シンリーは龍族の子に呪われた

千夜ニイ

龍族の呪い

 ドサッ。
『グルゥ』
 ついに龍族の少年は転び、その上にグレーライオンがのしかかる。

「くっ、こうなったら。人間、死ぬ時は一緒だ!」

 少年が覚悟を決めた眼差しで私を見つめ、片腕を伸ばした。
 私はその腕をヒョイとすり抜ける。

  ライオンは大きく口を開け、少年に食いついた。
 幼い日に大勢の友達が目の前で食い殺されるのを見た。
 今さら、見知らぬ少年がどうなろうと、心を揺さぶられることはない。

 少年の腕に魔物の牙が食い込む。
 ガリッ――ズキリ!

 龍族の肌の鱗を噛み砕く音と、私の腕への突然の痛みは同時にやってきた。
 当惑し私は少年を見つめる。

「俺とあんたの命をつなげた」

 苦痛に歪む顔の口元に、少年はにたりと笑みを浮かべる。

「死ぬ時は一緒だ……」

「呪いか!」

 私は瞬時に眼窩がんかからライオンの頭蓋を貫いた。

「お前、龍族なら一人でもあんな魔物倒せるだろう」

 剣の血脂を拭って少年に問う。

「俺は戦ったことなんてない」

 どこか後ろめたげに視線をさ迷わせて龍族の少年は答えた。

「じゃあ、どうやってここまで来たんだ」

 この辺りは魔族国の領域、グレーライオン以外の魔物も多数いる。

「護衛が倒した」

 少年は、えへんと自慢げに顎を上げている。

「その護衛はどうした」

  魔物に追われている主を置いて、肝心の護衛がいないとは妙だ。

「グリフォンを見かけて飛んでいった」

「くそっ、獲物を取られた!」

 龍族の護衛と言うのがどれほどの強さかは知らないが、世界最強と言われる龍族の戦士が、グリフォンに負けることはないだろう。

  今から走ったとして、飛行していった龍族に追いつけるとは思えない。
 それに。

「お前をここに置いていって、もしお前が魔物に襲われて死んだら私も死ぬんだな?」

 確認するように聞けば少年はしたり顔で頷く。

「そうだ」

「ああっ、お荷物だ」

 私は極度の頭痛に天を仰いだ。

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