『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

生と死の勇者 その正体

 強過ぎた浄化の力で仲間まで昇天してしまう。

 まるで冗談みたいな展開ではあるが、それが現実で起きてしまうと冗談ですまない。

 元々、幽霊のような存在ではあるのものの殺人に近しい事柄だ。

 だから慌てた。

 「どうしましょ!? 私の力では浄化が止めれません」

 「落ち着け。 アンデットと違って瞬時に浄化していくわけじゃない。こいつだって執着があるから、この世界に残っているはず。その源を刺激してやれば!」

 「ん~ このまま成仏するのもありですけどね。かのベルト・グリムに依頼を失敗させた男として名前を後世に広く残す事になるっては悪くない」

 「いや、黙ってろ! こうなったら、消滅するよりも早く、コイツの墓を見つけて押し込むぞ!」

 「はい! わかりました」とメイル。 

 彼女は浄化した魂の痕跡を探す。 元々、死者の家となる墓地が無人(?)だったなら、そこが勇者候補の墓だった可能性が高い。

 「でも、それ……行方不明だけどお墓作っちゃった人とか、様々なパターンがありますよね? 他人の墓に入るのは私の信条に反する行為なのですが……」

 「やかましいわ!」と冥王モードに変身したベルトは、近くの墓に勇者候補をねじ込んだ。

 「やりましたか?」

 「わからん。だが、俺の感覚が正しければ……」

 どうやら正解を引いたみたいだ。 暫く勇者候補が墓地に留まり、浄化も止まって見える。

 だが――――

 その墓から強烈な圧力が風となり、周囲に振りまき始める。

 「一体、何が……」

 「はっはっはっ……一体何が起きているというのかわからないだろう、ベルト・グリム?」

 その声は勇者候補の声だった。しかし、なにか違う。どこかおかしい。

 「シンプルだ。この世界は常にシンプルだ。勇者の力を持った幽霊? 正体を知るために墓地へ? 馬鹿か! 予め『生と死の勇者』の力を奪い取っていたのだよ」

 「誰だ? お前は一体……誰なんだ?」

 「見たかった、見たかったぞ! その顔! いつだって、いつだってそうだった。貴様の顔は私の前では常に飄々として――――舐めていたんだよ!」

 墓がはじけ飛ぶ。いや、墓だけではない。周囲も、地面ですら抉れたように――――そして。

「蘇った、蘇ったぞ! ベルト・グリム! 勇者の力を奪い取り、死すらも克服してみせた。全ては、貴様と戦うためだけに……だ!」

 その男は、ベルトたちがよく知る男だった。

 人類を裏切り、ギロチンの露と消えた男。 あらゆる公式機関を騙し、冒険者ギルトの頂点に立っていた男だ。

 男の名前は――――

 ソル・ザ・ブラッド

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