『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』
前哨戦開始3時間前
「死者蘇生なんてありえませんよ。それはベルトさんもご存知の事だと思いますが?」
そう断言するのはソルだった。
あれから数日、夜な夜なメイルと宿舎を抜け出し、町を徘徊する俺たちを不振に思ったソルが事情を聞きにきたのだ。
「そりゃ歴史上では死者蘇生の成功例は幾つかあります。でも、ほとんどの場合はゾンビ化します。かなりの魔力を使用した大掛かりな儀式魔法でも不死王を生み出すのが関の山」
「まぁ不死王なんて生み出したら、周辺の国まで大損害を被(こうむ)るでしょうね」と付け加えられた。
「仮に成功したとしても黄泉の深遠を見たのが原因か? それとも別人の魂が入ったのか? 生前と同じ人間とは思えない人格になるとか……」
「……」とベルトは無言で答えた。
それから「わかっている」と短く言った。
実際にわかってはいる。しかし、割り切れない。
それがベルトの紛れもない本心だった。
「そんな様子で本当に大丈夫なんですか? もう試合は今夜なんですよ?」
そう言われベルトは時計を見る。
3時間後には闘技場に立たなければならない。
そして、その相手は無論、キング・レオン……ではない。
いくら世界で5人しかいないSSSランク冒険者であり、世界を救った勇者たちの1人。
ベルト・グリムが闘技場に参戦すると言っても、いきなりトップのキング・レオンとの試合を行うわけにはいかないらしい。
興行的な問題なのだろう。
いきなり、頂上対決では勿体無い。レオン対ベルト戦まで何試合か行えば、寄り稼げるではないか。
そういう興行師(プロモーター)たちの思惑らしい。
いくら、レオンが最高権力者としても興行師の要望を無視できなかったらしい。
だが、それでも相手は闘技場のナンバー2。
不破壊の異名を持つ男だ。
人並みはずれた腕力に加え、圧倒的な打たれ強さタフネスと持久力スタミナ。
じっくりと相手のスタミナを削りながら、最後に勝つ。
技術テクニックもあるだろう。
試合コントロール、戦術性タクティクス、戦略性ストラテジーに長けている。
所謂、いぶし銀と言われるスタイルだ。
恐ろしきはベルトより、レオンよりも年上。
40才を越えても現役どころか、レオンに次ぐ実力者。
油断など出来るはずはない。ないのだが……
ソルの言葉が頭に入ってこない。 彼の言葉は右耳から入って左耳に抜けていく。
しかし、誰よりも――――
(こんなコンディションで勝てるのか?)
試合に対して不安を抱いていたのはベルト本人だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そして3時間後。
試合の開始時間になった。
すでに『不破壊』は会場の中心で立ちすくみ、ベルトが入場してくる方角を睨んでいる。
この状態が既に彼に取って不満。
本来、先に入場するのは格が下の選手であり、格上の選手は後から入場するのが決まりになっている。
長年、闘技場で戦い続けた自負がある。
それに、何度もキングへ挑む機会を得て、今度こそは……そう思っていた時のマッチメイクである。
それら立場に対する不満を相手に――――ベルト・グリムにぶつけるために、静かに猛っている。
一方の入場目前としたベルトは――――心ここにあらず。
この場についてから何度目かのため息を――――
パチンと音がした。
平手打ち。
それを行ったのはマリアだった。
「どう?」
「どう? ……とは?」
「私程度の平手打ちを避けれなくて、『不破壊』に勝てるのかしら? いえ、貴方が勝ちたいのは、その先にあるキング・レオンじゃなかったのかしら?」
「……うむ」と短くベルトは唸った。
別に避けれなかったわけではなく、緊急性は低いと判断して避けなかっただが……
それを言う必要はない。
「そうだな……すまない。気合が入った」
「うん。目が覚めたようね。それじゃ行きなさい」
そしてこう付け加えた。
「行って、オーナーである私に勝利を送りなさい!」
それを背に受けてベルトは踏み出した。
それから少しだけマリアに対して――――
(うむ。やはり彼女はいい子だな)
