チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第11話、面倒事は

 ガチャ、と言う音が聞こえて、後にリサさんが部屋に戻って来た。
 手にはお盆の様な平らな板の上に、白いカップに淹れられた紅茶が3つ置いてあった。
「待たせたな、二人とも」
「リサさん、お帰りー」
「リサ隊長!お待ちしていました…♡」
 異世界に来てから、ずっと動いてばかりだったから…やっとゆっくりと休憩出来そうだ。肩の力を抜いて、優雅なティーブレイクと……。

 そして問題が発生した。何故かこの部屋にはテーブルとイスが存在していないから、カップを置く場所が無い。
「リサさん、どうするのこれ…」
「…どうする、とは…何がだ?」
 うん。
「リサ隊長…えぇと、座りましょうか!とにかく!」
 結局、三人で囲むように薄いオレンジ…クリーム色…砂漠の砂の色みたいな絨毯に座り、話を始めた。

 …香りは良い。覚悟を決め、紅茶を口に含む。
「……!へぇ…」
 意外だ。リサさんが淹れた紅茶は美味しかった。芳醇な香りとほのかな甘みが疲れを癒してくれる。
「優、口に合わなかったら…」
 すぐオロオロするのはリサさんの良いところだね。面白いから。
「あはは、違うよ…驚いてたんだよ。リサさんの淹れてくれた紅茶、凄く美味しかったから」ニコッ
 あ…っとと、自分でも驚く程に自然と笑みが溢れていた。油断し過ぎだね、いくら何でも。
「そ、そうか…?それなら良いんだ…」
 リサさんは嬉しそうだ。僕からの評価に内心ホッとしているのが、手に取る様に分かる。
「ふぅ…美味しいです、流石リサ隊長ですね」
 ローズさんも満足気だ。
「……ふふ」テレテレ
 リサさんは嘘を吐くことが絶対に出来ないタイプだね。きっと。
 それとローズさん、紅茶飲んでるだけなのに映えるなぁ…映画のワンシーンに使えそう。

「…さて、リサさん。もう本題に入っても良いかな?」
 リサさんに確認を取る。きっとローズさんがリサさんにとって、僕以外の初めての友だちになるだろうね。
「…!あぁ。構わない…いや、この事は私から話そう」
 リサさんがローズさんの目を真っ直ぐ見据えた。
「リ、リサ隊長…?」
 見詰められ、ローズさんは嬉しそうと言うより、緊張している様だった。体が固まっている。
「リサさん、頑張って…!噛まないでね…!」
 僕は、リサさんを心の底から応援する。ここを乗り越えれば友だちは芋づる式に出来るだろうから…ね。
「ありがとう、優…よし!良いか?言うぞ…ローズ・ホワイトベリー。その…私は…!ロ、ローズ、君が……!」
 頑張れー!場は整ってるからね。後はリサさんが友だちになりたいって言うだけ…!
「は、はい……」
 ローズさんは大人しく聞こうとしてくれてる…よし、これは勝ったね。この紅茶は正しく勝利の美酒と同じ様なものだろう。

「君が…好きだ!」
 なんで!?
「リサさん!?」
 いやアホー!!台詞間違ってるよ!
「へ……?え、え…?え、今…わた、私を…??」グルグル
 ローズさん混乱しちゃってるし…!目が何時かのテック君みたいになってる…。
 …これローズさん気絶しないよね?大丈夫だよね?
「あぁ…好きだ!だから、私と……」
「……きゅぅ」トサッ
 あぁぁぁぁ倒れたぁぁぁ!!
「と、友だちに…って、大丈夫か!?ローズ!」
「完全にリサさんのせいでしょ!あーもう…取り敢えずベッドに寝かせてあげよっか…」
「くっ…いや、優の言う通りか。まずは寝かせてやるか…」
 リサさんがローズさんをお姫様抱っこで持ち上げて、ベッドに静かに置いた。力持ちだね…。


「………♡」スヤスヤ
 それから…一応ローズさんの容態を確認したけど、当然と言うか……別に大丈夫そうだった。むしろ、幸せそうな顔で安らかに眠っていた。
「ローズ…すまない……」
 何故そこですまない!?えっ、うん……ここまでとはね…。リサさんはそう言いながら、ローズさんに毛布をかけた。
「一応聞くけど…何でリサさんが謝るのさ」
「…私のせいで倒れたのだ、まさか…倒れるほど…私のことが…!嫌いだったなんて……!」
 この人は…本当に…。少しは察してよ……リサさんに説明するのも面倒くさくなってきたなぁ…。
「はぁ……」
「……!?」ビクッ
 リサさんが振り返り、僕の方を見る。怯えているように見えた。
「ゆ、優…見捨てないでくれ…!私が頼れるのは……優しか居ないんだ。その、勝手に一人で口走ったことは…謝る……」
 僕が突っ込みたいのはそこじゃないし、僕は既に何度もリサさんを見捨てないって言ってるし…僕の話聞いてないの?
「ばか、見捨てないってば…あと、ローズさんのは……っ」クラッ
 ーーあれ?視界が…揺れて……。

 バタッ。

「ひっ、ごめっ…!な…待て、妙なことは…優?優!?」
 急激に薄れゆく意識の中、リサさんの心配する声が、僅かに聞こえた気がした。

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