『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

 捕縛されたソル

 「まさか、ここで捕縛されてしまうとは想定外でした」

 「……総大将が自ら出現してそれはないだろう」とベルトは言う。

 相手――――ソル・ザ・ブラッドは捕縛されている。

 全身を大きな鎖で巻かれ、逆さづりにされている。

 もちろん、ただの鎧ではない。 魔力や筋力を封じる特殊な素材。

 勇者の力を手にしたソルですら、自力での脱出は無理と言い切れる。

「まぁ、どうせ殺されはしませんからね。無茶をしてもいいでしょ?」

「そうかい? ここでお前を始末しても事故で済まされると思うぞ」

「おぉ、怖い怖い。それで、どうでしたか?」

「何がだ?」

「決まっているじゃないですか? 正義の勇者として目覚めたメイルさんですよ。あの天使はどうなりました?」

「天使は、あのあと姿を消したよ」

「あぁ、彼女の任意で召喚、顕現が可能というタイプなのでしょうね」

「タイプと言うなよ。それで……お前はいつからメイルが正義の勇者だと気づいていた?」

「ふん、愚問ですな。 貴方と同じく、最初からでしょ? ……勇者に相応しい者なら、あの子を連想する。それも正義というならばなおさら……」

「ふん、戯言を」

「まぁ、私はここで一度フェイドアウトします。 それではみなさん、また逢う日まで」

「いやいや、お前。 自分の部下たちがどうなったか知らなくていいのか?」

「え? 部下?」とソルは、本当に心当たりがないような様子だったが、

「あぁ、魔族の残党のみなさんですか。 まぁ夢見ちゃいますよね。勇者が味方なら魔王復権なんて」

「お前は、どこまで……腐っているんだ」

「それで? みなさん、どうなりました? 処刑されましたか?」

「離脱や撤退したとは思わないのか?」

「いいえ、もう彼等の心は死兵でしたから、もう死ぬまで戦うでしょうね」

「お前の側近みたいだった連中は、全員捕縛されているよ」

「おぉ、我が四天王は全員無事なのですか」

「捕縛されていると言ったはずだが? というか、四天王って呼んでいるのか?」

「捕まっているだけでしょ? あとは拷問や重い刑罰が行われるのでしょうが……関係ありません」

「関係がない、お前は何を考えて……いや」

「おやおやヒントを出し過ぎましたね。 私は『魔王の勇者』である以前に『生と死の勇者』ですからね」

「――――ッ 殺しても無意味か。お前を含めて……」

「いいえ、むしろ死後強化されるタイプです」

「うるさい。次に会う時は――――」

「えぇ、用意しておいてくださいね。 私を滅ぼすための秘策を」

「用意しておくよ。必ずな」とベルトはソルに背を向けて歩き始めた。

 振り返る事なく。 

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