勇者時々へたれ魔王

百合姫

第20節 勇者フラグⅢ

レッドゴブリン討伐のため。
僕達はルベルークより西にいった背の高い雑草と針葉樹林らしき木々が生い茂る、小さな森にいた。
この辺を拠点に20匹程度が集まっているらしい。
西の方から来る商人や武装してない旅人を襲っているということで、依頼がでたのだ。
森に引っ込んでいれば殺されることにはならなかっただろうに。
というのは人間視点からの勝手な理屈だな。


レッドゴブリンだって生息域の拡大の一つや二つしたいだろう。
だからといって手加減してやるつもりはないけれども。
「説得できたらなぁ・・・」
「時と場所を選ばねば”優しさ”は枷じゃ。
甘いことを行ってると痛い目をみるぞ?」
「わかってるよ。」


同じ人間とはいえ、魔獣よりも盗賊の方が殺しやすかったなと最近は感じる。
そこには純粋な悪意しか無いからだろう。
しかし、魔獣たちには悪意は無い。
生きるために捕食をするだけ。
そこには純粋な敵意、本能とも言うべき絶対欲しかない。
まぁ弱肉強食と言うし、ここは致し方あるまい。


「魔獣の気配があるのう。」
「ん。ついたのかな?」
前方を見ると、5匹ほどのレッドゴブリンたちがいた。
その姿は5メートルを超える巨漢で、人型。下半身より上半身の質量がかなりでかい。
良く、あんな体系で戦えるものだ。普通逆だと思う。
肌がレッドの名にふさわしく、真っ赤に染まっていて顔は般若面のようで普通に怖い。
周りには食べ散らかしたと思われる人間の残骸、魔獣の残骸がある。
本拠点はもう少し先なのだろう。
聞いていた数よりずっと少ない。
さしずめ、第一防衛ラインといったところかな。
「ふ~む。
20匹まとめて妾の魔術で塵芥に化してやろうと思ったのじゃが・・・
ここで、派手なのを使うと警戒されてしまうかもしれんから、使えんの。
というわけで、妾は手伝えん。」
「そういえば、フェローの魔術とか奇跡ってどんなのがあるの?」
「だいたいが広域殲滅術じゃ。
妾の魔力、霊力量は常軌を逸していての。
そのため、初級術は大抵が暴発する。
結果的に妾の使う魔術や奇跡はどれを使っても大魔術、大奇跡と化してしまうのじゃ。
加減が難しいのじゃ。いめーじで言うと・・・一ミリにも満たない細かい粒子の砂から”すぷーん”で10粒ほど取るというものじゃろう。
この調節が難しくてのう・・・ちなみに、響はそういった初級でも暴発はしないから、徐々に魔術を教えていく予定じゃ。」
「フェローの力がめぐってる僕も一緒だと思うんだけど?」
「今、ヌシに流れてる力は妾の力の一割程度じゃから問題あるまい。」
「こ、この量で一割!?」
「常軌を逸しておると言ったじゃろう?
全てを送り込んだら・・・どうなるか妾にも想像がつかぬわ。」
「恐ろしいなフェローの力。」
「たわけが。」
「あくあまりんっ!?」


またまたビンタされた。
徐々にこの痛みに慣れつつある自分が嫌だったりする。
毎回、変な奇声がでちゃうし。
「そこは頼もしいと言うべきじゃな。」
にっこりと笑って無い胸を張るフェロー。
まぁ確かに頼もしくはあるよ。


「さて、んじゃ、僕が蹴散らすとしようかな。
一応、説得もしたいんだけど・・・言葉なんて通じないよね?」
「じゃろうな。
そんなことが出来るのは北大陸の変態どもだけじゃろう。」
「ん?」
「気にするでない。」
「そう。」


