『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

魔王の勇者

「なぜ……なぜ、死なぬ! ベルト・グリム! 貴様は死すら克服した化け物に成り下がったかッ!」

「いいや? 死んださ。死んだが俺の中には複数の生があるのさ」

「何を……いや、待てよ。そうか……貴様! 冥王の他にも心臓を喰らっているのか!」

「それに答える義務はないね―――― ≪魂喰い《ソウルイーター》≫」

 魔力の刃がソルを襲う。 だが、致命傷とは言えない。

「ぐっ……まぁいいでしょう。今日の所は顔見せという事で……」

「逃げれると? そう思っているのか?」

「えぇ、私には逃げる事に特化したがあるのでね」

「もう一度、言う。本気で、俺から逃げれると思っているのか?」

「ならば、私ももう一度言いましょ……」

「不要!」とベルトは地面を蹴る。

すぐさまソルも反応を見せ、肉体を幻想の中へ。そのまま別次元を利用して脱出を――――

「させません ≪不可侵なる壁《ウォール・オブ・アンタッチャブル》≫」  

「なっ壁! いや、これは神の領域か! 聖女、メイルっ!お前が……お前如きが、この戦いの水準にたどり着くか!」

「当然だ。メイルは俺の相棒だぞ……≪二重断首刀《ギロチンエックス》≫」

 周囲に鮮血が舞う。 傷口を庇うようにソルはしゃがみ込んだ。

「どうやら、逃げきれなかったみたいだな」

「そのようですね……ただし、逃がさなかった事を後悔するには貴様らの方だ!」

「……何を?」

だが、すぐにベルトは迫りくる4つの気配を感知した。

「この気配は……魔族? なぜ、地上に」

「決まっているさ。私は地上ではギルドを操り、地下では魔族を手を結んでいた。魔族との盟約は――――私の死後でも継続されている!」

 4人の魔族は、すぐに肉眼で把握できる距離まで迫ってきた。

 全員がソルを庇うように武器を構える。

「ソル、お前? 新しい魔王にでもなるつもりか?」

「まさか、魔王とはあの人の事、あの人以外はありえません。だから

 『生と死の勇者』を改め『魔王の勇者』とでも名乗らせてもらいます」

「戯言を」

「戯言? えぇ、人は狂わなくて何が人生ですか? 地上と地下のコネクションを利用して……次代の勇者候補を全員倒せば……私が絶対なる勇者として破滅を世界に与えてあげますよ」

「なら、ここで――――メイル!」

「はい! ≪真実の弾丸《トゥールショット》≫」

 破邪の弾丸がソルを含めた魔族たちを狙い発射される。

 それも1撃だけではなく、一瞬で何十発も――――

 「いや、それは対策済みだ」と魔族の中から大柄の者が一歩前に踏み出す。

 そして、取り出したのは盾。魔族が持つにしては――――神聖な加護を感じる。

 事実、その盾をもってメイルの弾丸を受け切っているではないか!

 「なぜ、魔族が神々の力を!」とメイル。

 「使えぬ、神なんぞに仕えぬさ! ただ、身を神秘に焼かれ耐えるのみ」

 大柄の魔族が言う通り、その身からは焦げたような臭いが漂い、煙すら見えている。

そして――――「撤退!」と魔族の1人が叫ぶ。 それからの動きは訓練されたかのように統一され、ベルトたちの追撃を許さぬ速度で消えていった。

果たして、残されたベルトとメイルは何を思うだろうか?

 

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