と、なぜか打たれた事によって好感度が上がっていた。
そう断言するのはソルだった。
あれから数日、夜な夜なメイルと宿舎を抜け出し、町を徘徊する俺たちを不振に思ったソルが事情を聞きにきたのだ。
「そりゃ歴史上では死者蘇生の成功例は幾つかあります。でも、ほとんどの場合はゾンビ化します。かなりの魔力を使用した大掛かりな儀式魔法でも不死王を生み出すのが関の山」
「まぁ不死王なんて生み出したら、周辺の国まで大損害を被(こうむ)るでしょうね」と付け加えられた。
「仮に成功したとしても黄泉の深遠を見たのが原因か? それとも別人の魂が入ったのか? 生前と同じ人間とは思えない人格になるとか……」
「……」とベルトは無言で答えた。
それから「わかっている」と短く言った。
実際にわかってはいる。しかし、割り切れない。
それがベルトの紛れもない本心だった。
「そんな様子で本当に大丈夫なんですか? もう試合は今夜なんですよ?」
そう言われベルトは時計を見る。
3時間後には闘技場に立たなければならない。
そして、その相手は無論、キング・レオン……ではない。
いくら世界で5人しかいないSSSランク冒険者であり、世界を救った勇者たちの1人。
ベルト・グリムが闘技場に参戦すると言っても、いきなりトップのキング・レオンとの試合を行うわけにはいかないらしい。
興行的な問題なのだろう。
いきなり、頂上対決では勿体無い。レオン対ベルト戦まで何試合か行えば、寄り稼げるではないか。
そういう興行師(プロモーター)たちの思惑らしい。
いくら、レオンが最高権力者としても興行師の要望を無視できなかったらしい。
だが、それでも相手は闘技場のナンバー2。
不破壊の異名を持つ男だ。
人並みはずれた腕力に加え、圧倒的な打たれ強さタフネスと持久力スタミナ。
じっくりと相手のスタミナを削りながら、最後に勝つ。
技術テクニックもあるだろう。
試合コントロール、戦術性タクティクス、戦略性ストラテジーに長けている。
所謂、いぶし銀と言われるスタイルだ。
恐ろしきはベルトより、レオンよりも年上。
40才を越えても現役どころか、レオンに次ぐ実力者。
油断など出来るはずはない。ないのだが……
ソルの言葉が頭に入ってこない。 彼の言葉は右耳から入って左耳に抜けていく。
しかし、誰よりも――――
(こんなコンディションで勝てるのか?)
試合に対して不安を抱いていたのはベルト本人だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そして3時間後。
試合の開始時間になった。
すでに『不破壊』は会場の中心で立ちすくみ、ベルトが入場してくる方角を睨んでいる。
この状態が既に彼に取って不満。
本来、先に入場するのは格が下の選手であり、格上の選手は後から入場するのが決まりになっている。
長年、闘技場で戦い続けた自負がある。
それに、何度もキングへ挑む機会を得て、今度こそは……そう思っていた時のマッチメイクである。
それら立場に対する不満を相手に――――ベルト・グリムにぶつけるために、静かに猛っている。
一方の入場目前としたベルトは――――心ここにあらず。
この場についてから何度目かのため息を――――
パチンと音がした。
平手打ち。
それを行ったのはマリアだった。
「どう?」
「どう? ……とは?」
「私程度の平手打ちを避けれなくて、『不破壊』に勝てるのかしら? いえ、貴方が勝ちたいのは、その先にあるキング・レオンじゃなかったのかしら?」
「……うむ」と短くベルトは唸った。
別に避けれなかったわけではなく、緊急性は低いと判断して避けなかっただが……
それを言う必要はない。
「そうだな……すまない。気合が入った」
「うん。目が覚めたようね。それじゃ行きなさい」
そしてこう付け加えた。
「行って、オーナーである私に勝利を送りなさい!」
それを背に受けてベルトは踏み出した。
それから少しだけマリアに対して――――
(うむ。やはり彼女はいい子だな)
と、なぜか打たれた事によって好感度が上がっていた。
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