チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第17話、矛盾螺旋

 さて……料理を待ってる間にレオンさんの口から、リサさんについて聞いておこう。迂闊な行動を咎めて欲しいとか何とか言ってたね。
「レオンさん、リサさんについて僕にお願いがあるんだよね。なに?」
 僕らは黒いソファーで互いに向かい合って座ってる。会議室みたい。ソファーは化学部の部室のとは違ってふかふかしてて、子どもみたいに跳ねたくなる。
「フッ…そうだ、これが本題だったな。大方君の予想通りでつまらぬだろうが、最後まで聞いて欲しい」
「はやくー」
「おっと失礼。今日…いや、もう昨日か。昼のことだ。リサが軍から無断で退役しようとした…しかも国外に向けて、馬を使ってな。彼女は隊長になったばかりなのにだ。このことについて、リサと親しそうにしていた君に頼みがある、依頼を聞いてくれるか」
 おっと……話してくるであろう依頼内容が、僕の予想と外れた。似てるけど、違う。間違いなく後出しの依頼…方向転換したみたいだ。
 日和ったね、レオンさん。嘘は嫌いなんだけど。
「レオンさん、嘘はやめて。僕に頼みたいこと、そうじゃないでしょ?」
 レオンさんの動きが一瞬だけ固まる。瞬きの回数も増えたし、呼吸も僅かに早まった。猿でも見抜けるウソだね、本当にくだらない……。
 それよりも…僕にこう言われて、尚惚けるようなら、交渉は決裂だね。料理も……いいや。
「…何を言っている。どういうことだ?内津くんに依頼したいことは本当にそれだけだ。私は嘘など吐いていない!」
 ……自分がほんの少し前に言ったことも忘れてるなんてね。変に興奮してたから忘れたのかな?具体的にはレオンさんが剣を抜くほんの少し前に答えが有るよ。
 (……!?)ってなってる人は1話前を読み直したら良いんじゃない?

「本当に?」
 レオンさんの目を見る。
「本当だ!嘘など…」
「言い方が悪かったかな。改めて言うけどレオンさん、僕に最初に依頼しようとしていたことを取り止めて、別の依頼を頼もうとしてない?」
「……!!」
 レオンさんが目を見開く。これでチェックメイト…詰みだね。
「……当ててあげるよ。君は当初の予定では僕を利用して、リサさんの失脚を狙った。勿論、直接的じゃなく、間接的にね。その為の依頼をいざ僕に話そうとした時、君にとって予想外なことがあった。それは、僕の物事を予測する力。僕を見た目だけで判断して実力を見誤り、このままでは僕を嵌めるつもりが、逆に嵌められると寸前に悟った君は、僕への依頼をリサさんにとってメリットのある物に替えた。僕に対しての最初の依頼の切り出しと、矛盾の無い様にね……ところで、気づかなかった?僕がギリギリまでゴネて、君の依頼をわざと聞かなかったの。あの時点で、君は罠に掛けられてたんだよ」
「……はっ…!はぁっ……!」
 レオンさん、驚いてるね。無意識だろうけど呼吸も浅くなってて…絶望してるって言う方が正しいかも知れない。
 嘘を見抜かれた人は何時もこうだ、僕が嫌になるのも仕方ないと思う。
「……嘘はやめてって言ったのに、君は尚も惚けた。この事実は変わらないよ。この事から、ハッキリ言って君は信用に値しない…じゃあね。僕は歩いて帰るから、料理も送迎も要らないよ」
 ソファーから立ち上がり、元きた扉に踵を返す。


 ……ところで、皆は嘘を吐くコツって知ってるかな。

「はぁ…待て…!そこを動くな…内津!」

 ジャキッ!

 背後で、レオンさんが剣を抜いた。予想通り。
「……そう言えば、レオンさんの話してた、僕が形容出来ない闇を纏ってるって話。あれ、良く見抜けたね」

「はっ……!?はっ……!」
 レオンさんの息が荒い。

「つまりね…僕が傷を負うとき、そのとき初めて、君を守ってくれてる安全装置が外れるんだ。これ、嘘だと思う?ふふ……試しに、僕をその鋭い剣で、切って見たら分かるんじゃない?」
「やめろ……ッ!もう、やめてくれ……!」
 彼は恐怖で震えている。

「その時、君は死ぬけど……ね」
 あと、さっきの答えは……嘘を吐かないこと。それが、嘘を吐くコツだよ。

 キンッ、ガシャッ…!

 床に長剣が落ちた。幸い、僕は切られて無い。
「うっ……」ドサッ
 直後に、レオンさんがその場に崩れ落ちる。
 意識を手放して、逃げたね。
「……じゃあね、馬鹿な人」
 …真実を半信半疑とは言え見抜けただけ、他の気づくことすら出来ない愚者よりかは、遥かにマシだったけどね。




 それから、元来た道を人とすれ違わないように急いで戻る。運良く、門番の人は丁度席を外してた…或いは、リサさんに門番の姿を見られて不審がられるのを嫌ったか。結果としては見られずに済んだし、もうどっちでも良いけどね。距離も近いし、太陽寮に戻るのは直ぐに済むだろう。


 さて、ここで問題。この後、料理を運んで来たジキルさんが、部屋の中で倒れているレオンさんを見つけた時、僕はどう思われるかな?
 あはは、答えは次の話で!

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