ネコはネコとて今日もネコ

あき

ネコのときちゃん(3)

    さて、次の時間は?
    あらあら、困ったことだわ!ときちゃんたら、こっくりこっくり居眠りさん。ネコちゃんはお昼寝も大事だものね。
   
    いつのまにか、2時間目の授業が終わり、クラスのみんながガタガタしだしました。
「なに?何してるの?」
ときちゃんは、寝ぼけた目で辺りを見回しました。
「何って!次は体育の時間だから校庭に出る準備をしてるんだよ。」
隣の席の子が教えてくれました。さあ、ときちゃんは大慌てです。急いで、口の周りを手でサッと拭くと、一番に教室から飛び出しました。
「ときちゃん、帽子を忘れてるよ」
さっきの子が廊下に出たときちゃんを呼び止めました。
「ありがとう・・・・」
いい終わらないうちに帽子をひったくって校庭へと走りだすときちゃん。もう、稲妻級の速さです。


    チャイムが鳴り、体育の授業の始まりです。昨日の夜は雨が降っていましたが、校庭の土はもうだいたい乾いているようです。
「準備体操始めます。」
先生の合図でみんなは広がりました。
「さあ、手を上にあげて、もっともっと!もっともっとあげてー!もっともっと上がるかなー?」
先生の声にみんながこたえます。
「先生、もう無理です。これ以上上がらないよー!」
「えー?もう無理?そうか、仕方ないな。みんなで太陽を触ってみようと思ったのになあ。」
先生は首を傾げました。
「先生、太陽は遠すぎるよ!」
「だいいち火傷しちゃうし!」
「そうだよー!」
「太陽って本当は大きいんだよ!」
みんなで笑いながら先生に話します。先生は何か思いついたようです。
「わかった!じゃあ、もう一度、手を上にあげて!もっともっと思いっきりねー!」
「先生、もうこれ以上は上がらないよ!」
「今度はなに?」
先生はニコニコしています。
「ほら、あそこの雲!あれなら手が届きそうじゃない?みんな、背伸びが足りないんじゃない?」
「そんなわけないじゃん!雲だって近く見えるけど、遠いんだから。」
「それに雲って水蒸気だから、掴めないんだよー!」
相変わらず、ニコニコしながら先生は言います。
「本当にそうかなあ?それなら仕方ない。次の体操にうつろう。」
みんな元気よく準備体操しています。ときちゃんもです。でも、ときちゃんは美味しそうにもくもくしているあの雲から目が離せません。
「なんとか、雲をつかまえて、ひと舐めしたいなあ。」


    準備体操も終わり、ボールを持った先生の周りにみんなが集まりました。
「今日は、昨日の続きの鉄棒をしようと思ってたけど、まだ、そこだけ水たまりができているから、ドッヂボールをすることにしよう。」


    さあ、ドッヂボールの始まりです。クラスを半分にして戦います。

ピシユー
パシッ
バンッ

ボールを取ったり、当てられたり、転んで泣いちゃったり、賑やかにドッヂボールは続いています。

シュー!

速いボールがときちゃんに向かってきます。だけど、運動が得意なときちゃんは、サッとよけます。クルッと逃げます。フワッとかわします。どんな球がきても当たりません。ときちゃんは大活躍です。

「ときちゃん、すごーい!」
「ときちゃん、カッコいい!」

みんながときちゃんを応援します。ときちゃんも調子にのって、クルクルッと、サササッと、ヒョヒョイっとボールをかわします。
「つまんなーい!ときちゃん全然当たらない。鉄棒だったら、僕だって負けないのに。」
ときちゃんの隣の席の子が、プイッと鉄棒に走っていきました。先生が後を追っていきました。みんなも行きました。もちろん、ときちゃんも。行ってみると、鉄棒でクルクル回っています。
「ほら、見てみて!こんなに回れるんだよ!」
みんなが近くに来るとその子はニカッと笑いました。みんなは口々に、すごい!上手だね!と言いました。すると、ときちゃんは、なんだか面白くない気持ちがしてきました。そして、
「こっちも見てよ!こんなことできるよ!」
と言うと、ピョンっと飛び跳ね、鉄棒の上に乗りました。
「ほら、こんな高いところの上を走れるよー!」
スタスタッとときちゃんは鉄棒の上を移動します。それを見ていた隣の子は、大きな声を出しました。
「僕だって、もっと早く回れるよ!」
くるくる
くるくる
ものすごい速さで、鉄棒を回っています。とても2年生には見えません。みんなが目を見はりました。
「すごーい!」
「カッコイイ!」
ときちゃんは、頭に血が上りました。そして、その子のところに飛びかかろうとした瞬間!足をツルッと滑らせました。
「あ!」
ときちゃんは、一瞬で態勢を立て直してクルッと地面に着地。その瞬間、
ビチャッ!!
水たまりの水が大きく周りに飛び跳ねました。周りにいたクラスの全員と先生、みんなが泥を浴びてしまいました。
「ときちゃん、危ないじゃない。」
学級委員の子が言いました。
「みんな泥がたくさんついてるよ。」
「みんなの顔も服も茶色の水玉模様ができてるよ!おもしろーい!」
誰かが言いました。みんなが笑い出しました。本当にみんな、みんな、頭から靴まで茶色の水玉模様ができています。先生のメガネも水玉模様です。それを見て、みんな大爆笑です。
「先生!それで前見えるの?」
「大丈夫!水玉の隙間から見えるよ。」
先生もなんだか喜んでいるようです。
「さあ、みんな!水玉模様の顔をしていると学校中の人気者になれそうだけど、ちょっと不便だから、顔を洗おう。水道に行こう」
みんなで外の水道でバシャバシャと顔を洗って、ちょっとだけ水のかけっこをしました。誰かが、石鹸を使ってゴシゴシ洗っているようです。シャボン玉がふっと1つ飛びました。それを見ていた横の子も石鹸を手につけてふっとシャボン玉を飛ばします。
キラキラ  ふわふわ
シャボン玉が飛んでいきます。みんなが真似しだしました。たくさんのシャボン玉が
キラキラ
キラキラ
ふわふわ
ふわふわ
輝いて空に飛んでいきます。みんな、じっと見ています。
「あ、シャボン玉に虹がでてるよ!」
誰かが言いました。本当にきれいです。たくさんのシャボン玉。上へ上へと上がっていきます。太陽にピカピカと照らされながら、どんどん上にあがっていきます。

キーンコーン

チャイムが鳴りました。体育の時間はおしまいです。みんな、教室に帰ります。あのシャボン玉は太陽や雲とお友だちになれだでしょうか。

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