『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

現在、メイルが持つ戦闘力

 飛翔――――それと見間違うほどの跳躍をメイルは見せた。

 その直後、巨大アンデットの腕が、さっきまでメイルのいた位置を通過していった。

 まるで空間を削り取るほどの剛腕。 衝撃波を生み出し、周辺の墓石をなぎ倒す。

「けれども――――≪真実の弾丸トゥールショット≫!」

 一瞬で大量に精製した破邪の弾丸を打ち込む。

 その数は、文字通りの弾幕。 点ではなく面……遠目には幕のように見える数がアンデットへ被弾していく。
 
 だが、その効果は――――

(……予想より効果が薄いですね。 体が大きすぎるというのもありますが……)

 違和感。 並みのアンデットなら、近くを通過しただけで浄化される効果のはず。

 いくら巨大と言っても100を超える弾丸を受けて、動き続けれるはずはない。

 しかし、その理由をすぐさま看破した。

 「他のアンデットの出現が止まりましたね……この墓地全体の怨念全てを吸収して、瞬時に回復している?」

 何百、何千とある墓石。 その多くが凶悪な罪人のものであり、その邪悪な魂が死後、アンデットとして強化されている。

 メイルは地面に着地。 巨大アンデットはそこを狙ってくる。

 着地狩り だが――――

 ≪不可侵なる壁ウォール・オブ・アンタッチャブル

 何人たりとも侵入を許さぬ絶対なる聖壁。

 メイルの切り札ともいえる魔法だが、それゆえ消費魔力など負担も大きい。

 だがメイルは止まらない。 杖を地面に突き刺し―――

 「我らが神々よ。貴方の摂理を外れた子供たちへも無限の愛を与えん事を祈ります」

 魔法執行時に関わらず、詠唱を始めるメイル。

 地面には青白い魔法陣が浮き上がっていく。

 それが次の瞬間には――――墓地、全体を包み込んだ。

 「帰還せよ! 神々の御子たち《チャイルド・オブ・ゴッド》」


 メイルの新しく身に着けた魔法は超広範囲の浄化魔法。

 それはメイルに芽生えた新しい夢。 ダンジョンの完全浄化を目指すための魔法。

 ならば、容易い。 

 ただが、広い程度の墓地。

 ただが4桁の咎人たちの成れの果て。

 無限の如く地上へ現れる呪怨。 何百年、何千人の執着を――――

 ただ純粋な子供のように戻し、親である神の元へ返す。

 そんな暴力的に優しい魔法だった。

「終わりましたよ」とメイルの声。

 禍々しい邪気を消え去り、澄んだ空気が墓地を通り抜けていく。

 「お疲れ様、メイル……けど……」

 「けど?」

 「どうしようか? この墓地?」

 周辺を見渡すと、墓石は割れ、地面も抉られている。

 倒れた木々、潰れたお供え物の後……

 「これは……大丈夫です! 私の権限を全て使って教会から修復員を派遣して元通りにします!」

 「うん、それは頼んだ」と一息つくベルト。

 しかし、

 「あの……」と勇者候補の声がした。彼を見ると――――

「戦闘が終わったばかりですいませんが……私も浄化されかかっているのですが?」

 半透明になり、ゆっくりと浮き上がっていた。   


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