『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

墓守とのバトル

「――――なんて事があったんですよ」

 「そうか、お前も苦労したんだな」とベルト。

 なんでも、目が覚めたら墓地で立ち尽くしていたらしい。

 以上、説明終わり。

 「気のせいでしょうか? 何か辛辣なものを感じたのですが」

 「よくわからんが、幽霊特有の感覚か?」

 「お話の最中にすいませんが……」とメイル。

 彼女は、今の勇者候補に対して杖を向けている。

 「成仏させる前に名前を思い出させるか、新しい名前をつけましょう」

 「ちょ!」と流石に焦る勇者候補。

 どうやら、メイルは、聖女という立場から幽霊のような存在に嫌悪感――――と言うよりも使命感を持っているようだ。 

 今も「絶対に成仏させてやるんだ!」と並々ならない意気込みを感じる。


 「ベルトさん、なんとかしてくださいよ。この子、絶対に成仏させるウーマンになってますよ。ぶっちゃけ、出現してから5回は昇天系の魔法を仕掛けようとしてますよ!」

 「残念ですが、私の浄化魔法は、まだ108種類あります!」

 「メイル……せっかくだから、もう少し生かしておいてくれ」

 「え? もう死んでますよ?」

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 「なるほど、勇者候補として従ってくれるのか」

 「えぇ、その次代の勇者決定戦……ですか? 私も参加しますよ。ただ条件があります」

 「条件? なんだ」

 「この町にある私のお墓を探してください」

 「あぁ、そうか。 死者にとっては重要だからな、お墓は」

 「えぇ、私たちにとって家みたい物ですからね」

 「いいだろう。その程度の事はやってやるよ」

 「ありがとうござます。でも本当にいいんですか?」

 「ん?」

 勇者候補の発言の意味はすぐにわかった。

 この町は、墓が多すぎた。


 ―――墓地―――

 「よそ者は入るな」

 墓守《アンダーテイカー》が現れた。

 「えっと……?」

 「ここは処刑所が近い町だ……その意味がわかるな?」

 恫喝するような口調。 それは悪意ではなくて高い職業意識だという事は理解できが……

 「つまり、この墓地の多くは――――」

 「そうだ、有名な罪人の墓が多い。だから何者かわからぬ者をいれるわけにはいかない」

 墓守の言いたい事はわかる。 

 この世には死んでも恨まれる者がいる。 墓を破壊する者もいるだろう。
 
 「なら、身分を証明するばいれてくれるのか?」

 「いいや、違うね」

 「何?」

 「俺と殴り合って強いって認めた奴だけが入れるのさ」

  墓守はアウトローだった。

 「がっはははっ……こんな町のこんな墓地だ。娯楽ってのが極端になくてな。それに――――」

 「それに?」

 「俺様を殴り倒せる奴なら、どっちみち俺が止めても無駄だろうよ!」

 吠えるように言い放つ……と同時に殴りかかってきた。

 ベルトは一瞬で墓守を倒す――――ような真似をしなかった。

 墓守が望んでいるのは、娯楽としての殴り合い。

 格の違いを見せつけるとか、何が起きたのかわからない間に倒すとか……

 そういう事ではない。

 だから、ベルトがやるべき事は路地裏の喧嘩で使うようなテクニック。

 墓守のパンチを顔面で受け止める。 「っ!」と口が切れ、血の味がした。

「どうでぇ? 俺様のパンチは? 口の中に美味しい味が広がっているだろよ?」

「あぁ、美味だぜ!」とパンチを叩きこむ。

 狙いは一番防御力が高く、鍛えこまれているであろう腹筋。

 それでも――――

「ぐはぁ……」と墓守は腹部を押さえて倒れ込んだ。
 

 

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