R.
R. -プロローグ04-
「落ち着いて聞いて欲しいんだが、急遽再来週に引越しをすることになったんだ。」
思いの寄らぬ発言に私は言葉が出なかった。
「え…だって学校……」
何故このタイミングなのか?学校はどうすればいいのか。近くに引っ越すのか遠くなのか。聞きたいことが溢れ出た。
「色々話したいのは分かるが少し私の話を聞いてくれ。まず場所だがこの地図を見てくれ。」
博士は机から地図を取り出し、指を指した。
「ここに小さな島があるのが分かるか?ここに引っ越すんだ。」
そこは今居る場所とは少し遠く今の学校を通い続けるのはとてもじゃないが厳しい場所だったが話を聞くべく頷く。
「よし、ここに天音島という島があるだろう?少し小さいがきちんとした学校はあるから大丈夫だ。話は通してある。友達とは離れるがいつかまた戻ってこれるさ。」
「……質問いい?」
博士は椅子をキュッと鳴らし体制をこちらへ向けた。
「なんだ?」
「なんでこのタイミングなの?卒業してからでも良かったんじゃ…」
博士はうんうんと頷き紙袋から2個目のおにぎりを取り出しアルミの包みを解きながら話す。
「それについては本当に申し訳ない。急にあっちで仕事をしなくてはならなくなったんだ。暫く家を開けていた時があっただろう?それはその島に行っていて、仕事をしていたからなんだがこのままでは終わらないと判断して長期間滞在することが決まったんだ。」
博士の研究を手伝えると思っていたのに急な引越しの話をされて私は頭の整理が出来ずにいた。一人暮らしするにも私にはお金が無いので博士について行く他選択肢は残されていなかった。
「分かった…。行くよ白雲博士と一緒に。」
「ありがとう。行くのは私だけでも良かったんだが、そういう訳にも行かなくてね…。もう1つ急で悪いんだが荷造りするのを手伝って欲しくてここに呼んだんだ。」
そういうと博士はコーヒーをつぎに席を立つ。
周りを見渡すと確かに博士の部屋はダンボールでいっぱいになっている。入ってくる時にも目に入っていたがてっきり研究に使う材料なのかと思っていた。
「どれをどうすればいいの?」
博士は食後のコーヒーを注ぐ手を止め私に近づく。
「えっと…この書類には触らないでくれ。こっちの書類と器具をここのダンボールに積めてほしい。ありがとう夜羽。」
そういうとまたコーヒーの場所まで行き、丁寧に注ぎ始める。博士はコーヒーのことになると口がうるさくなる。1度博士にコーヒーを注いだ事があるが煩く指導された為それから注ぐことはなくなった。
私は好奇心から少し離された場所に隠された大事な書類が気になってしまい手を伸ばす。
幸い博士はまだコーヒーに夢中になっていた。
続
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