男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

4わ しょうげき の じじつ

どらごにっく王国。
街の中に入ると人々の活気の溢れる声で気おされる。
何時来ても騒がしい街である。
どらごにあ大陸最大の街だから仕方ないことだが。




「掘り出し物屋も寄って置こう。」


掘り出し物屋はその名の通り、掘り出し物があるお店。
街によったら必ず見ておくお店である。
高い物は万~億単位を超える物もあり、安い物では1ルークもしない。
ちなみに”ルーク”はこのゲーム内での公用金貨である。


ところが。
色々とおかしい点に気づいた。
というか問題点。
まず一つ目が店の看板の文字が読めない。
日本のサーバーなら日本語だし、アメリカのサーバーなら英語。
ドイツのサーバーなら、と各国に対応してるはずなのだが見たことも無い文字である。
エラーで僕の知らないどこかの国のサーバーに入ってしまったと言うことだろうか?
ちなみに街行く人の言語はちゃんと日本語に聞こえるが、これは外国人のユーザーともコミュニケーションが取れるようにと、称号「ほんやくか」を持っているからである。
ゲームに登録すれば何よりも真っ先に手に入る称号だ。
効果はもちろん外国語の翻訳。


そして次に気になったのが、僕以外のユーザーがいないということにある。
プレイヤーにはフィールド上や気配隠蔽などのスキルを使っていない限りハンドルネームとそのキャラのレベルが頭上に出現するはずである。
それが1人もいないというのは明らかにオカシイ。
僕の頭上のネームプレートも無いことに気づいた。


三つ目がちょいちょい地名や店名が違うことである。
その辺のオバサンや商人の話を盗み聞きしてみるに、どらごにあ大陸のどらごにあ王城というのがこの街の正式名称のようだ。
国としての名前もどらごにあ王国となっていた。
どらごにあ王城から出た先ほど、キメラアントと出くわした森の続く街道も「どらごにっく街道」から「どらごにあ森林街道」と言うらしい。
さらには掘り出し物屋「おたから」が無くなっている。
いや、あるにはあるのだが店の様相が変わっていた。
見たこともない文字で書かれてるため、店名は分からない。


得体のしれない怖気が走るが、"気付かないフリ"をした。


気を取り直して軽く入ってみた。


「ご、ごめんくださ~い?」


きぃーと木作りのドア特有の音を発てて店内に踏み入る。
割としっかりしていた様相だったことが窺える店はとてもボロくなっており、正直店なのかも分からん。


「はいはい~、お客さんとは珍しいです!!」


奥から現れたのはボロッちい服を着込んだオカッパ頭の女の子である。
あまりのぼろ具合に、何がしかのモンスターに見えて、ちょっと身構えてしまった。
そういうキャラクターなのだろう。


ここはヴァーチャルであり、これは現実じゃない。
見たくない事実から目を背けたいがために、そう言い聞かせ、努めて普通に振る舞う。
あまりにもボロボロすぎて、胸の頂がちらちら見えてしまったりするのもそういう設定なのだ。
ポルノフィルター(エロい表現を抑制するシステム)が掛かってないのは、そういう設定だからだ。
そう僕は"言い聞かせる"。




「ここってお店・・・ですよね?」
「は、はいです!
お、お客様ですよね!?」
「掘り出し物屋・・・ですか?」
「はいです!!」


お客があまり来ないようで、僕が来たことがよほど嬉しいらしい。カウンター越しに身を乗り出してくる。
それを半歩下がって距離を取る僕。
胸の頂がね。あまりにも無防備すぎて、なんかこっちの方が恥ずかしくなってくる。


目の前の少女は12、13くらいにしか見えないが、やたらと胸の発育が良く、むしろそれが悪い。
いまだ幼い少女に垣間見える大人の魅力。
もとい、子供と大人の間で不安定に揺れる背徳感混じりの色気を前面に押し出してくる。
どうも引き気味になってしまっている。


耳の上辺りから生えている角を見ると鬼族か魔族あたりの種族だろう。
どちらも長寿(という設定)な種族なので、もしかしたら見た目よりも歳を食ってるかも。
せめて胸が無ければ異性ではなく、子供として接することが出来たのだが無いものねだりをしても仕方あるまい。
まさか千切りとるわけにもいかないし。
いや、この発想自体無いわ。
我ながらアホらしいことを考えた物だ。
自分で自分に笑う。


「あ、あの何か変ですか!?
そ、そういえば私が出てきたときも身構えていたような・・・やっぱりこんなボロ布纏った店員なんてお目汚しですよね。
・・・産まれてきてごめんなさい。」


ヘヴィな自虐を始めたっ!?
変といえば変だが、確かにボロ布来た店員はお目汚しだろうが、とりあえずそこまでではないからねっ!?少女よ!!


