『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

襲来 盾の魔族 マルキ・フォン

空から落下してくる魔族。 ベルトとメイルには見覚えがあった。

 『魔王の勇者』ソルが手下としていた魔王の残党。 

 その1人。 体を焼けながらも聖なる力を使う盾の魔族。

 つまり―――

「気をつけろ! 奴はお前ら、聖騎士団の天敵だぞ!」

 だが、ベルトのその言葉を理解できた者はいない。

 魔族が落下と共に聖騎士団は飛び掛かっていく。

 「――――笑止」

 そう言ったのは魔族だ。

 『教会』の本拠地、聖騎士団たちを相手にしても魔族は不敵だった。

 神聖化された騎士団の剣、それらを魔族の盾は弾いた。

「なんだ、コイツの盾……近づくと触れる前に弾かれるぞ」

 騎士団の誰かが叫ぶ。
 
 「あの盾は聖属性だ。同属性の反発力だ」とベルト。

 その言葉に騎士団の皆が動きを止める。

 「聖属性? 魔族が?」と理解できない様子。

 無理もない。 魔族に取って聖属性は、体を蝕む物。

 それを魔族自身が防具にして使うという前例はないのだ。
 
 しかし、事実として――――

 魔族は体を聖光に焼かれながらも、盾を振り回している。

 「だったら、この!」と前に出る小さな影。 

 それはアルクだった。

 彼の攻撃は弾かれる事はない。 ベルトと戦う時に使用していた刃を潰した剣に聖属性はない。

「小さき者よ、覇気は良し! だが、膂力は追いついておらぬ……フン!」

腕力差。 盾の縁《ヘリ》がアルクに叩きこまれる。

盾と言っても、まともの食らえば即死。 剣で受けるも――――

「ぐ――――うわぁ!」と剣を叩きられ、盾の打撃を体に受けたアレクが宙に舞う。

「正義の勇者が顕現すると聞いて来たが……さて、今の小僧が一番闘気に満ちていたが、まさかな」

倒れたアレクを一瞥すると、視線をベルトに移す。

「やはり、この中で強者は毒の暗殺者 ベルト・グリムか……直接戦闘は禁じられてはいるが目的の障害として排除すればよかろう」

「うむ……戦ってもいいが、その前に聞いておきたい事がある」

「む? よかろう」

「正義の勇者の顕現? 何の事だ? それは誰から聞いた?」

ブラフである。 

この場所に正義の勇者が顕現する。それは勇者カムイの神託であり、事実である。

しかし、それが魔族に漏れているのはなぜか? 情報を漏らした者がいる。

あの世界中の有力者を集めた会議から? それとも……

「知らぬと言うか? それとも、所詮は人間からの情報。信憑性は薄い……いや、だが……では? なぜ、この場に貴様がいる? ベルト・グリム?」

「さてね? お前たち魔族を帯び寄せる罠だとは思わなかったのか?」

「ほう、それは楽しみだ。堪能させてもらうぞ!」

「いくぞ、俺はベルト・グリム……毒の暗殺者だ」

「名乗り上げるか! これは愉快! やー やー やー 我が名は魔王シナトラの親衛隊補佐だった男 マルキ・フォン! いざ――――」

「いざ、尋常に――――」

「「勝負!」」    



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