チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第15話、滲み出す異常性

「ハーッ、笑った笑った…全く……内津くん、要らん見栄を張るのは辞めた方が賢明だと私は思うぞ?んん?」
 ひとしきり笑って満足したのか、レオンさんは勝ち誇った様に、僕に聞いてきた。
 分かりやすく、油断し過ぎだね…この人。控えめに言って、指揮官や司令官には向いてない性格だけど、どうして司令官何かやってるんだろう?
 そして何故リサさんを嫌ってると他者から噂されて……っと、やめておこう。予想に耽って僕も油断したら、ミイラ取りがミイラになる様なものだ。

「見栄なんて張ってないよ!もう……お腹空いた…早くやろうよー」
 取り敢えず催促する。まぁこの時点でレオンさんが出す最初のカードは解ってるけど。
「ハハハ…さて…どれから出すか……」
 レオンさんの手札は52枚。長くなりそうだけど、お菓子の為に頑張るぞ!
「………」
 と言うかさっきからジキルさんが、哀れんだ様な目でずっと僕を見てるんだけど。
 イカれてる奴と思われてるのか、単に出来るわけないと舐められてるのか、いやどっちでも良いけど。
「よォし、これだ」スッ
 レオンさんがカードを伏せた瞬間、既に答えを予測してる僕は、特にもったいぶらずに言う。
「スペードの1」
 これ間違ってたらクッキー無しか…だけど、多分あってると思う。
「な……おぉ。あぁ、内津くん、私の手札が見えてたか?」
 一瞬フリーズして、苦笑気味に僕に聞いてくる。失礼な!
「見えてないよ。気になるなら僕のことずっと見てるジキルさんに、公正なジャッジさせたら?」
 公正な……ね。まぁ上司と部下って都合上、僕に不正はしずらいんじゃないかな。仮にイカサマされようが、クッキーの為なら頑張るけど。
「そうか、ジキル…うっかり私の手札が内津くんに見えていた、か?」
「お言葉ですがレオン司令官、正面の彼からはこちらの手札は流石に見えていないでしょう。透ける材質でもありません」
「うぅむ、そうかぁ…?だが、確かにスペードの1なんてのは、分かりやす過ぎたか?ならば…これだ」スッ
 あまり迷わずに置いたって事は…多分これもあってるかな。素直な人だし。
「クラブの2」
 僕が発言した直後、部屋の空気がざわめいた。レオンさんは伏せたカードをめくる前から、僕を丸い目で見ている。
「せ、正解だ……おい、ジキル。まさかこのカードの裏に何か目印とか…付いていたか?」
「いえ……付いていません」
 2人してまだ2枚目なのに、驚き過ぎだと思う。52枚当てた瞬間にワァーっと驚いて欲しい。
 あっそうだ。次も即答する為に、レオンさんにちょっと催促してみるよ。もちろん、出来る限りさり気なく、バレない程度にね。
「レオンさん、早くしてよー」
 引っ掛かるかな?
「……あぁ…次はコレだ、どうだ?」スッ
 わーい。
「クラブの4」
 真面目なのは美徳だけど、弱点でもあるよね。これも引っ掛かってくれたから、即答出来る。
「なんと……内津くん、ここまでの君の考えを私に聞かせて貰えないだろうか」
 時間稼ぎ…もしくは心理戦でもしたいのかな。
「んー…良いけど、僕ね、クッキー欲しいなー?」
 話す対価としては妥当だと思うから、ちょっとねだる。ダメでも別に構わないけどね。
「構わん構わん!おい、その袋を与えてやれ!」
「……分かりました。見事だ…内津、受け取ると良い。この時点で勝負はついた様な物だ」
「えっもういいの?わーい」
 ジキルさんが袋を僕に手渡す。まだ49枚残ってるのに報酬貰った…嬉しいような大袈裟な様な…ちょっと複雑な気分。
 モヤモヤした気分のまま、トランプはジキルさんに片付けられて、ゲームは僕の勝ち…って事で終わった。