「そ、その女性が苦手でして・・・近くに寄られると思わず身構えちゃうんです。」


と、適当な嘘をつく。
まるっきり嘘というわけでもないが。
あまり得意ではなく、唯一仲が良かったのがマキである。
ゆえにこそ彼女に男ができたことが…つらい。


「えと・・・男なら分かるんですけど・・・失礼ですけど女の子同士で怯える意味が・・・」


ちっ。男の娘の外見は不便だな。
いちいち訂正しなくてはならん。いや、もう来ないしその辺もまたどうでもいいか。


「とにかく苦手なんです。
ですからあまり近くに寄られると殺しちゃうかもしれません。」
「そこまで!?」
「具体的に言うとハムにして出荷プレイを・・・」
「出荷プレイっ!?なにそれっ!?
お、お客さん!?変人ですか!?」
「失敬な。変態だ。」
「どちらにせよ気持ち悪いっ!?」
「気分を害したので帰ります。」
「あっ、待ってくださいっ!?
わ、私が悪かったですから、なんか買って言ってくださいっ!!
ひもじいのはいい加減、嫌なんです!!」
「見た目美少女の私に言われても・・・そんなにお金を持ってるように見えます?
見たところ私に買える物はありません。」
「そ、そんなウソを言わずともっ!!
サービスしますから・・・今なら私の脱ぎたてパンツも付いてきますから・・・」
「アホかッ!!いらんわっ!!てか、美少女のとこスルーしやがったな。」


そこ、ボケなんだ。
拾ってくれないと僕がまるで自意識過剰のように思われるじゃないか。


「え、でも、お母さんが“変態さんにはパンツが効果抜群よ”って・・・しかも脱ぎたてであればそれで100万は堅いって・・・」
「そんなことを実の娘に教える貴様の母こそが変態だと思う」
「ひ、人の親を捕まえてなんたる暴言っ!?
慰謝料を請求します!!」
「断固拒否します!!」
「パンツつけても?」
「たりめぇだっ!!
てか、いらねぇって言ってんでしょっ!?」
「この変態・・・強情ですね!?」
「なんも我慢して無いからねっ!?」
「じゃあブラジャーもつけますっ!!」
「もっとマシなもんを用意できないのっ!?」
「え?
・・・ほ、頬にちゅー・・・とか?」
「顔を真っ赤にしつつ言うだけの羞恥心があるのにどうしてそんなことを言い出したんだか。」


というか下着は恥ずかしくないのかな。


「だって、だってぇ・・・もう、体を売るしかないじゃないですかっ!!」
「厳密には体じゃないよ!?」
「私の始めてを売れとっ!?
げ、外道ですっ!!ここに外道が・・・鬼畜が居ますっ!!」
「人聞きの悪いっ!?」




なんなんだ。この極端娘は。
とにかく。


「本当にお金はないんです。」
「・・・そ、そうなんですか?」
「そうです。
ほら、この金貨。
見たことありますか?」
「・・・無いです。
結構な田舎でも見たこと無い・・・野蛮人?」
「失礼な破廉恥娘ですね。」
「そ、それこそ失礼ですっ!!」


頬を膨らませてぷんすか怒る少女を尻目に。
やはりか。と嘆息をつく。
ざっと一億ルークもの大金をいべんとりに収納してあるのだが、先ほどの言い合いの最中にちらっと目に入った値札らしきもの。
そこにはルークじゃなくてLと書かれていた。
この分だと銀行に納めてるお金も鉄くずと化している。
この国の金貨に両替できるかもしれないが、今の彼女の言葉を信じると恐らく無理だろう。


