俺の許嫁は幼女!?

白狼

40話 待ち合わせ場所に行く前に

「まだちょっと時間あるしコンビニに寄っていい?」
「何か買うものがあるの?」
「まぁ、夏だし虫除けスプレーとかあった方がいいかなって思ってな。」
「ああ、そういうことね。気づかなかったわ。」


 俺と静香は、駅前に向かう前にコンビニに寄り、小さ目の虫除けスプレーを買う。


「ほら、静香、かけてあげるよ。」


 とか言っても嫌がるんだろうな。
 俺は、そう思ったのだが静香の行動は俺の予想していたものとは全く違った。


「ありがと、お願いするわ。」
「え?…………」
「何、ボッーとしてるのよ。あんたがかけてくれるって言ったんでしょ。早くかけて。」
「あ、ああ、悪い。」


 俺は、静香の手や足にスプレーをかける。


「よし、終わったぞ。」
「何言ってるのよ、まだ首が残ってるじゃない。」
「首?」
「ええ、首もお願いするわ。」


 静香は、そう言って後ろに顔を上へあげる。
 髪は、頭の上で上手くまとめてあったので簡単にスプレーは、かけられる。
 だが……浴衣だからなんかうなじとかがすごい色っぽく見えてしまう。
 いやいや、何考えてんだ。静香は、まだ10歳。欲情なんてするわけない。
 俺は、そう自分に言い聞かせ静香の首にスプレーをかける。


「はい、今度こそ終わり。」
「ありがと、それじゃ、次は私がやってあげるわよ。」
「え?あ、いや、別にいいよ。これくらい自分で出来るし。」
「むっ!いいから!早く貸しなさい!」


 静香は、そう言って俺の手からスプレーを奪い取った。
 そして、そのスプレーを俺の手や足にかける。


「はい、最後は首。」
「首は、届かないだろ?自分でやるから。」
「だ、大丈夫よ!バカにしないで!」


 静香は、そう言って背伸びをして俺の首にスプレーをかけようとする。だが、まったく身長が足りず上手く首にかけることが出来ていない。
 俺は、仕方ないと思いつつ静香を抱っこする。


「ちょ、何してるのよ!?」
「何って、こっちの方がかけやすいだろ?」
「そ、それはそうだけど……いいから!早く下ろして!恥ずかしい!」
「あ、ちょ、暴れるなって。」


 俺は、ジタバタと暴れる静香を下ろし機嫌を宥める。


「はぁ、急に抱っこするから驚いたじゃない!全く、もう!」
「ごめんって。静香が大変そうにしてたからな。」
「そんなことないわよ!」
「はぁ、はいはい。」


 俺は、腰を下ろし静香と目線を合わせる。


「ほらっ、かけてくれ。最初からこうしていれば良かったな。」
「全く、本当よ。」


 静香は、ため息を吐きながら俺の首にスプレーをかけてくれる。
 俺は、かけ終わったタイミングで腰を上げ静香にお礼を言う。


「ありがとな、静香。」
「ふんっ、別にいいわよ。それよりも時間はまだ大丈夫なの?」
「ん?あっ!やべっ!忘れてた!」


 俺は、急いでスマホの時計を確認する。
 するとそこに表示されていた数字は、16時58分だった。
 ここから駅まで走っても5分くらいはかかる。
 まず間に合わない。それに静香は、浴衣姿だから走る事は困難だろう。
 仕方ない、こんな時は……


『ごめん!少し遅れる!』


 と、グループラインしておく。
 まぁ、俺の良く使う手だな。


「静香、少し急ぐぞ。でも、あまり無理しなくていいからな。」
「ええ、分かった。全く、ちゃんと時間とか確認しなさいよね。」
「悪い悪い。それよりもここから人通りが多くなるからほら。」


 俺は、静香に手を差し出す。
 静香は、1泊置いて俺に尋ねる。


「何よ、この手は?」
「はぐれたらまずいだろ?だから、そうならないようにするために。」
「…………分かった。」


 静香は、少し弱めに俺の手を握る。
 柔らかくてもちもちの手の感触が癖になってしまいそうだと思いながら駅前まで急いだ。
 それにしてもこの頃、随分と素直になったな。今日なんて自分から俺に虫除けスプレーをかけるって言ってくれたし。


「足、痛くないか?」
「………大丈夫、これくらい。」
「無理すんじゃねぇよ。みんなには少し遅れるって言ったから痛かったら言ってくれ。静香に怪我された方がみんな、責任を負いそうだ。それに俺も母さんから怒られる。」
「…………ちょっと痛い。」
「………分かった、なら、少しゆっくり行くぞ。」
「ありがと……」


 それから俺は、静香と手を繋いでゆっくりと歩いて駅前まで来た。
 スマホの時計を見るともう待ち合わせ時間に15分ほど遅れていた。こりゃ、みんなにまた奢らないといけないな。
 さて、みんなはどこにいるかな?
 俺は、周りをキョロキョロと見る。すると時計の下に見知った顔があり、声をかける。


「よっ、太輔。悪いな、遅れちゃって。」
「ああ、陽一。ったく、何してたん……だ………誰、この子?」
「ああ、紹介するよ。俺の親戚の子ども、静香って言うんだ。今日は、親が仕事で一緒に来れないから俺たちと回りたいって。」
「へぇ、そうなのか。よろしくね、静香ちゃん。」
「え、ええ、よろしく。」


 静香は、俺の後ろに少し隠れそう言った。
 へぇ、静香って人見知りだったんだな。俺の時は全く違ったんだけど……
 まぁ、いいや。


「他のみんなは?」
「康介は、飲み物を買いに行ってる。水城と麻美は、トイレだ。水城、お前が遅いからすごい心配してたぞ?」
「遅れるって言っただろ?」
「それでもだよ。まぁ、そろそろみんなも戻ると思うぞ。」
「静香は、トイレとか大丈夫か?」
「ええ、大丈夫。」
「そっか。もし、したくなったら俺に言ってくれ。………って言っても俺は、女子トイレにはついていけないから優奈か麻美に頼むしかないんだけど。」
「そうさせてもらうわ。」


 それから数分後、みんな集まった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品