タコのグルメ日記

百合姫

芋虫こわい、いたい

次の日。
やまいと一緒にくるまって寝ていたのだが、いつのまにかやまいがベッド代わりの僕の体から零れ落ちていた。
寝相が悪いのかもしれん。
昔はそんなことなかったと思うけれど、まぁそれはさておき。


まずは木を確認。
うむ、やはり生乾きである。


今日もまた部品作りと乾燥作業かな。


「ん?
ってうおおおおおおおおおおっ!?」


何気なく木を見たのだ。
乾燥させていた木を見ていたら違和感に気付いた。
違和感というか、変な部分があった。
のこぎりにかけたかのような木の削りかすのようなものが木材から出ていたのである。
木材の周りに降り積もった木くず。
心当たりはない。


そんなのが出るような切り方をやまいはしてなかったし、仮に出るとしてもここまで大量にでるはずがない。


不思議に思って、じっくりと木材を観察していると木材の表面になにやら蠢くものが見える。
何だこれと目を凝らすと、芋虫のようである。
結構大きめでたまに道端で見かけるでかいミミズレベルの大きさだ。


しかもそれが無量大数。
それがむっしゃむっしゃと木材を食んでいる。
おもわず叫んでしまっても無理はない。
いや、キモイとかそういう意味じゃなくて、単純に驚いたという意味で。


一体どこから入っていたのか。
結界は張っていたし、さすがに魔法がある世界ったって昨日今日でこんなでかい芋虫が一日でこんなに大量に孵化して成長するはずがない、と思いたい。
そもそもこれサイズの幼虫ともなると成虫はおそらくカブトムシよりもでかいだろう。
羽音もでかいわけで、こんな近くに来たら気付かないわけがないんだけどな。
野生動物の体のせいか僕は基本眠りが浅いし。
というか、そもそも結界はどうした。結界は。


と、結界を確認すると正常に動作している。
一体何が悪いのかと思ったところで気付いた。
ああ、なるほど。
もともと木に入り込んでた虫がそのまま残っていたといったところか。


けどそれも確認したはずなんだが。
むむぅ。
何か腑に落ちない。


「とりあえず撤去だな、撤去。あ、いや、これを朝食にしよう。」


芋虫は基本的に旨い。
棘があるので、毛虫の類は食べたことがないが、普通の芋虫は何度か食べたことがある。
それらは個体差はあっても基本的においしかった。


これだけ量があれば十分だと捕まえようとした。


「え?」


触腕を手の形にしながら芋虫の一匹を手づかみにした。
するといきなり叫びだす一匹の芋虫。
そしてそれに呼応するかのようにすべての芋虫が鳴き叫びながら僕に襲い掛かってきたのである。


とはいえども、しょせん芋虫。
問題ない。


「いったああああああっ!?」


と思ったけど、問題ありまくりだった。


こいつら、僕の皮を、肉を貫通して食い破ってきやがるっ!?
いたいっ!
久々にめっちゃ痛いぞぉおおおおっ!


「いででっででででっ!!」


全身を生きながらに食われつつも、当然黙ってやられるわけがない。
抵抗がてら自身の目に仕込んである魔方陣を発動。
目からビームで撤去しようとするが何せ、数が多い。
キリがない。
しかも僕自身の体も傷ついてなおのこと痛い。
なので自身の触腕を自分の体に巻きつけつつ、体を収縮して筋肉の圧縮に巻き込んで芋虫たちを磨り潰す。
まだ触腕についている芋虫たちは触腕を地面にたたきつけて遠心力と衝撃でつぶしつつ、飛ばしていく。


ようやく最後の一匹を取り除いた時には、僕の体は血だらけだった。
芋虫の緑っぽい体液と肉片でべとべとでもある。
いたい。


「タコっ!?
どうしたのっ!?」


うるさくしていたので、さすがに起きたのだろう。
やまいが僕の姿を見てかけよってきた。


うん、誰だってこの姿を見たら驚くだろう。
僕は水の魔方陣を書きながら、やまいに事情を説明。
やまいがもしあいつらに触っていたとしたら、くろもやさんを発動する間もなく、即内臓まで食い破られていたのかもしれない。


