シンリーは龍族の子に呪われた

千夜ニイ

蹂躙された町

 私は泣きながら走るしかなかった。
 全てを吐き出すような声を上げて、獣に気付かれるのが分かっていても叫びを止められなかった。
 町に着けば安全だと、大人たちが助けてくれると信じて、友の死と獣の恐怖を振り払おうと狂ったように走った。


 しかし。


『ガウゥ』
『グルル、グルゥ』


 町の中から聞こえてきたのは獣の咆哮と人々の上げる悲鳴と混乱の声だった。
 外から見るその町は、無数の獣に蹂躙された絶望の光景だった。


 私は、他の人たちが襲われているうちに、畑に放り出された農作業用の荷車を見付けて、その下へと入り込んだ。


『うっうっ。うっうっ……』


 止めようとしても、堪えようとしても、嗚咽と涙が零れ落ちる。
 体中が震え、手も足も凍える様に冷たくて、抱えて丸まりたかった。もし少しでも動いて獣に見つかってしまったら。そう思うと歯を噛みしめて恐怖と震えをこらえるしかなかった。


 丘にいたよりずっと多くの獣が町の中を走り回っていて、逃げる場所も、助かる道も思い浮かばない。


 ーー助けてください、神様、神様、神様……!


 ひたすらに助けを願った。
 いっそ、気を失った方が楽かもしれないと思いながら、私は見つからない事を願い、獣たちの蹂躙が終わるのを待った。


 気の触れるような時間耐え忍び、ようやく辺りは静かになった。
 それでもまだ、この場所から出るのは怖かった。


 お腹は空いた、喉はからから、頭は割れるような痛みがある。
 体は自分の物とは思えないような動きでガクガクと震えている。
 フーフーと荒い息が喉から漏れる。


 目は怖くて閉じられなかった。瞬きしたその一瞬に獣が現れて私に食いつくのではないかと思うと、いくら目玉が乾きと痛みを訴えても、瞼を閉じるわけにはいかなかった。


 それでも、体には限界が訪れる。
 どれだけの意思を持っていようと、エネルギーを使い果たした体からは力が抜け、死への恐怖を感じながら私は意識を失っていった。


「シンリーは龍族の子に呪われた」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く