはこちらをお渡しします。」
受付のお姉さんは先程作ったペンダントを俺に渡した。
「これは、なんですか?」
「そちらはあなたの情報が記録された『記録石』になります。」
「記録石…?」
「はい!それはあなたがこれから活躍することも記録してくれる便利な物になります。
クエストやダンジョン攻略などの成功報酬を受け取る際に、記録石を見て確認致します。なのでかなり重要なものですので無くさないようにお願いします。
ちなみに再発行料金はお高めの小金貨百枚、つまり金貨1枚になります。」
(なるほど…、ゲームのログ機能ってことなのね。しかもログをみて成功報酬をあげるか判断をするなんて、なんか合理的だな。)
妙に納得した俺は記録石を受け取り、自分の首に掛けた。
「おめでとうございます!これでリュウさんも、Fランク冒険者となります。」
お姉さんは満面の笑みで俺を祝福してくれた。
(なんか照れるな〜)
俺はこそばゆい感覚と同時に、目の前の受付のお姉さんが素直に祝福してくれることに、キュンっと自分の胸が締め付けられたような気がした。
(おっといけない。相手はNPCだぞ。恋なんてしても儚い恋に終わるだけだ。だが、嫁にするのは悪くない!)
俺はそんな妄想めいたことを想像している自分に、鎮めるように言い聞かせ、呼吸を整えた。
「あの〜、これで終了ですかね?」
「はい!これで以上になります。」
「あっすいません…あといくつか質問してもいいですか?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
受付のお姉さんは俺の目を見てニコッと笑って返事をした。
(か、かわいい…。き、君のエメラルドグリーンの瞳に吸い込まれてしまいそうだ。)
俺はいかんいかんと思い、顔を引き締め、赤らめそうな顔を必死に堪えた。そして俺は可憐で美しいお姉さんに質問する。
「ファのッ、ソのっ、えっとー、クエストを受ける時は、どうすればいいのでしょうか?」
何故か俺はあたふたして、声が上ずってしまった。恥ずかしいぃ…。
「クスッ。そんな慌てなくても大丈夫ですよリュウさん。」
「あっその、すいません…。」
(あっ絶対今変なヤツだって思われた〜。)
俺は気をつかわれ余計に恥ずかしくなった。受付のお姉さんはそんなことを気にも留めずに説明をしてくれた。
多分こういう対応は慣れてるんだろう。色々とツラィ。
「まずクエストを受ける際には、あちらにあるクエストボードから自分が行きたいクエストをとり、こちらで手続きをいたします。クエストを完了した際は、また受付で手続きをして終了となります。
注意点があるとすれば自分のランクに見合ったものしかクエストを受注できないことと、もし失敗した場合は違約金が発生するくらいですかね。」
(なるほど。ランクを上げていくにはクエストの数こなしていけば上がるのかな?まぁ大体こういったゲームはそういう感じだし、クエストをやってけば勝手に上がんだろ。てかお姉さんの髪綺麗だな〜。ボブってところがまたいいよな〜。)
俺はお姉さんが金色の髪を耳にかける動作を見つめながら、もう一つ質問した。
「あっありがとうございます。あともう一つ失礼します。泊まれる宿とかってどこにありますでしょうか?」
声を発する度に俺の言動がおかしくなってきた。めっちゃはずい。だがお姉さんはそんなこともつゆ知らず、少し考えた面持ちになった。
「………それなら、いい宿がございますので、そちらで手続きをお願いします。場所はたしか…」
と言い出すとお姉さんはステータスボードをMAP画面に切り替えて場所を教えてくれた。
「ありがとうございます。えっとあの〜」
「クスッ、私の名前はリーファです。これからもお世話すると思いますので今後ともよろしくお願いしますね♪」
俺はその瞬間、心を射抜かれた。
(お世話されたい。ぜひずっと俺のそばでお世話を…。いやいや、ここは冷静な紳士を装わねば!)