北大陸には魔獣の言葉が分かる人間がいるのか。
ちょっと行ってみたい気がする。
「縮地。」
十八番芸の縮地。
前にも説明したと思うけど、この技は一瞬でトップスピードに至る技である。
人間が走る際に、最高速度に至るには数十メートルの助走が必要とされている。
その数十メートルを綺麗さっぱりに無くすのがこの技である。


「グァッ!?」
最初に気づいた一匹が持っていた錆びてる幅広の大剣、ブロードソードを構えようとするが遅い。
バスタードソードを片手で持ち、筋力と遠心力を使って右回転気味に薙ぐ。
ザンッ!!
と音を発てて倒れ伏す下半身。
遅れて上半身が少し離れた場所に落ちる。
それを見て、他のレッドゴブリンたちがいっせいに咆哮を上げたが、それはバッドフラグだ。
そんな暇があるなら武器を構えるべきなのに。
「せいやっ!!」
今度は並んだ二頭を狙うため、両手持ちにして右回転した勢いそのままに一歩二歩と間合いを詰める。
そして、もう一度右回転。
もちろん全力では振らずにある程度余力を残して、カウンターや他の個体からの攻撃に備える。
二匹は何も出来ずに下半身と上半身が裂かれて絶命する。
ほとんど手ごたえを感じないのはレッドゴブリンが柔らかいのか、バスタードソードの質か、はたまた僕の筋力がそれほどまでに強化されているのか?
そのどれもであろう手ごたえに若干の物足りなさを感じつつ他二体に向き合う。


カウンターも隙を狙うこともしない二匹はただ仲間がやられたという事実を見ている。
弱いもの虐めみたいでこれ以上はやりたくないが、これも仕事。
2匹に走り寄ると二匹は武器を構えた。
この森からどこか遠くへ逃げてくれれば追わなかったのに。
依頼背景的にも、ミッション達成条件的にも、逃がすのはご法度なのだけどね。


「グガァァァァッ!!」
「ギアァァァッ!!」
二匹がそろって刃こぼれしまくったアックスと、やたら大きいメイスを振りましてくるがそれを避けてアックスの方の懐にもぐりこむ。
そして大剣でも使えそうな、姉さんから教わった技の一つを使う。
「桜花追連っ!!」
名前はまぁ気にしないで欲しい。
バスタードソードの柄で当身を食らわせて、すぐに一歩身を引く。そして渾身の突きを繰り出すという突き技である。
姉さんの場合、刀身の周りにかまいたちが発生する化け物技の一つである。
受けると傷口付近がずたずたになるうえ、腕とかに食らうと腕が千切れ飛ぶというグロ技でもあったりする。
首付近を狙って打ち込む。
「ゴガハァッ!!」
姉さんは9割が技術だが、僕の場合は筋力3割、技術7割というせいかカマイタチによる斬撃ではなく、衝撃波が発生する。
レッドゴブリンの首が破裂して、頭と胴体が永久の別れを告げた。
残った一匹も振り返りざまに逆袈裟斬りにして、殺す。


「・・・ふぅ。
こんなものかな。」
「見事なものじゃ。
剣技で言えば世界一かも知れんの。」
「・・・・世界一は姉さんさ。」
フェローの賛辞に、自嘲気味に答える僕。
姉さんに比べたら僕なんてただの凡人なんだよ。うん。


素材の爪と牙を剥ぎ取り、バックパックに入れる。
爪と牙は少量の貴金属が混ざってるらしく溶かして抽出するのだとか。
金属アレルギーにはならないのかなとちょっと心配しつつ、奥へと進む。
すると、人の声らしきものが聞こえてきた。


「誰か居るみたいだね?
襲われて、食べられる寸前だとか?」
「・・・・いや。
おそらく・・・っと待つのじゃっ!?」


食べられた後ならともかく、ちょっと急ぐだけで助けられそうなら助けるべきだ。
見捨てたとなるといくら人助けを趣味としない僕でも少々、目覚めが悪い。
まぁ、ついでだしと思って雑草を掻き分けていくと、凄まじい密度の魔力を視認した。
つい息を潜めて隠れる。
本能が正面からはまずいと警戒信号を灯していた。