今回のエラーの原因ゆえの仕様変更。ではないはずだ。
いくらなんでもこれは無い。ここに来て金貨の仕様を変えるなど“どらぶれ”スタッフからすれば余計なプログラミング作業だ。
そもそもプレイヤーからの猛烈なバッシングを受けることになる。
それは避けるはず。
わざわざ変える意味も無い。
ここまで来るとーーーこれはもしかして?
いや、まさか。ありえない。ウィンドウも出たし。ここが“そう”であるはずがない。
先刻のオジサマも珍しくは無い目で見ていた。他の部分で珍しがってはいたが。
それに目の前の少女。
幾らなんでも表情が“豊か過ぎる”。
隠れメインキャラ・・・とか?




「なんていう金貨なんです?」


いまさらだがこんなアホっぽい小娘にも敬語を使うのは初対面だからである。
たとえこの娘ッ子がアホであろうとバカであろうとマヌケであろうと礼儀は守る主義なのだ。
礼儀に厳しい。それが日本人である。
むっ、少し少女からの視線がきつくなったような気がした。


「リーフです。
本当に持ってないんですか?」
「ええ、無一文です。」
「・・・はぁ。
お互いに貧乏なんですね。」
「失敬な。
ボロ布しか纏えない底辺少女と一緒にしないで下さい。」
「んなっ!?
そ、その言い草はあんまりです!!
異議を申し立てます!!」
「却下です。」
「お、横暴だ!!
横暴すぎます!!」
「それに私なら多分、すぐにお金持ちになれますし。」
「ふ、ふざけんなです!!
人生そんなに甘くないってのが世の常なんですから!!
お母さんがそういってましたし、現在進行形で私はそれを味わっています!!」
「じゃあ、明日、また来ますから。
度肝を抜いてあげます。」
「じょ、上等です!!
もし、稼げたなら私を嫁に貰ってもらいますからね!!」
「なんでっ!?」
「このまま貧乏なくらいなら愛して無い相手だろうと、同姓だろうと・・・え、えええ、えっちなことをしてやるってことですよ!!
ありがたく思うです!!」
「僕に対するメリットが驚くほど無い!?」
「本当に失礼なっ!?
私というお嫁さんを貰えるんだから素直に喜べば良いでしょう!!」
「・・・わーうれしいな。」
「棒読み過ぎませんか!?」
「では、失礼します。」


まぁ、もう来る気は無いが。お嫁さん?
二次元のお嫁さんを貰ってもね。
いや、ポリゴンなので三次元だが。
今日の晩までにはログアウトできるだろうしエラーも回復するでしょ。
あれ?
そうなると稼ぐまでもないな。
いや、でもエラーにしては修正が行き届きすぎてる気がする。
周りの店を軽く除いて見てもリーフに変わっていた。
何を考えてるんだろう?
運営側は。
と、"思い込む"。


ま、これから先、Lになるとしても宿屋にちょっと泊まるくらいのお金は持っておいたほうが良いだろう。
依頼屋にでも行く。




☆ ☆ ☆


と、思ったけど字が読めなくてどこなのか分からない。
今更だけど、これって文字化けか?
文字のテキストくらいしっかり打ち込んで置けよと思う。
ここの依頼屋に来たのは数年前以来だしな。
いちいち使わない施設の場所まで覚えてない。


しょうがないので地道にそれっぽい建物を探すことにした。
少し歩いて見つけた。
依頼屋は色々なクエストが受けられる施設であり、中には特殊なストーリークエストなどもある。
西部劇に出てくる酒場のような内装、外装で、ドアは無く、そのまま押し入る形のーーードア?
ドアの真ん中だけをくりぬいて、押し開き形にしたーーーあのドアってなんていう名前なんだろうか?
クールビズドア?
風通しが良くなりますって?


