僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。

黒山羊

EP18 思わぬ遭遇、いざ秋田へ

隼人の最寄りの駒入駅は自宅から徒歩10分のところにあり、若干遠めといった距離である。
 これから彼が向かうのは件の東山財閥のある千葉ではない。強行突破しようにもあの警備員に閉め出されてしまうだろうし、吹雪も彼を入室はさせてくれないだろう。

 と、言うことで【仁】という名の男のことを彼は親である西峰 幸之助こうのすけに聞いてみた。知っていたら儲けものぐらいの気持ちだったが、東山財閥の御曹司の執事を司るものとしてそこそこ名前が売れていたらしく、情報が手に入った。

 なんでも、もとは東北の方の一般企業で働いていたらしく、問題事を起こしたことでリストラされて1年くらい求職していたところを東山財閥の現社長が雇ったという流れだそうだ。その部下を育てる力は執事業界でも有名らしく、今では執事の模範として君臨している。

 話を聞いた限り、東山財閥に恨みがあってテロを起こすような人物には見えない。まぁ、この男がテロをしたとは限らない、でも何者かは知らないが隼人にあの映像を見せた者はきっとあの情景をヒントとして与えてくれているような気がする。直感だが。
 情報源があれしかないのだから、仕方がないのだ。

「さて、これから向かうのは秋田の【グランドペアレンツケア】さんか。福祉を中心としている会社だな」

 隼人は駅のホームで電車を待ちながらスマホで調べた情報を口にしながら確認した。

 ピーンポーンパーンポーンと、駅に電車が間もなく来ることを知らせるチャイムが鳴る。
 その時、すぐ横から「ま、間に合ったぁ」と、ゼェゼェと息を切らした女の子が立つ。どうやら急ぎのようだった。

「…ん?」

「…あ」

 隼人と少女は目が合うと、お互いの顔を認識して間もなく名前を口にする。

「早希」
「隼人くん」

 息ぴったりであった。

「は、隼人くんもいたんだ。アハハ。」

「ああ。これから用事があってね」

 と、なぜかギクシャクとした雰囲気の中、東京行の電車【山手線】が到着する

 二人はササっと電車に乗り込む。無言のまま隼人が座った隣の席にチョコンと座り込んでくる。早希の顔は少し赤く紅潮する。その顔がなんとも言えないくらい可愛かった。

「け、今朝メールありがとね?」

 先に沈黙を破ったのは隼人の方だった。

「い、いえいえ。こちらこそ急にごめんなさい。」

「「…」」

 再びの沈黙。なんとか話題をふろうと隼人は再び話しかけた。

「さ、早希はどこに行くの?」

「うんとね、新宿でお買い物をしようと思って」

 早希はエヘヘと笑いながら言う。言われてみると、早希の服装はバッチリと決まっていてデートのときと同様でとても可愛くセンスが良かった。薄めだがメイクもしっかりしてあるようでいつも可愛いが今日はいつもよりも少なくとも2倍は可愛かった。
 先程から可愛いしか言っていないがそれしか言いようがないんだもの仕方がない。
 短めのスカートから出ている細長く華奢な足が目に入り、思わず目をそらす。

「隼人くんはどこに行くの?」

 早希も聞いてくる。

「俺はちょっと用事で秋田にこれから新幹線で行くんだよ」

「え、秋田!?」

 やっぱり、驚かれると思った。内容の説明はできないから行く理由を聞かれたときのための言い訳を必死に即興で考えようとしたが

「秋田かぁ!いいなぁ!お土産よろしくね!」

「…え?」

 理由は聞かれなかった。

「悪い子はイネエガァ」

 早希は可愛い笑顔と少し尖った八重歯を光の反射でキラリと光らせながら【なまはげ】のマネをしてきた。

 うん。全然怖くない。こんなやつが来るなら年中悪さをしてやろうじゃないか

 そう思えた。

「お土産か。覚えていたら買ってくるよ」

 隼人はそう笑いながら思わず咲希の頭をナデナデとなでた。
 咲希は嫌がらず頬を赤らめながら照れていた。
 高ぶるこの感情を解説しようかと思ったが長くなってしまうので割譲する。

 新宿よりはやく東京につき早希に手を降って下車する。
 そのまま新幹線が待つホームまで歩いていた。

 そんなとき、ふと思ったのだが隼人と咲希が乗り込んだ駒入駅から山手線で、新宿まで乗るなら隼人が乗った方と反対の車両に乗り込んだほうが遥かに早いはずだった。
 咲希は天然なところがある女の子だから偶然間違えたのだろうか?それとも、反対車両にいた隼人を見つけてこっち側に来たのか?

 まぁ、どうでもいいか

 そう思い、無事東北新幹線に乗り込んだ隼人。

 心なしか、背後から視線を感じたのだった。

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