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R. -プロローグ03-

翌日

私は少し早い時間に起き出掛ける支度を終わらせ博士と約束した時間を待ち続けた。いつもなら休日は友達とショッピングに行ったりしているが今日は断った。
私は博士にお昼ご飯を届けようとおにぎりを握った。多分あの様子じゃご飯もろくに食べていないだろうと思ったからだ。

白雲博士は30代で研究者としては少し若い方なのかと思う。研究によるものなのか分からないが手に傷を抱え良く帰ってくることが多い。

しばらくして約束の時間が近づいたので私は用意したおにぎりを紙袋に詰め、誰もいない家に「行ってきます」と言い玄関のドアを開ける。

まだ肌寒いが少しずつ日が経つにつれて暖かくなり、春を迎えようとしている。私はもう数週間で高校三年生になろうとしていた。高校生活はそれなりに充実していた。昔から感情を表に出すことが苦手だったがそれでも周りの友達は私に優しく接してくれていて本当に良い友達を持ったと思う。

「夜羽ー!」

通っている学校前を通る道で不意に声をかけられた。

同じクラスの仲の良い友達だった。
その顔には汗が滴っている。

「やっほ〜部活頑張ってるね。」
私はこの子におにぎりを1つあげようと思ったが博士がお腹を空かせていて1つでもあげるには惜しいと考えた。
友達から顧問や部活にいる周りの子達に関する愚痴を聞いていると少し席を外していた顧問が戻ってきて友達は「あ、やば。また明日ね!」と言いパタパタと集合場所へと駆け足で戻って行った。私はその姿を見届け博士の研究所へ向かった。

研究所に着くとまず上の階にある受付に行き、特別なエレベーターで地下にある博士の研究所へと降りる。表面上は周囲の住民から信頼を得てる病院で、その地下に博士の研究所があるという構造になる。博士は何故かこういうお偉いさんと繋がっていることが多々あるが博士の研究に協力してくれているのだろうと思った。

エレベーターを乗る際、博士の元で働く研究者が乗り込んできた。

「あれ、珍しいね夜羽ちゃん、博士にお呼ばれかい?」

研究者達はみんな私に優しく接してくれる良い人達ばかりだった。研究所にいく機会の少ない私に対する社交だとしても優しすぎる程に。こういうのを過保護っていうのかなとこの時私は思った。
他愛のない話を話してくれて研究所へ着くまでのエレベーターは楽しく過ごせた。

テンッと音を鳴らし研究所へ着いたことを知らせるベルが鳴る。研究者は「じゃあね!夜羽ちゃん」と白衣をバサッと音を立て手を振り急いだ様子で廊下を駆けて行った。

博士のいる研究室はエレベーターを降りてすぐの所にあった。少し扉を開けると博士が机に突っ伏し鼾をかきながら寝ていた。私は静かに部屋に入り少し離れた机におにぎりの入った紙袋をガサッと置いた。それと同時に博士の体がピクッと動き呻きながら目を覚ました。

「ごめん白雲博士!起こしちゃった…」

博士はメガネを手に取りヨハネの姿を確認する。その後博士は慌てて腕にはめている時計を見てほっとした表情を浮かべた。

「やあ夜羽来てくれてありがとう。それはなんだい?」

博士は私が机の上に置いた紙袋を指さして言った。

「あ、これは白雲博士がお腹空かせてるだろうなと思っておにぎり作ってきたの。」

私がおにぎりの入った紙袋を渡すと博士は書類を見てた視線を夜羽に戻し目を見開き笑顔で言う。

「本当に?!嬉しいよ夜羽、何も食べてなかったんだ。ありがとう。」

ガサガサとおにぎりを取り出し徐ろに食べ始めた。そういえば、と私は思い出し美味しそうにおにぎりを頬張る博士に問掛ける。

「そういえば白雲博士、ここに呼んだ理由って何?最近は体調も良いし悪い所は無いんだけど……。」

私は博士の勧めで月に一度この病院で無料で体調検査をしてくれている。が今月の検査はもう終わっていてこの場所には来ないと思っていたので意外に思うに無理はなかった。

そうするとおにぎりを頬張っていた博士の表情が徐々に曇っていった。


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