俺の許嫁は幼女!?

白狼

37話 昔のような笑顔で

「…………」
「…………」


 俺と優奈は、お互い向かい合って座りそのままずっと黙っている。
 なぜだろうか、いつものように会話ができない。ってか言葉が出てこない。
 どうにかして言葉を絞り出さないと。


「………そ、そういえば優奈、服、変えたのか?」
「え、あ、う、うん……き、気分転換に……」
「そうなんだ、いいんじゃないか。」
「そ、そう?ありがとう。」


 そこで会話が終わってしまった。
 どうしよう、本当に言葉が出てこない。いつもみたいに振る舞えない。
 楽しげな会話……楽しげな会話……
 あれ、俺いつもどうやって話してたっけ?
 優奈もずっと下を向いてるからどんな表情なのか分からないし。


「二人とも〜、どうしちゃったの?ずっと黙って。二人が話さないと私が面白くないじゃない。」
「お、お母さん!?面白くないって!いつも面白がってたの!?」
「ふふ、さぁ、どうなのかしら?」
「も、もう!陽一君からも何か言ってよ!」
「ははっ、七海さんらしいですね。」
「なんで納得してるの!?もうっ!」
「ふふふ」
「ははは」


 お、だいぶいい雰囲気になったな。
 やっぱりこういう雰囲気じゃないと話しずらいよな。
 七海さん、もしかして俺たちのことを気にして話し出したのかな?
 ははっ、まさかな……


「あ、それよりも俺は、これを渡しに来たんだった。」


 俺は、そう言って足元に置いてあったお土産をテーブルの上に置いた。



「沖縄に旅行に行ったって言っただろ?そのお土産だ。」
「うわぁ〜、陽一君、ありがとう〜。」



 七海さんは、子どものように嬉しそうな顔をしながら俺のお土産を見た。



「お、お母さん!恥ずかしいから止めてよ!」
「えぇ〜、せっかくのお土産なんだからせめて喜ばないと。そっちの方が陽一君も嬉しいでしょ?」
「え?ええ、そりゃ、まぁ、そうですね。素直に喜んでくれると嬉しいです。」
「ほらね。あんたも大人ぶってないで素直に喜びなさい。そうしないと………いつか陽一君が誰かに取られちゃうわよ?」
「なっ!?お、お母さんには関係ないでしょ!?」
「ふふふ、関係ないなんて酷いわぁ〜。」


 七海さんが優奈の耳元に顔を近づけコソコソと何か言った後、優奈は、すごい顔を真っ赤にして七海さんを怒った。
 さすが七海さん。いつも温厚だった優奈を怒らせるなんて……
 こんな優奈を見るのも久しぶりだな。


「あら、陽一君、どうしたの?何だか嬉しそうな顔をしてるわよ?」
「え?あ、いや……何だか久しぶりに優奈の本当の姿っていうですかね?そんなものを見れたので嬉しかったんです。」
「ん?本当の姿って何?」
「いや、もしかしたら俺の勘違いかもしれませんが何だか優奈、中学の頃からすごく俺によそよそしくなったような気がするんですよね。それに昔は、こんな可愛らしい笑顔をするのにこの頃は何だか作り笑顔っていうんですかね?そういう感じなんですよ。」
「あらあら〜、そうなのぉ?ふふふ」
「か、かわ……」



 な、何だ?俺、なんか変なことを言ったのか?七海さんは、すごい面白いものを見たような顔をしてるし優奈は、顔を赤くしておどおどしてるし。どうしたんだろう?


「俺、なんか変なこと言いました?」
「ううん、そんなことなわいわよ。いやぁー、やっぱり陽一君は、変わらないわねぇ〜。」
「そ、そうですか?俺、結構変わったと思うんですけど?」
「確かに中学生くらいから変わり始めたけどやっぱりどんなに変わっても陽一君がいい子なのは変わらないわよぉ〜。」
「いい子……ですか?俺が?」


 るみちゃんから毎回怒られてるんだけどな。


「まっ、そんなことよりもこれが家族用でお菓子とか色々なものが入ってます。そして、こっちが優奈だけのもの。」
「え?わ、私だけ?そ、そんな、悪いよぉ〜。」
「そう言いつつも顔のニヤニヤが隠しきれてないわよ。本当は、あんただけのものがあって嬉しいくせに。」
「お、お母さん!もう!今さっきからなんなの!」
「ふふふ、ついしちゃうのよ。悪気はないわ〜。」
「悪気しかないでしょ!」


 優奈、七海さんのことあんなふうに毎回怒ってるけどなんだかんだすごい仲がいいんだよな。俺と母さんも昔は仲が良かったんだけどなぁ。なんか今じゃどこかよそよそしくなったんだよな。これが思春期ってやつか。
 まっ、そんなことはいいとして早く中身を出そっと。


「優奈、まずはこのシーサーが模様として付いてるシャーペンなんだけど、どう?」
「わぁ〜、可愛い!ありがとう!」
「確か、前にシャーペンが壊れたとか言ってたからちょうどいいかなって思ったんだけど喜んでもらえてよかった。」
「覚えてくれたの?………えへへ」
「隠しきれてないわよ、すっごい笑ってるから。」
「っ!」
「別に隠さなくてもいいよ。喜んでる姿が見れて嬉しいから。」
「う、うん……ありがとね。」


 それから俺は、どんどん優奈のために買ってきたお土産を出していく。ハンカチや帽子他にもいっぱい。その全てを優奈には喜んでもらえた。
 そして、最後にキーホルダーを見せた。


「これが最後だな。はい。」
「わぁ!シーサーのキーホルダー!?可愛い!ありがとう!」
「それ、俺も一緒のやつを持ってるんだ。ほら。」
「あっ!本当だ!お揃いだね!」
「ああ、そうだな。」


 そのキーホルダーは、静香に渡したものと同じなのだ。まぁ、それを言うと静香の説明をしなくちゃならないかもしれないので言わないでおく。


「本当にありがとね、陽一君!ずっと大事にするね!」


 優奈は、俺があげたお土産を大事そうに抱えながら笑顔でそう言った。
 俺は、一瞬その表情に見とれてしまい返事をするのが遅れてしまった。


「………あ、お、おう!」
「うふふ、やっぱり若いっていいわねぇ。あ、そうだ!ねぇ、陽一君、もう日も暮れそうだし夕飯食べていかない?お母さんには私の方から連絡するから。」
「で、でも、ご迷惑じゃ……」
「いいのいいの。お土産を貰ったお礼をしたいしそれにあの人も久しぶりに陽一君と話したいって言ってたのよ。だから……ね、お願い!」
「………いいか、優奈?」
「うん!もちろん!」
「それじゃあ、お言葉に甘えてお願いします。」


 ということで今回の夕飯は、優奈の家でご馳走になることになった。

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