ナイトメア

ノベルバユーザー164834

街の夢

 ニューヨークの郊外に小さな街に住む少年は世界中を回っても何万と居るほどのごく一般的な生活をしていた。
「デイビッド、起きなさい」
 日曜日の朝くらい寝させてくれたっていいじゃないか… そう考える思考すらただの少年である。
 まったく、これじゃあ休日ってものの意味がわからないや…


 「デイビッド、今日 アグレーン公園で日曜市があるそうよ、友達とでも行ってきたら?」
 「それってマシューおじさんが店出してるところ?」
 「そうよ、今度は''ホットドッグ屋で儲かるんだー!''って必死だったんだから、見てきてあげて?」
 マシューおじさんは僕の母の弟で、フードトラックを道端に停めては色々な物を売ってるらしい。先月まではケーキを売ってたみたいだけど今月からはホットドッグか…儲けると言っている割には同じものが2、3ヶ月と売れているのをみたことがない。
 「え?今度はホットドッグ屋をやってるのか?」
 「みたいよ、弟の店だからってわざわざ食べに行こうとも思わないわ」
 もう父も母も長くおじさんの店には行ってないらしいが、おじさんとの仲は相変わらず良いらしくおじさんの話は母からよく聞く。
 「デイビッド、お母さんにマシューのホットドッグ買ってきてくれない?」
 僕は母から5ドル札を受け取ると身支度をし家をかけ出た。


 「デイビッド、遅いじゃん、遅刻遅刻!もう3分も過ぎてんだよ!」
 「悪い悪い、ちょっと母さんと話し込んじゃっててさ…」
 日曜だからゆっくり寝たかった。なんてとてもじゃないけど言えない。
 一緒に市に来たのは同級生のジョンソン、彼もマシューおじさんの事は知っている。
 「おじさん、今度はホットドッグ屋だってさ」 
 ため息と共に言葉が出てしまう。しかもそのため息が移ったかのようにジョンソンもまた
「本気かよ」
 と言葉を漏らす。そうなるにも無理はない…と僕は思った。
 「デイビッド、ジョンソン!よく来たなぁこれが俺の ''マシューホット&ドッグスタンド''だ、どうだ?かっこいいだろう」
 出た。マシューおじさんの謎のネーミングセンス...思わず2人とも目が丸くなってしまった。
 「う、うん、ところで母さんがマシューおじさんのホットドッグを買ってあげるから、たまには顔を見せに来なさいーー。だって」
 マシューおじさんはどんな話をしたって顔色1つ変えずに笑っている。僕も、マシューおじさんの事は大好きだし、昔からよく遊んでいる。でもころころと職種が変わることには賛成はできない。
 「仕方が無いなー。それじゃあまた''そのうち帰る''って言っておいてな」
 「おじさんってデイビッドのお母さんと仲悪いの?」
 とジョンソンが笑いながら聞いた、するとおじさんは出来上がったホットドッグを袋に入れながらまたしても笑いながら
 「ははは、悪いことはないさ、ただ俺がまったく顔を見せないから心配されただけさ、ほら出来たぞ!まあ、1回食ってみろ」
 袋を開けてみると、決して他のホットドッグ屋のホットドッグと変わらないホットドッグが3つ並んでいた。そのホットドッグを僕達はかぶりつく。
 「うん、悪くないね!」
 おじさんにとてもまずいとは言えない。でも気をつけないと本当にまずいと言ってしまいそうなくらいの味…
 どうしたらこんな甘いホットドッグが作れるんだよ…と心の中では叫んでいる。 ''悪くない''がこのホットドッグに与えられる最高の言葉だろう。
 「おっ、だろ?なんたって俺の考えた最高のキャラメルソースがかかっているならな」
 僕はおじさんの舌を疑った。そしてジョンソンに目をやると、彼は無言で一口にホットドッグを詰めて水で流し込んでいた。その気持ちはなにも聞かなくとも僕にはわかっていた。というかこのホットドッグを食べればおじさん以外の誰でも分かるだろう。
 「じゃあまた感想聞いといてな」
 そう笑顔のおじさんに別れを告げて僕はジョンソンともう一度日曜市を家に向かって歩き出した。おじさんの''キャラメルホットドッグ''を片手に。


 「少年たち、夢は持っているかい」
 1人の老婆に止められた。見た目70代後半だろうとも見える老婆だった。
 「夢…」
 僕達が何を話そうと老婆の顔はシワだらけなだけでなにも変わらない…そんなことより、この老婆相手に時間が経つのが気になって仕方がなかった。
 「これは欲しくないかい?」
 と言った老婆の手にはシルバーに光る''謎の石''が付いたペンダントを持っていた。
 「ジョンソン、行こうぜ」
 いくらまずいと言ってもホットドッグが冷めてしまうと思った僕はジョンソンと共に帰ろうとした。
 「今なら10ドルで譲ってあげるから、さあ、少年。どうだい?」
 見た目にはとても考えられない力で僕の腕を老婆は引く。
 「わ、わかりました。はい、10ドル」
 もうどうしようもないと思った僕は、老婆の押し売りを受けて何に役立つのかわからないペンダントを手にしてしまった。
 「なんなのそれ?ただの石っころじゃないか、10ドルだなんて嘘なんじゃないのか?」
 ジョンソンの言う通りだと思っている。そんなこと考えるより先に
 「そうだよな。」
 と口が言っていた。でもあの老婆から逃げるには買うしかない…と思った矢先の行動だったんだ。結果はオーライ、と言った所だろう。
 「それにしてもこんなに光る石、みたこと無いよな」
 2人は信号で止まる度に石を太陽にかざして眺めた。
 「そんなことよりデイビッドのお母さん、ホットドッグ食ったらなんて言うかな?」
 老婆のおかげでホットドッグの味なんて忘れていた。しかし、おじさんの顔が脳裏によぎった瞬間、口の中に''あの''ホットドッグの味が広がった気がした。
 「絶対にまずいって叫ぶよ」
 僕の心は今ちょうどまずかったと叫んでいる。多分母もこの後叫ぶことになるだろう。そんな会話をしながら、ホットドッグが冷めないうちに家にかえることができた。

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