『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

ベルト・グリムの死???

「そうだな。まずは……≪致命的な一撃《クリティカルストライク》≫」

 ソルの胸部に叩きこめられた拳は内部破壊の極み。

 「――――ががはっが」と常人では何度と絶命している痛みがソルを襲う。

 だが、「むっ」とベルトは異変に気付く。

 (技の効き悪い?)

 するとソルは、拳を握りしめると自ら胸を強打した。

 ≪致命的な一撃《クリティカルストライク》≫の衝撃がソルの外部へ移動して消滅したのを確認する。

 「い、今の私は『生と死の勇者』……死の要因を排出した」

 「なるほど、今のお前は極端に殺し難いという事か……そいつは酷く愉快だな」

 その言葉にソルは背筋が凍る。 その恐怖のままに撤退の判断を――――だがさせない。

 後方へ飛ぼうとするソルの腕を掴み取る。 そのまま、野太い風切り音がブーンと鳴る。

 ベルトがソルの体を振り回す。

 遠心力に従い、真っすぐに伸び切ったソルの腕。  その肘部分にベルトは腕を振り下ろした。

 異音。 腕が完全に破壊された時に鳴り響く異音だ。

 「うああぁ……なぜ、幻想の肉体が……物理的な痛みを……」

 「簡単な事だ。俺の創造力が幻想化していくお前の肉体に骨を作り、腱を作り、肉を作った。それだけの話に過ぎない」

 「理屈すら……この世の摂理すら、思いのままか! この化け物め! だが――――

 だが、それが良い! 非常に良いってやつだ。それでこそ、ベルト・グリム。 化け物は、化け物だからこそ、勇者である私に殺される資格がある!」

 「狂ったかソル? それとも、今からでも狂気に染まるか?」

 「無論、後者! 勇気に、正義に狂わずして、何が勇者か! おぉ、怪物《ベルト》よ。いつだって、どんな時だって醜悪であれと私は願い続ける」

 「そうか、じゃ星に願えよ……≪暗殺遂行《アサシネーション》≫」

 ソルの後方へ瞬間移動したベルトは、その頭部を掴む。

 そのまま――――

 頸椎破損

 ソルの首は力を失い、重力に従って視線は上空を見上げる。

 だが――――

 「捕まえた!」

 だが、それで死ぬ男ではない。 失いかけていた瞳に生気が宿る。

 「死の要因を右へ、生の損失を左へ……」

 (詠唱? 接近戦で魔法を使うなんて素人みたいな真似を?)

 だが、ソルが繋いだ詠唱は一節のみの超短文詠唱。

 両拳を同時にベルトへ叩きこむ。 ――――そのはずだった。

 「たとえ一節だけだとしてもこの水準領域の戦いでは、致命的な隙だ」

 ソルの拳は宙を切る。 ベルト、余裕をもって避け、さらには反撃を――――できない。

 「――――なッ!」と体を強張らせ、僅かではあるが硬直状態になる。

 「私が創る幻想の世界へ攻撃のみ飛ばして、お前に当てさせてもらった」

 「たとえ一瞬でも、この水準領域の戦いでは致命的な隙だ? そのまま返させてもらうぞ……ベルト!」とソルは異形な笑いを浮かべ――――

 再び両拳を叩きこむ。今度こそ、ベルトの胸を捉えた。

 「この攻撃は、生と死の因子を叩きこむ物。いくらお前だろうと、いくらベルトだろうと……死ぬ」

 勝ちの確信。 怨敵の死亡。

 その両目には爛々とした狂気が宿り、耐えきれなくなった感情を外へ発散しようと笑い声を――――

 「あっそ!」とそれをかき消すようにベルトの動く。

 予想外に行われた死者からの反撃。 反応どころか認識する事ですら難しく――――

上段回し蹴り《ハイキック》がソルの側頭部を捉えていた。

 

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