魔力の原因は1人の男のようである。
黒髪黒目で、この世界では始めて出くわした。
その男の対面にいるのは女の子。
周りにはレッドゴブリンの死体である。


女の子には見覚えがあった。
「エンデではないか。こんなところとは奇遇じゃの?
いや・・・あやつの仕組んだことか?」
いつの間にか追いついて、僕の背後でふよふよと飛んでるフェロー。
フェローも気配を消しているようで向こうには気づかれていない。


「ってことは、あの男が勇者の1人か?
勇者と崇められることだけあるね。
魔力の流れが濃すぎてあいつの姿がぼやけて見える。」
「ふふふ。
それはあの男の力量不足を示しておる。
あれは自身の魔力の膨大さを持て余してる証拠じゃ。
大方、制御しきれずに漏れ出しているのじゃろうて。居場所が丸わかりじゃから・・・
魔術師としては三流も良いところじゃ。
それよりもあの剣が・・・やばいの。」


男の腰にさがっている剣は特に魔力の流れなどは見えないが、良く目を凝らして”見る”と強く念じるとぼんやりと魔力と霊力が渦巻いていた。
鞘で押さえられているようだ。
「気づいたかのう?
あれは霊宝剣、セルシウスキャリバーじゃ。
妾と同じ高位精霊が打った魔法剣じゃな。
その中でも鍛冶において天才の名を欲しいままにしておった氷人こおりびとのセルシーが打った最高傑作にして最後の剣。
自身の霊力と魔力をすべて込め、魔力霊力の源とも言える魂を打ち込んだため、意思を持ち、使用者を選ぶ意思剣・・・のはずなのじゃがのう。
エンデから聞いたとおりならば、あのような男に従うような女ではないはずじゃが・・・」
「聞いてると・・・かなり厄介そうな剣だね。」
「うむ。
持ってるだけでも魔術と奇跡が扱えるようになる上に、精霊契約も可能とするからの。
そもそもあの剣自体がセルシーと言っても良い。
おそらく、意思を封じる魔術を何重にも施しておるのじゃろうて。
それでは一割の力も発揮できないというのに、人間とは愚かな種族じゃのう。」
「耳が痛いね。」
「何を言うか?
響はとっくに妾の相棒じゃ!
人間でも特別じゃ!!」
「・・・あ、ありがとう。」
「うむ。」


恥ずかしいことを真顔で言われた。
僕だけ恥ずかしがってるのがなおのこと恥ずかしい。
と思ったけど、フェローの頬は軽く朱に染まっていた。
ここは華麗に指摘してあげよう。
「顔赤いけど?
お酒でものんだの?」
「・・・や、やっぱり人間は嫌いじゃ。」
すこし膨れるフェローを見て、笑う僕。
とりあえず、あの勇者の話に耳を傾けた。


☆ ☆ ☆
「私・・・話があるの!!」
「こんな人気の無いところにわざわざ呼び出して何のようだ?あん?
俺にレッドゴブリンなんてチンケな虫けらを殺させてまで話す事なのか?」
「それは・・・ごめんなさい。
それは知らなかっただけなの・・・ご、ごめんなさい。」
このバカはいやらしい目で嬲るように私を視姦する。
このバカの方がよっぽど私に謝ることがあるだろうに。
本当にこいつは嫌い。その点ではあのちょっと意地悪だけど、たまにヤケに優しい彼の方がよっぽど好きだった。
顔も可愛かったし。もう少し男らしい方が私の好みなんだけど。
とかなんとか考えてる場合じゃない。
私は自分の体を守るように抱きしめながら口を開いた。


「これを見て。」
「うん?」
「アースヘッドの牙よ。」
私はアースヘッドの牙を彼に見せる。
渡しても良いんだけど、渡す際に手が触れるかもしれないからそんなことはしない。
そもそも、この男には初めて会った時から一度も触れていない。
触れて欲しくもないし、触れたくも無い。
こいつに買われた娼婦には悪いけど、そんなことをするなら私は自害した方がましだ。
ただ触れるだけで死にたくなるほどにーーーそれくらいに私はこのバカが嫌い。