「何故だ、何故、私のカードがこうも判る?何を考えて、当てているのだ?」
 そして、困惑してるレオンさんが背を丸めて、僕の目を見て少し早口で聞いてくる。
 クッキーも貰っちゃったし、素直に教えてあげようかな。悪用されるだけの駆け引きの実力も、この人には無さそうだし。
「レオンさんの性格とか、今の置かれてる状況とか諸々を考えて、次にレオンさんが何のカードを出すか予想してるだけだよ」
 嘘は言わない。もうクッキー貰えたしね。と言うかクッキー開けたいからハサミとか欲しいな。あるかな。
「そんな簡単に…そのクッキーを取り上げたりはしないから、正直に答えて欲しい……本当に、イカサマの類はしていないのか?」
 …いやしつこいな!
「してないってば!そんなに言うなら僕が考えてたこと全部言うよ!それで納得出来る?」
 クッキー……。
「頼む…!教えてくれ!というか…私はそこまで筒抜けな司令官だったのか…?」
 まぁ……筒抜けだったけど……。
「そんなことは無かったよ。うん、本当だよ」
「………」ジロッ
 ジキルさんから無言の圧力を感じた気がするから、さっさと話そっか。クッキーの為にも。

「とにかく話すね…ゲームが始まってまず、第1手。僕がスペードの1って予想したやつだね。根が優しい性格なのと、僕のことを最初は舐め腐ってたから、それを考慮して、出す数字は1。そして、僕に勝つこと前提で出すなら決めた時に一番してやったり、って出来る数字。それなら一つだけデザインが違う、スペードのエース。そして、第2手。クラブの2って予想した理由は、簡単だね。一回目の当てられたのはカードが見えていたとか、偶然とか言い訳をして、まだ僕に対して油断しきってたから。思考を放棄して真面目な君が無意識に選ぶ数字は2。司令官という立場で間違いを認められない、加えて、僕に当てられた記憶が直前にあって、先手と同じスペードは選べない。この時点で3択だけど、心を落ち着かせたかった君は、特に考えずに緑色のクラブを選ぶと思ったよ。緑色はリラックス効果が有るからね。続けて、最後。ここで僕のことをわがままなだけの子供として見るのをやめたね。ちょっと遅かったけど。当てられたのがスペード、クラブと来たから、相手はダイヤかハートを選ぶと思った素直な君は、スペードと見せかけて一手前のクラブなら通ると思ったハズだよね。加えて、数字が1、2、と来たのを思い出した君は、3以外の数字のどれかを出そうと少し考えたね。だから僕はそれを察して、早くしてよーってさり気なく君を急かしたよ。僕に2連続で当てられるって予想外なことが起こって思考が少し遅れている真面目な君は、3以外の、3に数的に近い数字を選ぶと思ったよ。本当なら2択になるハズだけど、クラブの2は無くなってるから、素直に4を選ぶ……以上!
僕の予想はこんなものかな。どう?間違ってたら教えてね」
 はー、考えるよりも話すことの方が遥かに大変だ…クッキー食べよう。
 僕が話した後、ほんの少し考える様な素振りを見せたジキルさんは、悩ましそうな顔をしているレオンさんに、小さな声で尋ねた。
「……レオン司令官、どうなのですか」
「私の…完敗だ。全く……末恐ろしいな。もはや内津くんに対しての空言は、全て無意味な物に成り果てたという事だ」
 嘘が上手い人が相手なら僕だって普通に騙されると思うけど、黙っておく。褒められてるみたいで悪い気はしないから。
 ちなみに今のところ僕が嘘を見抜けない人(?)は、サキさん家の神話生物の内の数匹しか知らない。
 サキさん家の神話生物ってのは……まぁいいや、近いうちに話すよ、たぶんね。
「あっ待って…ジキルさん、ハサミとか刃物ある?袋綺麗に開けたいんだけど」
「ふん……今、用意してやる」
 ジキルさんは最初に比べて…ゲームを見て感心したのか知らないけど、僕を見る目が変わってるように思えた。警戒もあまりされてないように見える。
 二人とも、子供だと思って油断するなんて、甘いね。いや僕は確かに、成人もしてないし、まだまだ子供だけど。
 あと、肝心のクッキーはちょっと甘味が足りなかったけど、塩味が効いてて結構美味しかった。量も割とあったから空腹感を多少は紛らわせたよ。

「チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く