チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第4話、この世界

 座る所が無いから仕方がなく2人でベッドに座って、僕達はやっと本題の話を始められた。
「リサさん、取り敢えず僕が聞きたいことは大まかに上げて3つ。答えてくれる?」
 質問したい数を挙げ、恐らく必要の無い確認をついでに取る。
「答えられる範疇なら全て答えてやろう。妙な勘繰りはするなよ」
 さっきあった事のせいでリサさんに釘を刺された。特には気にせず、話し始める。

「うん、しないよー……じゃあね、まずは質問1つ目。この世界に翻訳に関する魔法とか、魔術ってある?」
 随分前から察してたけど、此処、外国じゃなくて異世界かも。それを確認するのも兼ねて、僕が純粋に気になっていることを質問する。
「…あ、あぁ。確かに有るが…それが1つ目の質問なのか?」
 リサさんが不思議そうな顔で僕を見る。
「うん。ついでに聞きたいんだけど、その翻訳魔法ってどれぐらいの種類の言語をカバーしてるか分かる?」
 まぁ、所詮ついでだけど、この異世界がどれぐらいの規模を持つのか分かるかな。
「完全には言いきれないが……人語がある…という事を理解出来る程度の知能を持つなら、例え他国の魔物でも会話出来る…だろうな」
 魔物…へぇ。
「その魔法、誰が唱えられるか分かる?」
 多分、この世界の核心に触れる質問。流石に対策はされてると思うから、あまり期待はしない。
「え、えぇっと……この国の神官と……後は隣国のとある修道女が唱える事が出来たハズだ」
「他には?」
「……唱えられる者が少ないので有名な魔法だ。きっと他にも詠唱出来る人は居るだろう…が、私にはそこまでは分からない……」
 ふーん…まぁ、こんな物かな。

「そっか、ありがとう。2つ目の質問、言うね。この国の地図ある?出来れば細かく建物の名前が書いてあるのが良いな」
 まぁこの質問はどうなるか結果が分かってるから……。
「すまない、私は持っていない……その、地図は高くてだな?」
 うん。リサさんの謎の見栄を張った言い訳をスルーして、話を続ける。

「そうなんだー、うん、最後の質問」
 もう最後だー、まぁ実質2つしか質問出来てないけど……失敗した。流石に質問数3つって少なかったなぁ……もっと質問しても良かった。リサさんには言わないけどね。
「なっ、も、もう最後で良いのか?優、もっと知りたいことは……」
 言わないっ。
「大丈夫だよ。それより、驚かないで聞いて欲しいなー」
 これはリサさんについての質問。ここまでのリサさんとの付き合いで、推理出来たことを確認する為に聞く。
「驚く……何だ?」
 リサさんが注意深く耳を澄ませてくれた。
 僕はそれを見て、リラックスしながら話す。
「リサさんってもしかして、小さい頃から人付き合いが苦手でその寂しさを紛らわす様に学も体も1人で鍛え続けて凄まじい量の経験を積んでいたらいつの間にか騎士としてスカウトされててしかも裏切りの意味すら知らない様な真面目な性格を上から高く評価されて結構位の高い地位にいるけど仲間からは堅苦しいとか蛇女とか言われて辛くなった末他国へ逃げ出そうとして自分の生まれ育った国をもう帰らないと覚悟して飛び出した先の草原で、偶然僕と出会ってたりしない?」
 リサさんが目を見開いて僕を見ていた。リサさんは呼吸が浅くなってて、額から汗が一雫頬に流れていた。
「……え、あ…なんっ、なんで…?」
 聞き返してくる反応から察するに、僕の仮の予想と殆ど同じ境遇だったみたい。手が震えてる。
 僕はリサさんの片方の手を両手で握る。
「大丈夫だよ、怯えないで……ちょっと予想してみただけだから…ね?」
「あ、あぁ……?」
 単純な人だなぁ。体の震えはすぐに収まって、今度はリサさんが僕に対して質問する。
「優、君は……何者なんだ?」
 リサさんの境遇を悟ったんだから、僕もしっかり自己紹介しないと。
「異世界から偶然こっちの世界に来た普通の高校生で、化学部のメンバーの一人だよ。部活動の指示を担当してて、ブタオ君からのあだ名は司令塔、決して怪しい人じゃないよ」
 …化学部のメンバーは僕含めて4人居る。優しくて面白い人ばかりの……皆に会いたいな。
「私の素性を言い当てて来たのが物凄く怪しいが……」
 リサさんがジト目で僕を見る。うわーそんな目で見ないでよ。
「そうかな…普通だと思うよ。リサさんとはある程度一緒に居たし……むしろこれぐらいは皆、推理出来るよ」
 適当なことを話す。
「そ、そうなのか?ハッ、まさか私が悟られやすいだけで、皆が私の素性に気付いて!?」
 悟られやすいのは真実だろうけど、どうなんだろう。
「そうかもね」
 間違いは指摘しないで、リサさん面白いからもう少し泳がせておこう。
「そうだったのか…クソっ!優と話し合うまで気付けなかった私は…何て愚かなんだ……」
 リサさんがしょんぼりしてる。
「リサさん大丈夫?」
「…私のことだ、隠しても無駄だろうな。優、心配してくれてありがとう。だが正直、心が折れそうだ…本当に、悔しい。私が、私だけが気付けなかった!恐らく、既に皆には私の孤独な立場が…バレて……ぅぐ…っ…」
 リサさんの涙を堪える姿は疑いようもない程に、純粋だった。
「……ねぇ。リサさんは、これからどうするの?」
「っ…どうしようも無いだろう。1度此処から逃げ出した臆病者だ。別の場所に…」
「逃げるの?」
 リサさんが俯いていた顔を上げ、僕を見た。
「…っ……」
 でも、直ぐに目を逸らしてしまった。
「僕はリサさんの気持ちを尊重するよ」
 逃げ出すのも、向き合うのも。リサさんの自由だ。
「私は……」

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