「ああん?
で?」
「で、じゃないっ!!
約束したでしょっ!?
私がアースヘッドの牙を取ってきたらあんたは土下座でもなんでもするって!!」
「ああ・・・そんなこともあったっけな。」


今話してる最中も本当に胸糞悪い。
私に力があったら問答無用で斬り殺してるのに!!
でも。でも。でも!!
そうした感情は出来るだけ奥底にしまう。
もし、こいつを怒らせて襲われたらとてもじゃないけど抵抗できない。
何も出来ずにただただ犯される。蹂躙されて、陵辱される。
でもそれも今日で終わり。こいつのご機嫌取りなんてこっちから願い下げだもん。


「別に謝らなくてもいい。
土下座もしなくていい。」
「抱いてくれってか?」


そんなわけないでしょっ!!
本当にバカでバカで忌々しいっ!!


「私をパーティから外してくれるだけでいいわ。」
「んん?」
そう。あの賭けに勝った私の唯一のささやかなお願い。
エールゲン村に帰りたい。
帰ってお父さんやお母さんとまた暮らしたい。
そして、かっこいい旦那さんを作って・・・もちろん私は美少女だから、旦那さんもそれなりのハンサムでなければ許さないけど。
・・・まぁ可愛いってのもアリかな。
べ、別に彼のことを考えていってるわけじゃなくて、たまたまそういう好みもあるだけよっ!?
か、勘違いしないでほしいもん!!
あ、今少し顔赤いかな?
でも、このバカは無神経だし気づかないよね。


「そうかそうか・・・・別にいいよ。
いらねぇし。」
「そ、そう・・・ありがとう。」
やっぱりだ。
こいつはお姉さん系みたいな女の人が好みらしいし、私の力もあてにしてない。
これで開放される。と思ったら涙が出てきそうになる。
でも、泣かない。
まだ泣かない。
泣くのはこいつと別れた後。
このバカに弱みを見せることだけはしたくない。
もし彼がここにいて、彼なら・・・どういってくれるだろう?
な、何を考えてるのっ!?
わ、私はっ!!別に彼は関係ないし、今頃違う街に行ってるに決まってるっ!!
で、でも、少し探してちゃんとお礼を言うのは大切よね。
べ、別に会いたいからじゃなくて・・・いや、会いたいってのはあるんだけどあくまでも友達としてだからで!!
別に下心は無いもんっ!!無いったら無いっ!!無いんだからっ!!


「とはいえ・・・やっぱりもったいねえんだよな。」
「え?」


不吉な、嫌な声が聞こえた。
声はもちろん男が発信源である。
ぞわりと身が震える。


「ほら?
お前って顔とスタイルだけはいいじゃん?
そのプライドが高いところだけはいけ好かないけどさ。
だから抱くきなかったんだけど・・・
別れるって聞いて、やっぱり一度くらいは味見をな?」
「・・い、いや・・・や、約束がちが・・・」
「はははははははははははっ!
バカだなぁ?
俺は強いんだぜ?
約束を守る必要なんて無い。
ついでにいうと無理やりってのを一度経験してみたかったんだよ。
良い声で喘いでくれ。」


あとずさる私。
でも、目の前の男も同じだけ詰め寄ってくる。
怖い。
怖い。
怖いの。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


