第27話、起床

「…ぅ……」
　目が覚めた。たぶん、まだ半分寝惚けてるけど。
　カーテンの隙間から漏れ出た光が、部屋の中を照らしている。
「ふぁぁ……んぅ…？」
　あれ……何か、妙に身体が暑い。横から来る熱の源を見た。

「ｽｰ…ｽｰ……」
「うわっ…！？」
　びっくりして、急に目が覚めた。僕のすぐ隣でリサさんが寝てる……何でリサさんこっちの布団に入って来てるの…道理で暑い訳だ。
　よく見たら服装も橙色の浴衣っぽい服に着替え済みだし、全くもう……。
「………」ﾓｿﾞﾓｿﾞ
　僕はリサさんを起こさないよう、ゆっくりと静かに、布団から出た。
　リサさんには布団を掛けて、そっとしておいた。

「……よし、行こうかな」
　顔を洗って、色々と朝(昼だけど)の準備を済ませた。
　服も他に用意されてた物に変えた。参考にしたのは、窓の外に見える、通りを歩いている人とかが割と来ていた服。その見た目を一言で表せば、着物をちょっと軽装にした感じの服で…まぁ、和風な服装だね。詳しくは想像力で補ってね。
　……まだリサさんはグーグー寝てる。起こそうかなとも思ったけど、幸せそうな顔で寝てたから、何だか起こしづらかった。だから、そっとしておいた。
「…じゃあね、リサさん」
　小声で別れの言葉を言い残し、僕は1階のエントランスに降りた。ちなみに、幽霊は見なかった。本当に居るのかな？まぁいいけど。
　書き残しの1つでもリサさんに書いておきたかったけど、そもそも文字が違うのを思い出して、踏みとどまった。
　代わりに、旅館の外に出る前に、女将さんに僕について、リサさんに伝えるように頼んでおいた。
　さて、今から僕はアイリスさんの手紙に書いてあった通り、カフェに向かうよ…って、あれ？
　これ寝る前に説明したっけ……昨日は眠過ぎて説明を放棄したりしたから、してないかも知れない。まぁ、後で話すよ。
　取り敢えず旅館の外に出て、不自然な建物を探しに、僕はドウテツを歩いた。

「……ここかな、カフェって」
　喫茶店の表口に、本日定休日と書かれた札が掛けられている……そう、日本語で書かれている。その文字の隣には異世界の謎の言語で…おそらく、日本語と同じ内容が書かれている札が掛けられていた。
　間違いなさそうだね。意外と早く見つかったな……まるで、吸い寄せられる様に一直線にここに到着した気がする。
　まぁ、そういうことなんだろうけど。
　アイリスさんの罠かな。だとしても面白い、掛かってみよう。
「よし、とつげき。お邪魔しまーす、誰か居ますか」
　通行人の獣人たちに向けられた好奇の眼を無視しながら、僕は両開きの木の扉を開けた。
　店の中には、見覚えのある白黒の服を着た人が居た。

『……遅かったじゃないですか、優さん』

　高そうな木の椅子にちょこんと座ったアイリスさんが、僕のことを冷めた目で見ていた。