おほん。
とにかくそこに入っていくと、酒場内の空気が一変した。
え、何?
その珍獣でも見たかのような視線の数々は?
こっちみんな。
というかイカついNPCが多いな。
ただの日本人にはちょっとした怖さがあるぞ。


もちろん中には優男風や美女や美少女と言った感じの人達も少なからずいる。


「あら?
こんなに可愛い女の子がここになんのよう?」
「あ、はい。
依頼をーーーひあっ!?」


鈴のような綺麗な声をかけられたので、悪い意味で期待を裏切るルックスの職員がいた。
ゴリマッチョである。
いや、単に男であるならば僕にとっては良い意味でなのか?
女の人よりはしゃべりやすいし、失恋直後というのもあり、女性を見るだけでマキを思い出して憂鬱になってしまう。
好都合だ。
だがしかし。
さっきのオカッパ少女の言葉をパクルわけではないが、世の中甘くない。
男の服装はピチピチの女性用のスクール水着。
これが悲鳴をあげかけた理由である。
訳が分からない。運営によるキャラ付だとしても、なぜスクール水着チョイスなのかが分からない。
せめて女の子に着せたNPCでいいだろと。


圧倒的な存在感。
戦慄すら覚える。
というか直視に耐えがたい。
人の趣味にケチをつけるつもりはないのだが、これは目が腐る。


これは幼馴染がいつの間にか彼氏を作っていたというトラウマ以上にーーーあらたなトラウマを発生させそうなほどキツイ。
どうせなら女性職員の方が良かった。


顔を引きつらせつつも僕は目の前の変態に用件を伝えた。


「依頼をーーー」
「それにしても可愛い子ね?
リンスは何を使ってるのかしら?」
「依頼を受けーーー」
「このキューティクル!
大きなお目目!!
小さな唇に長いまつげ!!
将来確実に美人になるわよぉっ!!
いや、でも白い髪に赤い目ってことは妖精族か魔族かしら?
だとすると今が限界ってことも・・・」
「いや、だからーーー」
「服のセンスも良いわねっ!
どこで買ったの!?」


話を聞かないぞ、この変態。
もしかしたらこいつは話しかけてきただけの変態なんじゃないか?と思った。
いや、そうに違いない。
依頼屋は国が主導の国家機関。
その職員がこんなシュールな生き物を雇うはずが無いのだ。
あまりのインパクトにそんな常識も吹っ飛ばしていた。
全く、僕としたことが。
失敗、失敗。
ちなみに僕の種族は妖精族。ディレイと敏捷、魔法攻撃力が特に上がる種族である。
なぜ目の前の変態は髪の色で種族を言い当てたのだろうか?
髪や目は自由に変更できるから当てにならない。
そして男の娘を女の子として扱うことも“無い”。
なぜなら彼等はAIなのだから。


まぁ良いや。こいつをシカトしてちゃんとした職員のところへーーー


「ちょ、ちょっと所長っ!?」


奥から女性職員が出てきて、目の前の変態に声をかけたようだ。
OH MY GOD!
現実は無情である。


「あら、何?」
「“あら、何?”じゃありません!!
なんで私のスクール水着を持っていーーーきゃぁぁぁあぁああああっ!?」


変態改め所長を見てゴキブリを見たかのような悲鳴をあげる女性職員。
気持ちは分かる。
僕もあげそうになったから。
そもそもなぜスクール水着を持ってきたのだ?女性職員よ。
それさえなければ目の前の悲劇を回避できたものを。
周りの冒険者はまたか。という視線である。
どうやら目の前の所長とやらは恒常的に変態的らしい。
残念な人のようである。
係わり合いになりたくない。
声と見た目のギャップもそこに拍車をかけているのがなおさらである。


所長は女性職員につれられ、奥へと引きずりこまれて行った。
せいぜい痛めつけて欲しい。




「あの・・・」
「はい、どうしました?」


カウンター内で冷静にそうした小事(と言えるほど小さなことではないけれど)を見つめていた職員に声をかける。


「依頼を受けたいのです。」
「ええと・・・」


というと困惑した表情を浮かべる職員。
ああ、確か前金が必要なクエストが大体だったっけ。


「前金の無いクエストをお願いします。」
「ええと・・・本当に大丈夫?
命の危険がある仕事なのよ?」
「大丈夫です。」


いちいち聞き返されるとはまた不思議な。
どんどん違和感が強くなる僕。


「でも・・・あ、そうだ、クエストカードは持ってる?」
「持ってます。」


クエストカードはクエストを受けた回数や成績などが記載される物。
依頼屋に初めて来たときに貴重品だ。
いべんとりの“きちょうひん”カテゴリからクエストカードを取り出した。
もちろん最高のSSランク。
転生を一回でも経験した人は大抵の人がSSランクだろう。