「あっ、ありがとうございます。今後ともよろしくであります!」
「あっはい?こちらこそよろしくお願いしますね。」
「はい!ではこれにて失礼いたします!」
「行ってらっしゃいませ!」
個人的に話したいことが色々あったが言動がこれ以上おかしくなるのは嫌なので、宿屋へ向かうことにした。
〜西暦2045年10月1日AM9:36〜
《王城帝国 南西方面》
〜宿屋兼食堂 虎の穴〜
「ここが紹介してくれた宿…」
俺はMAPに印をつけていたので、すぐに到着したが、かなり入り組んだところにあった。
「途中にも宿があったけど、なんでこんな場所にある宿を紹介したんだ?まぁあの、おねぇさんが紹介してくれた場所だからきっと穴場的スポットなんだろ!」
俺は泊まる手続きをしようと宿屋の中へ入った。宿屋の入り口を見ると1Fは食堂になっており、2Fより上が宿になっているようだ。
「っらっしゃい。何のようだい?」
少し威圧した返事で迎えてくれたのが、番台のような場所で椅子に腰かけた、パッと見グラマラスな獣人の女性だった。女性には黒と黄色の配色をした髪と虎のような耳が生えており、眼鏡をかけていた。
「あの〜。宿に泊まりたいんですけど…、いくらになります?」
「あんた?冒険者かい?」
「はい?そうですけど…」
「ふ〜ん…」
彼女は品定めをするように、俺を見て不敵に笑った。
「ふんッ、見たとこあんた冒険者初心者だね。服に傷や汚れがついてないし、あと武器もろくに装備してない。あんたそんなんじゃすぐおっ死んじまうよ!」
彼女はそう言い放つと、机を軽く叩いて身を乗り出した。座っていたので分からなかったが身長が俺ぐらいでかなり筋肉質な体つきをしていた。
「あっすいません。後で武器は調達しに行こうと思っていて、先に冒険者登録してきました。」
「フン、そうかい?で、うちに何かようかい?」
彼女の眼光が、獲物を狩るような鋭い目になった。俺は刺激しないように用件を言った。
「いや、受付の人から宿を紹介してもら
ってここにやってきたんですが…、何かここに来ちゃまずかったですか?」
「いいや。そんなことないよ。ただウチの宿を紹介するなんて珍しいからね。とりあえず部屋は空いてるよ!。値段は1人1泊朝食付きで小金貨30枚、3泊で小金貨70枚、7泊で金貨1枚だね。それ以上はまけないよ。」
彼女は落ち着いた様子でまた椅子に腰かけ、眼鏡越しに見える鋭い眼光で俺を見つめた。
(こえー。なんでお姉さんはこんな場所紹介したんだ?いや決して疑ってるわけじゃないんですけど、なんで俺こんな扱いなんだ?あくまでも客なんですけど。)
俺がビビっていると彼女はその様子を見てこう言い放った。
「……お前さん。ここはやめとけ、あんたみたいな人間族が来ていい場所じゃないよ!ここは獣人族達の憩いの場所なんだ…。分かったら他のとこあたりな!」
(………。えっまさか俺人間族と間違えられてる?)
「あの〜俺、鎧鱗族なんですけど。」
すると彼女は目を丸くし驚いた表情になった。
「えっホントかい?あんたウソつくんならもっとマシなウソつけってんだい。」
「いや、本当ですよ。…そうだ!!ほらこれ見て下さい。」
俺は誤解を解くために記録石から情報を見てもらった。
「あらホントだわ。ゴメンねぇ。あたい、背が高いからてっきり人間族かと…」
「いや、いいですよ!で、俺は泊まってもいいんですかね?」
「あ〜。構わないよ!」
「じゃあとりあえず7泊で!」
俺は鞄から金貨1枚を取り出し彼女に渡した。すると彼女の顔が一気に変わり、驚いたような態度をとった。
「あんた即決かい!?はぁ〜気前がいいのね。…気に入った!あたいは見た通り獣人のノルンってんだ!ここの店の女将をやってる。ここらじゃそれなりに名が通ってるからね!困ったらあたいのところに来な!あと本当の値段は7泊小金貨10枚だ!」
(えっこの人ふっかけてたのかよ!)
俺は心でツッコミをいれながらも、その場を穏便に済ますため、感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとうこざいます!俺はにんげ…じゃなかった。鎧鱗人のリュウです!これからよろしく頼んます!」
「おう!よろしくな!お詫びに今ここで飯食ってくか?どうするよ?特別に無料でご馳走するよ!」
女将は腕をまくしたて、今にでも調理をするよと言わんばかりに張り切っていた。
「あのっ嬉しい申し出ですけど、すいません。武器の調達とか行かないといけませんので、後で食事を頂きます。あとお聞きしたいんですが、部屋はどこになりますか?」
「あぁすまんすまん。部屋は3Fの虎の牙って書いてある部屋だ。厠は3Fに併設してあるからそこを使ってくれ!」
「了解しました!では一旦街へ行ってきますので…」
そう言って立ち去ろうとした時にノルンが俺のことを引き止めた。
「ちょい待ち!あんた武器調達しようってんなら案内しようかい?あんた王城帝国に来たばっかりなんだろう?」
「えっ、お店大丈夫なんですか?」
「あ〜大丈夫だよ!ちょうどウチの旦那が食材を仕入れに行っていてね。ここにいてもやることそんなにないんだ。それにあたいが居れば顔がきくからね!」
「ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えて案内お願いします!」
「おう!あたいに任せな!そうなりゃすぐに出立するとしますかね。」
そう言うと女将さんはお店の奥から大きい樽を持ってきた。
「えっと〜女将さんそれはなんですか?」
俺は女将さんが持ってる樽を指差して質問した。すると女将さんはめちゃくちゃいい笑顔で答えてくれた。
「手土産さ♪」
〈第一章 第3話  完〉
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