怖い。
嫌なの。
近づかないで。
やめて。
彼ともう会えなくなっちゃう。
汚されたらもう会ってくれなくなる。
彼?
彼って誰?
彼は、今ここにいない。
居ないじゃない。
どうして?
どうして?
どうして居てくれないの?
分かってる。
本当は今このときにも一緒にいてくれるように。守ってくれるようにお願いするつもりだった。
でも、巻き込めない。上位竜種を雑魚とするこの男には彼でもきっと勝てない。
下手をすれば死んでしまう。
そんなのは嫌。
でも今の状況も嫌。
どっちも嫌だけど彼を巻き込むのはもっと嫌。
死ぬよりも、陵辱されることよりも嫌。
だから。
彼にはお願いしなかった。
お願いしなかったからここには彼はいない。
分かってる。
分かってても涙がでる。
こんなところで死ぬしかない私の運命が悲しくて。


「さようなら。
お父さん。お母さん。」
犯されるぐらいなら死んでやると思ってナイフを手に持ち、首に目掛けて差し込んだ。


「こ、こほっ!
こほっ!!ごほっ!!」
喉が少し痛いだけだった。
ナイフの刀身は根元から無い。


「どう・・・し、て?」
目の前には右手をこちらに向けた男がいた。
何かの魔術で刀身を折ったのだろう。


「死なせるわけ無いだろう?
もったいない。
舌を噛んで死ぬのもなしだ。
そうすれば協力者を殺す。」
「や、やめてっ!!
あの2人には手を出さないでっ!!」


どうやってあの2人のことを知ったのっ!?
まだ私も知らない力が・・・
「カマをかけてみるもんだな。」
「だ、だましたのねっ!?」
「何を言ってるんだ?
お前の能力を使ってアースヘッドを殺す手はずだろ?
それを他の人間に頼るとは・・・先に約束を破ったのはそっちじゃねぇか。
オシオキがわりとでも思っておけよ。
もちろん、エールゲン村も地図から消えちまうかもな。」
「・・・・ど、どうして・・・・
どうしてそんな・・・ひどいこと・・・」
「ひどいこと、ねぇ・・・
それだけお前の体に執着があるってことさ。
あと数年立てばもろ俺好みになるだろうしな。
大切に飼ってやる。
むしろありがたく思って欲しいね。
・・・・手始めに自分から服を脱いでもらおうか?
愛してます・・・と囁いて俺を抱きしめろ。」


・・・・ああ。
どうしようもない。
どうにもならない。
こんなことなら、追いかけられたり指名手配されるのを覚悟でこいつから逃げれば良かったんだ。
本当に失敗した。
嫌だな。
これから何をさせられるんだろう。
何をしなくちゃならないんだろう。
開放されるのはいつだろう?
旦那さんが目の前のコレか。
本当に私は不幸だ。
こんなことなら彼に助けを求めていればよかったかもしれない。
けど、後悔は無い。
せめて彼らのこの先に幸がありますように。
嫌だ。
ああ。本当に嫌だ。


私は・・・私は・・・・ただ、ただ・・・もうだめだ。
こいつの目の前では泣かないと決めていたけれど、もう泣きそうだ。


「一つだけ約束して。」
「なんだ?
そんな目に涙を溜めて・・・そそられる。
一つくらい聞いてやるよ。
逃がしてくれってのは却下だが。」
「協力者の・・・2人には手を出さないで。」
「・・・・ふふん。約束してやるよ。
変わりにきっちりお前は俺のぺっぶるぁあああああああっ!?」




約束してやると聞いて、私はもう泣く。というところだったのだけどそこで急に男が吹っ飛んだ。
そして。
そして。
そして。
そしてっ!!
目の前には・・・・彼が立っていた。


あ、もうこれ駄目。


反則過ぎるもの。




「ふ・・・・ふぇ・・・・ふぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええんっ!!
こ、怖かった、怖かったのぉっ!!
怖かったよぉおおおおおおおおおおおおおっ!!
嫌だったっ!!
すっごく嫌だったっ!!
わ、わだ・・・わだし・・・うぐ・・うわあああああああああああああああああ・・・・ああああん。」


だめだ。
私、もう泣くことしかできない。
泣きじゃくることしかできない。
泣きじゃくる私に彼はただ一言。


「守ってやる!!」




思えばコレが私の初恋だ。

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