僕でよかったと思うと同時に、緊張感が足らなかった。
ここは地球ではないのだ。
ちょいちょいこうした前世の記憶が足を引っ張るのはしょうがないと思うも、ここは僕が昔見知った森でないことを再認識した次第である。


こんな芋虫見たことも聞いたことも無かった。


しかも毒でも持ってたのか、筋肉が痙攣して、どこか熱っぽくもある。
とりあえず水の魔法で体を人洗い。


横になって休むことにした。


「タコ、大丈夫?」


大丈夫と言いたいところだが、ちょっと困る。
回復魔法も修めてはいるものの解毒ができるほどではない。
とりあえず体の傷を治した後に、寝て待つことにした。


「私、一人で取ってくる。」
「いや、でもそれは・・・」
「大丈夫だよ。
私だって昔みたいに弱いままじゃないもの。
木を切ってくるくらいできるよ!」


といって止める間もなく出て行った。
心配で仕方ないので、だるさを我慢して追いかけることにする。


そして僕がついていくとやまいは僕に気付いてこう言うのだ。


「いいから、休んでてっ!」
「いや、けど・・・」
「じゃあ、見て取れる場所で木を切るからそれでいいでしょ。」
「わ、分かった。
でも常にくろもやさんを使って、それでちゃんと木を見てあの芋虫や、ほかにも何かいないか・・・」
「分かってるからっ!
タコは無理しちゃダメ。
ゆっくり寝てて。ね?」


といって寝かしつけられるのだ。
いや、しかし、でも、と心配してもしょうがない。
とりあえずやまいを見ながらゆっくり休むのだった。


ちなみに、その間に先ほどの芋虫を観察する。
一匹だけ魔法で作った土のコップに入れておいたのだ。
中をのぞいて確認するとやはり蠢く芋虫。
頭には目らしきものはなく、ペンチのような顎で土のコップを削っている。
この調子だと10分も経過しないうちにここから出るだろう。


今までいろいろと食べたことはあってもこれは食べる気にはならない。
口の中から食い破られそうだし、頭は固すぎて消化できそうにない。
植物や毒を持つ生物を除けば初めて食べれないと感じた動物だ。


とはいえどもチャレンジしてみる。
・・・いや、そのね。
知的好奇心がね。
芋虫はおいしいからね。
それを知ってる僕としてはちょっと試してみたいという気持ちがあるわけで。


さすがに生きたまま噛み千切るのは怖いので、軽く焼いて食べることにする。
もといきっちり殺して食べる。


やまいの作業を見ながら火魔法で軽く焼く。
すごい暴れっぷりで、なにやら体液をまき散らす。
これがフライパンを汚し始めるので、焦って目からビームで一気にとどめを刺した。


・・・さんざんである。
フライパンからは変なにおいがする。
ビームで仕留めたせいか焦げてるが、気にしないで食べることにしよう。


まずは一番厄介そうな頭からかぶりつく。


「もぐもぐ。あ。これ、食えんわ。」


金属をそのまま食べてるかのような食感だ。
頭の異物感がひどい。
一応噛み砕けるものの、人間の顎の力じゃまず噛み砕けないレベルである。
中身も詰まっているわけではなく、あまりおいしくない。


そして、肝心の身だがこれまた不味かった。
・・・食えないほどじゃないが、決して食べたいとは言えないものだ。
端的に言えばただの木の皮を食べているかのようなパサパサ感。
味はそのまま木を食べているかのような特に味もなく、ただ苦いだけというもの。
いや、身の部分には確かに何かの味があるのだがどうも表現しにくい味で、とにかく食べれたもんじゃない。


頭だけ吐き出して、ほかはなんとか飲み込む。


「・・・口直しがしたい。」


水を出して飲むだけ軽く口直し。






その後、虫に気を付けつつ木材を選定して家ができたのは5日後のことだった。







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