『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

勇者パーティ その②

 勇者たちの前に現れたモンスター。



 「ゴーレム……でも、あの鱗に翼は!」とマシロ。

 「ドラゴン? 龍の因子を取り込んで作られているのか?」とシン。

 「作ったって! そんなの誰が作ったって言うの?」とアルデバラン。

 「――――」と勇者は無言だが、目を見開いて驚きを表した。



 混乱が襲い掛かってくる。

 体は、レンガを積み上げたような作りのゴーレム。

 表面にはドラゴンの鱗が無造作に貼り付けられている。

 その背中には羽が生えている。むろん、ドラゴンの羽だ。

 頭部はゴーレムからドラゴンに挿げ替えられている。

 ドラゴンゴーレムと言えば言いのだろうか?

 幻想種最強と言われたドラゴンを魔道兵器であるゴーレムに取り入れた存在。

 今まで、様々なモンスターと戦ってきた勇者たちですら初見のモンスターである。



 「とりあえず、前にでるよ!」



 そう言うのはアルデバランだ。

 自身の巨体すらも覆い隠す巨大な盾。

 それを構えてドラゴンゴーレムの前に飛び出す。



 ドンッ



 盾が殴られた衝撃音。アルデバランの巨体が後ろに下がる。

 だが、ドラゴンゴーレムの攻撃はそれで終わりではない。



 ドンッ ドンッ ドンッ……と単調なリズムで重低音を響かせる打撃。



 不意にリズムが止まる。

 アルデバランは盾の隙間から見た。

 ドラゴンゴーレムの歪なフォーム。

 上半身は大きく反られている。



 ――――それは、まるで弓そのもの。



 腕は真っ直ぐ後方に伸ばされている。



 ――――それは、まるで矢そのもの。



 防具破壊の一撃。



 そして、それは放たれた。

 だが、一流の前衛職であるアルデバランは経験則から、攻撃の種類を読み取っていた。



 ≪シールドパーリング≫



 アルデバランのスキルが発動した。

 接触の瞬間、強化された盾がドラゴンゴーレムの拳を弾き飛ばした。

 さらに体勢が崩れた状態を狙うアルデバラン。

 自身の肉体を弾丸に変えて、強烈な体当たりを叩き込んだ。

 吹き飛ばされたドラゴンゴーレムは壁に大穴を開けた。

 魔獣程度なら、この一撃で絶命する攻撃のはずだが……

 ギッギギギ――――と不気味な機械音を発しながら、ドラゴンゴーレムは立ち上がっていく。

 だが、アルデバランは叫んだ。



 「カムイ、追撃を!」



 「――――」と声にならない声を発してカムイが前衛に躍り出る。

 ドラゴンゴーレムは見た。

 飛翔する勇者の姿を―――― 煌く聖剣の輝きを――――



 それが最後に見た物だった。

 ドラゴンゴーレムの頭部が切り飛ばされる。

 だが、倒れない。

 頭を無くして、なおも動き続けて敵を排除しようとする。

 しかし、後衛の2人――――マシロ姫とシン・シンラ。

 彼女たちの攻撃は発動していた。



 攻撃特化型の魔法使い。マシロの詠唱は既に完了。

 さらに方術士であるシン・シンラの魔方陣によって強化。



 ≪深色のアルコバレーノ≫ 



 「風」「土」「水」「火」の四大元素。

 それらに3つの要素を加えた七属性の魔法攻撃。

 残っていたドラゴンゴーレムの胴体は灰燼に帰す。



 「……」と誰も勝利の歓喜を上げない。

 こんなわけの分からないモンスターがこれから出現してくるのか……そんな事を想像するだけで疲労が増してくる。

 誰かが、ため息をついた。

 しかし、そんな余裕もすぐに消え去る。



 「見ろ!」と誰かが叫んだ。

 新たにモンスターが現れた。さっきと同じドラゴンゴーレムだった。

 だが、数が違う。 新手の数は5体。



 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」と雄たけびを上げながら『超前衛戦士』アルデバランはモンスターたちの前に飛び出した。

 その雄たけびは、気合を入れるものではなくヤケクソという4文字が似合っていた。


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