「?
これって、どこの国のかしら?
おかしいわね。
文字も見たことが無いし・・・ちょっとこれでは受けられないかしら。」


ば、ばかなっ!?
なんでっ!?
これもエラーかっ!?
いくらなんでもありえないだろっ!?
いや・・・もしここがーーーいや、それはありえない。
そう、ありえないハズだ。


バカな考えを頭の片隅に押しやり、そのままクエストカードを貰うための手続きをする。
これが面倒だった。
同意書やカードの機能取扱説明書、規約書などなど。
まるでーーー「現実」のような。


いや、まさか、ね。
エラーである。
エラー。
そうに決まってる。


やたらと心配したような目で見てきた職員さんに見送りされながらーーー餞別でコンバットソードを貰った。要らないと断ったのにーーーどらごにあ森林街道にやってきた。
クエスト達成条件は最近増えてきたというキメラアントの討伐。
殺した数が多ければ多いほど報酬が多くもらえる。
ちなみに成績の項目として倒したモンスターの討伐した日付、場所、数などが記載されるため倒した証拠などは必要ない。が、素材は売れるのでイベントリに入れて持ち返ると良いと職員さんに言われた。無理しないようにね、とも。
プログラムにしてはやたらとしつこく僕がクエストに行くのを渋っていた職員さん。
大丈夫。そういうプログラムなんだろう。もしくはエラーだ。
そう自分に言い聞かせた。


街道をしばらく歩いた後、森にスキル「気配遮断」を使用して入っていく。
気配隠蔽1~2もあるので仮に視界に入ってもよっぽど接近しなければ気づかれない。
気配隠蔽3も欲しいなとちょっと思う。
ただ気配隠蔽3は麻酔弾やCQCで20万以上の敵を眠らせるか気絶状態にすることで手に入る称号。「はだかすねーく」というので手に入る。
今はおそらく19万くらいか。あと1万だが少し遠い。


「この辺かな?」


丁度良い狙撃ポイントを見つけたのでここから狙い打つことにする。
狙撃銃は中~近距離で使えるVSS・EXという狙撃銃。
狙撃銃はその射程距離ゆえに音速クラスで弾を打ち出すため、射出音が特別大きい。
その射出音とマズルフラッシュ(銃を撃つときの火薬の光)を緩和しつつ狙撃できるというコンセプトで作られた銃がVSS・EXらしい。
連射性も高く装弾数も多いことから突撃銃としても使える汎用性の高い銃器であるが基本的に接近戦では使わない。
装備重量ゆえに敏捷性が落ちるからだ。
装備重量は3。ロングソードが1。銃器というのは意外と重く、3は軽いほうだ。現実では3キロなんてざらで、ハンドガンでも700~900グラム前後が平均らしい。
1につき敏捷が100落ちるのでこれは大きい。


ただ、思ったよりも敏捷が落ちて無い気がする。
そう、根性でカバーできるレベルーーーいや、ここはゲームである。
数値で測れる世界だ。もちろんVRゲームであるがゆえに根性と気力でカバーできる部分は多いがーーーそれとは根本的にーーーいや、まさか。
現実じゃない。そんなはずがない。
そうだ。
試してみれば良い。
キメラアントの死体を一体分だけ守れば良いだけだ。
ボス敵はマップを切り替えるまで。
雑魚敵は一分ほどでフィールド上から消える。
消える前に他のモンスターが食べて体力を回復するというシステムがあるが、そうさせないためにも守りきる。
よし。基本方針はこれで行こう。
背後に敵が近づいたら気づけるようにイベントリから“赤外線せんさー”を取り出して木々に取り付ける。赤外線センサーも買っておかないとな。
なにはともあれ準備完了だ。
後はただスコープを覗いてトリガーを引くだけ。


一体を殺して後はひたすら撃ちまくる。






日が暮れた頃。
僕は帰った。
いや、“帰れなかった”。






これからもずっと。



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