俺の許嫁は幼女!?

白狼

109話 コスプレ衣装にはドキドキです

「3つ目の催しは、まずはテーブルにあるカードを保護者と生徒が1枚ずつ引いてください。保護者用のテーブルはあちらです。生徒用のテーブルはあちらです。そのカードには番号が書かれてあるのでその番号の記されたところへ行ってください。」


 俺たちは、3つ目の催しの説明を先生から聞き終わる。


「分かりました。美優、行けるか?」
「……は、はい。大丈夫です。」


 美優は、今も少し息が乱れている。本当なら少し休憩を取りたいところだが……美優が1位を取りたいって言ったんだからな。俺は、美優を信頼して進むしかない。
 俺たちは、すぐにテーブルの方に行って数多くあるカードの中から1枚、カードを引く。
 そのカードには「8」と書かれていた。


「8番は………あ、あれか。」


 俺は、8番と書かれてある箱を見つける。大人1人くらい余裕で入れそうな箱だ。


「この中に入れってことか?」


 俺は、その箱についている取っ手を引く。するとそこには1着の衣装が吊るされてあった。
 その衣装はタキシードだった。


「うわっ、こんなのを着なくちゃいけないのか?ってか、今着てる服はどうしたら………」


 俺がそんな疑問を抱いていると横に1枚の紙がはられていることに気づいた。
 その紙には「今着てる服は吊るしてください。後で返します。」と書かれていた。
 俺は、まず、タキシードを着て、今着ていた服は指示通り吊るした。


「これ、上手く着れてるのかな?」


 俺は、そんな不安を抱きながら箱の中から出る。


「美優はどうしてるかな………」


 俺は、周りをキョロキョロとすると少し離れたところで美優がチラッと箱の中から顔を覗かせていた。何か照れた様子だ。
 俺は、そこまで行き美優に声を掛ける。


「美優、着替え終わったか?」
「え?あ、お兄ちゃん。は、はい、終わったのは終わったんですが………」


 美優は、なにかモジモジしている様子だ。まぁ、いきなりのコスプレだからな。恥ずかしくないわけないか。


「美優、俺は笑ったりしないから出て来てくれないか?」
「………は、はい。」


 美優は、ゆっくりと扉を開けて出てくる。
 そこにはクマさん衣装に身を包んでいた美優がいた。


「お、おぉ………」


 俺は、その姿に少し息を呑んだ。


「や、やっぱりこんな姿、恥ずかしいです。」
「い、いや、すごい可愛いぞ。」
「ほ、ホントですか?」
「ああ、目に入れても痛くないってのはこのことを言うんだなってのが理解出来たくらいだ。」
「そ、そうですか………お兄ちゃんもとってもかっこいいですよ、そのタキシード姿。」
「お、おお、ありがとう。」


 俺たちは、お互い照れながら褒め合う。


「………って、こんなことしてる場合じゃなかった。早く先生のところへ戻ろう。」
「は、はい、そうでした。」


 俺たちは、衣装を着たまま先生のところへ向かう。


「わぁ〜!美優ちゃん!とっても似合ってるわ!とっても可愛い!」
「そ、そうですか?ありがとう……ございます………」
「お兄さんもとっても似合っていますよ。」
「あはは、ありがとうございます。」
「それではそこに2人とも、並んで立ってください。」


 俺たちは、先生が指さしている場所で指示通り並んで経つ。


「それでは何枚か写真を撮りますね。ハイ、チーズ。」


 俺たちは、流れで写真を5枚くらい撮られてしまった。


「はい、もう大丈夫です。それではお兄さん、スタンプを押すので紙を貸して貰えますか?」
「あ、はい。」


 俺が紙を渡すと先生がポケットに入っていたスタンプを取りだし俺の紙に押した。


「それでは次も頑張ってくださいね。次で最後の催しですので。」
「あ、あの………この衣装のままですか?」
「はい、そうですよ。」


 この姿で地域を走るのか。だいぶ恥ずかしいな。普通に一般の人もいるし。
 でも、恥ずかしがってる場合じゃない。今は、一刻も早くゴールへと向かおう。


「それじゃ、美優、行こうか。」
「は、はい。」


 俺たちは、先生に一礼してから矢印が示している方向へ進んでいった。
 でも、美優は少し走っただけですぐに息を切らし始めた。


「はぁはぁ………」
「………これ以上はダメだな。」
「はぁはぁ………ぇ……」


 俺は、走るのを止める。美優も俺が止まったのを見て走るのを止めた。


「美優、俺も1位は取りたいと思ってる。」
「はぁはぁ……わ、分かってます。だから、急ぎましょう。」
「ダメだ。」
「ど、どうしてですか?」
「1位は取りたい。だが、美優にこんなに無理してほしくない。」
「む、無理などでは………」
「頑張ってくれるのは嬉しいよ。だから、俺も少しは黙って見ていた。でも、俺はお義父さんとお義母さんに頼まれたんだ。美優をよろしくお願いしますって。もし、美優が倒れるようなことがあればそれは俺を信用してくれた2人への裏切りになる。あの2人は美優のことになるとすごい熱くなる。それは美優のことを大切に思ってるからだ。だから、俺もお前をちゃんと美優のことを大切にするよ。」
「………嬉しいです。お兄ちゃんがそこまで思ってくれて。お兄ちゃんの言う通り、私、どこかで無理してましたね。」
「気づいてなかったのかよ。」
「気づきませんよ。お兄ちゃんがこんなに近くにいるんですからどこまで無理しても平気と思えてくるんですから。」
「自分の体調管理はしっかりしような。」
「はい………でも、お兄ちゃん、このままだとゴールすら出来ないと思います。それだとお母さんたちが心配すると思うんですよ。だから、せめてゴールはさせてください。」
「ん〜、まぁ、そうだな。」


 でも、美優を走らせるのは止めておきたい。俺たちが今、どれくらい遅れているのか分からない以上、休憩も下手にできない。
 こうなったらあれをするしかないか。
 俺は、その場に屈み美優に背を向けた。


「美優、今からおぶって進む。美優は、これ以上無理をするな。」
「そ、そんな!それだったらお兄ちゃんがキツくなるじゃないですか。」
「今さっきも言ったが男子高校生を舐めるな。まだまだ余裕だって。美優1人、おぶったところでキツくなんかないよ。」
「…………分かりました。では、失礼します。」


 美優は、そう言ってゆっくりと俺の背中へ近づいて首に手を回した。
 俺は、美優の足を持ってちゃんと掴まっていることを確認してから立ち上がる。


「よしっ!それじゃ、行くぞ。」
「はいっ!」

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