『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』
幕間③ 記憶を失った村人たち
「えぇ、えぇ、あの子だったら、ベッドで寝ています」
修道女に案内された部屋には少年が寝ていた。
「い、命に別状はないとおもいます。……たぶん」
「ホッ」と安堵のため息をつくメイル。
それから、奇妙な違和感に囚われた。
「あの……子供たちはいないのですか?」
教会は、貴族の隠し子だったり、身寄りのない子を育てる場所でもある。
しかし、この教会には子供の気配がない。――――いや、それどころか、この村に来てから見た子供は、奥の部屋で寝ている冒険者の少年しかいない。
「えぇ、今は子供はいません。教会だけではなく、村のどこにもいませんね」
「村のどこにも! それは、どうしてですか? まさか……連れ去られたのではないですか?」
しかし、修道女の答えは――――
「いいえ、わかりません」
「わからないなんて……そんな……」
「本当のことですよ。なんせ、私たちは自分の名前もわからなくなっているのですから……」
メイルはハッと気づいた。記憶が無いのは自分だけではなく――――
「もしかして、あなただけではなく村人の全員が記憶が?」
「えぇ、この村に住む全員が記憶喪失なのです」
メイルは寒気を感じた。
自分もギルドからの依頼で来たはずなのに、その依頼内容が思い出せない。
一緒に来たはずのベルト義兄さんも見当たらない。
自分も、やがては名前が思い出せないほど忘却してしまうのか? そんな不安に襲われた。
その時だった。ベッドからむくりと少年が体を起こしたのだ。
少し前まで死にかけていた様子など微塵も感じさせない生命力に溢れた動作。
「ここはどこだ?」
年齢に合わない不遜な態度のように思えた。
修道女とメイルは目を合わせた。 なぜなら、二人とも少年の疑問に対する答えを持ち合わせていなかったからだ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「そうか、俺は死にかけていたのか」と少年は確かめるように自身の胸を触る。
すでにソコには傷跡すら残っておらず、見事に完治していた。
「では、俺は何に襲われた?」
「何……と言われましても……」とメイルは言いよどむ。
隣の修道女に助けを求めようとしたが、彼女は「……」と目を逸らすだけだった。
「最初から答えを求めていない。推測で構わぬから行ってみろよ、女」
「その……女って呼び方はやめてください。私にはメイルっていう名前があるのですよ」
「ふむ……それは悪かった」と意外にも少年は頭を下げた。
「俺も記憶を失って冷静さを欠けていたようだ。非礼を詫びよう。すまなかった」
大きく頭を垂れる少年にメイルも慌てた。
癒えたとは怪我人であり、しかも自分よりも年の離れた少年に謝られるのは思ったよりも居心地の悪さがあったのだ。
「い、いえ、私も言い過ぎたかもしれません。すいませんでした」
そんな謝り合う2人に視線を外していた修道女がクスッと笑う。
頭を下げたままのメイルはそんな彼女をジト目で見上げた。
「しかし、お前……いや、メイルか。 お前には記憶があるのだな。どうしてだ?」
「えぇ、ここに来た目的以外の記憶はある……はずです。もしかしら大切な記憶を失っている事そのものを忘れている可能性もありえますが…… どうして私だけ記憶が……どうしてでしょうか?」とメイルは首を傾げる。 心当たりは……ない。
「いいだろう。なんにしてもこの村を調査せねばなるまい。どうだ? メイル? 同じ冒険者として手を貸せ。どうせ依頼内容も同じようなものを受けたのに違いないだろ」
「……」と少しだけ黙ったメイル。
断る理由はない。強いて言うならば、強引とも言える少年の口調に危うさを感じるものがあったのだが――――
そんなメイルの沈黙を少年はどう感じたのだろうか?
「うむ、これは俺のカンだが、この村での集団記憶喪失になっている謎を解くカギになっているのがメイルだと思っている」
修道女に案内された部屋には少年が寝ていた。
「い、命に別状はないとおもいます。……たぶん」
「ホッ」と安堵のため息をつくメイル。
それから、奇妙な違和感に囚われた。
「あの……子供たちはいないのですか?」
教会は、貴族の隠し子だったり、身寄りのない子を育てる場所でもある。
しかし、この教会には子供の気配がない。――――いや、それどころか、この村に来てから見た子供は、奥の部屋で寝ている冒険者の少年しかいない。
「えぇ、今は子供はいません。教会だけではなく、村のどこにもいませんね」
「村のどこにも! それは、どうしてですか? まさか……連れ去られたのではないですか?」
しかし、修道女の答えは――――
「いいえ、わかりません」
「わからないなんて……そんな……」
「本当のことですよ。なんせ、私たちは自分の名前もわからなくなっているのですから……」
メイルはハッと気づいた。記憶が無いのは自分だけではなく――――
「もしかして、あなただけではなく村人の全員が記憶が?」
「えぇ、この村に住む全員が記憶喪失なのです」
メイルは寒気を感じた。
自分もギルドからの依頼で来たはずなのに、その依頼内容が思い出せない。
一緒に来たはずのベルト義兄さんも見当たらない。
自分も、やがては名前が思い出せないほど忘却してしまうのか? そんな不安に襲われた。
その時だった。ベッドからむくりと少年が体を起こしたのだ。
少し前まで死にかけていた様子など微塵も感じさせない生命力に溢れた動作。
「ここはどこだ?」
年齢に合わない不遜な態度のように思えた。
修道女とメイルは目を合わせた。 なぜなら、二人とも少年の疑問に対する答えを持ち合わせていなかったからだ。
・・・
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・・・・・・・・・
「そうか、俺は死にかけていたのか」と少年は確かめるように自身の胸を触る。
すでにソコには傷跡すら残っておらず、見事に完治していた。
「では、俺は何に襲われた?」
「何……と言われましても……」とメイルは言いよどむ。
隣の修道女に助けを求めようとしたが、彼女は「……」と目を逸らすだけだった。
「最初から答えを求めていない。推測で構わぬから行ってみろよ、女」
「その……女って呼び方はやめてください。私にはメイルっていう名前があるのですよ」
「ふむ……それは悪かった」と意外にも少年は頭を下げた。
「俺も記憶を失って冷静さを欠けていたようだ。非礼を詫びよう。すまなかった」
大きく頭を垂れる少年にメイルも慌てた。
癒えたとは怪我人であり、しかも自分よりも年の離れた少年に謝られるのは思ったよりも居心地の悪さがあったのだ。
「い、いえ、私も言い過ぎたかもしれません。すいませんでした」
そんな謝り合う2人に視線を外していた修道女がクスッと笑う。
頭を下げたままのメイルはそんな彼女をジト目で見上げた。
「しかし、お前……いや、メイルか。 お前には記憶があるのだな。どうしてだ?」
「えぇ、ここに来た目的以外の記憶はある……はずです。もしかしら大切な記憶を失っている事そのものを忘れている可能性もありえますが…… どうして私だけ記憶が……どうしてでしょうか?」とメイルは首を傾げる。 心当たりは……ない。
「いいだろう。なんにしてもこの村を調査せねばなるまい。どうだ? メイル? 同じ冒険者として手を貸せ。どうせ依頼内容も同じようなものを受けたのに違いないだろ」
「……」と少しだけ黙ったメイル。
断る理由はない。強いて言うならば、強引とも言える少年の口調に危うさを感じるものがあったのだが――――
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