『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

 ベルトの敗北 地獄の炎

死の付加デス・エンチャント

 不死の存在を殺すためだけのスキル。 それを大魔王シナトラに叩きこむ。

 だが、手ごたえは――――

「効かぬ……効かぬぞ? ベルト」

 叩き込んだ直後、動きが硬直した瞬間にシナトラは杖を振るう。
 
 回避は不能。 辛うじて防御が間に合う。

「――――なぜ、聞かぬ。……そうか」

死の付加デス・エンチャントとは『死』という概念を打ち込むスキル。

 だが、今の大魔王シナトラは――――死を克服している。

 これにより、死の概念が曖昧になったのだ。

『黒き稲妻』

 シナトラの広範囲魔法。 避ける事は不可能……本来ならば。

 ベルトは走る。 一撃でも当たれば、この戦いの勝敗を決めかねない攻撃。

 竜王ゾンビという足場を利用して、地面に向かってかけ下がっていく。

「むっ……そうか、背を向けて逃げるのか。 ベルト・グリム!」

「誰か逃げるかって!」

 加速したベルトの体は飛翔。攻撃魔法の終了を狙って、一瞬でシナトラの目前まで戻り――――

 「≪死の付加≫……冥王襲名バージョン」

 黒い外装。  白い瘴気が立ち上る。

「おぉ! 冥王の力か! これを超えれば……貴様を!」

 シナトラの魔力が跳ね上がる。 そして、それは炎を変化して、その手にある杖に集中していく。

 ベルトの打撃。 繰り出される連撃をシナトラは、素手で弾き――――

 一瞬の隙をつき。杖をベルトの体に――――

 「黒い炭にでもなるがいい――――さらばだ。ベルト・グリム」

 閃光。 一瞬、眩い光にベルトの体は包まれ、炎上。

 そのまま、龍王ゾンビから落下した。

 それを大魔王シナトラは見向きもしない。

「最強の暗殺者ベルト・グリム。もはや他愛なし……ならば、次は勇者を討つべし」

 それだけ口にして、龍王ゾンビは移動を開始した。

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 高所からの落下。 全身を焼かれ、呼吸すら危うい。

 だが、それでも彼は生きていた。

 復讐。 もう一度、戦えば――――

 彼の精神、彼の肉体は、復讐を誓う。

 魔王の魔力。 全身を焼き尽くし、肉体を炭へと化す地獄の炎。

 それはいまだ消えない。 それどころか勢いを増している。

 明らかに不自然な炎の揺らぎ――――もし、この場に高名な魔法使いがいたら気づくかもしれない。

 ベルトの肉体が、彼の意思すら無視して、分析――――魔力を帯びた炎を分解して、再現している事を――――


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