タコのグルメ日記
飴祭り2
「で、結局買っていくのか?」
「え?」
「わたがしだよ。」
というラインハルト君。
うむ、確かにわたがしは欲しい。
駄菓子菓子。
困ったことにわたがしを食べると腰が抜けてしまう難儀な体なのだ。
これから街をぐるりと見て回るつもりなのにこんな序盤で足腰立たなくなるのは避けたいところである。
「・・・タコ、食べたいの?」
「べ、別にそんなことないよっ!?」
「でも・・・」
僕の視線はやまいの手にあるわたがしに向かっていたようだ。
やまいは少し葛藤した様子を見せたあと、そのわたがしを僕に差し出す。
「はい。」
「だ、大丈夫!いらないからっ!!」
「で、でも美味しいよ?」
「ほ、ほら・・・食べかけだし・・・」
「食べかけ嫌だった?」
「え゛?いや、そういうわけでは・・・」
「よだれ汚いもんね。」
わたがしを食べると唾液で口に付けた部分が変色して溶ける。
そこを見て、悲しそうにするやまい。
「別にそんなこと気にしないよ!?
やまいのよだれは大好きさっ!!」
「うん、私も。タコのよだれなら大丈夫。」
というと、また別の意味に取られかねないが。
今の言い方はちょっとなかったきがする。
「・・・でも、じゃあ、どうして?
タコは昔言ってた。好き嫌いしちゃダメだよって。」
「いや、だから・・・わ、分かった。食べるよ。」
少し泣きそうな顔で言われてはしょうがない。
せっかく自分が食べたいのを我慢してくれたのだ。
一口。
そう、一口ならなんとか耐えて見せる!
・・・。
・・・・・・。
はむ。
「にぃひゃうっ・・・っ!!」
キターーーーーーーーーーーーーーッ!?
やっぱりキテしまったかぁあああっ!!
舌に伝わる超絹ごし食感が僕の舌を犯していくっ!!
「た、たこっ!?」
いきなり腰が抜けた僕に対して驚くやまいであった。
☆ ☆ ☆
ちょっとした休憩を挟みつつ、ラインハルト君と別れ、次にやってきたのは大通り。
いろいろな装飾で飾られた街並みのいたるところに飴を売っているお店がある。
わたがしはもちろんのこと、こんぺいとうや普通の硬い飴、キャラメルのような物を売っているお店もある。
「だいじょうぶ?」
「うん、もう大丈夫。美味しすぎて腰が抜けただけだから心配しなくていいんだよ。」
「・・・う、うん。」
と言っても怪訝な表情は晴れないやまい。
僕だって逆の立場だったらそうなるだろう。
しばらく見て回っているとやまいの興味をいたく引いた飴があったようだ。
やまいが興奮して僕の手を引っ張ろうとする。
「あ、あれ買う!」
「もう少し落ち着きなよ。別に飴は逃げないから。」
やまいは見たこともない飴の数々にただただ驚き、喜ぶばかり。
やまいが買うと言ったのは細長い飴をグルグルに巻いたものに串を刺した物・・・俗に言うペロペロキャンディである。
子供の頃に食べたことがあるものの、あまり美味しくなかったような覚えがある飴である。うろ覚えであるが。英名ではロリポップとも呼ばれ、割と有名どころの飴だろう。
「すいません、これを2つください。」
「はいよ、まいどあり。」
というわけで久しぶりに食べるペロペロキャンディ。
・・・うん、まぁ悪くはない。
日本で食べたものよりは少し柔らかく作ってある。
ずっと舐め続けてると他の飴が食べれないので、ちゃっちゃと噛み砕く。
やまいはその名のとおりペロペロと舐め続けている。
食べ終わるまでにかなりかかりそうなので、他の飴は食べずに持ち帰ることになりそうだ。
事前にいろいろな飴を買って帰ろうと思っていたので、飴用の袋はすでに買ってある。
どこの飴屋にもいくつかは専用の飴袋が売っているのだ。大きさは人の頭くらい。
飴吹雪のチューイングキャンディが売ってるお店も見つけたので、そこで5袋分買った。
べ、別に僕が欲張りなわけではなく、ここでしか買えないというレアリティとそこまで高いものではないということ。さらには旅のお供にと思ったからであって別に僕が欲張りというわけではないのだ。
大事なことなので二回言った。
やまいだってそんな僕に対して言った言葉は「欲張りだね」ではなく「大好きなんだね」だ。みっともなくもない。
ちなみに、やまいもいろいろな飴をいくつか買ったので、すでに合計7袋目である。
袋はすべて持ち手がついていて、そこに尻尾としてワンピースから出した触腕でもって持ち歩いている。とは言えど多くなるとかさばってくるので途中で冒険者組合の中にある冒険者用のショップにて、リュックサックを買ってそこに全部まとめて入れている形だ。
ザーボンにも何か買っていってあげようか?
木を食べ、果物を食べるし、一応は植物食よりの雑食である亀のザーボンなら飴だって食べるはず。
りんご飴を1袋分、買ってあげることにした。食べなければ僕とやまい、ティキで食べてしまえばいい。
りんごを刺している串は木なのでザーボンならまとめて食べてしまえる。
『さぁさぁみなさまっ!!
本日のメインイベントッ!!
飴職人による飴細工勝負が水晶砦内で開催されますぅっ!!
すでにお楽しみの方は美味しい飴の数々に舌づつみを打たれていることでしょうっ!
次は飴によるエンターテインメントをその両目で味わってみるのはいかがでしょうかっ!!
飴細工勝負は今から30分後に開始されます!
皆様ふるってご参加の程をっ!!』
とのアナウンスが街全体に流れる。
またもやリリィちゃんコールがあたりに響くが、それよりも気になることが。
飴細工勝負、とな?
『繰り返しますっ!
本日のメインイベントッ!!
飴職人による飴細工勝負が水晶砦内で――』
再度、響くアナウンス。
「あめざいく?」
「飴細工っていうのは柔らかくなるまで炙った飴を使って、いろいろな飴を作ることを言うんだ。」
「・・・?」
「まぁ、見に行ったほうが早いね。」
というわけで街の中央、水晶砦に来た。
さっきのアナウンスを聞いたのだろう。
人ごみがすごい。
荷物を置いてきたほうが良かったかもしれない。
受付にくると、受付の人に身体検査をされる。
女性は女性の職員に、男性は男性職員に。
肌着の姿になる必要があるらしい。
「申し訳ないのですが、身体検査をさせていただきます。
拒否する場合会場には入れないので、ご了承ください。」
「別にいいんですけど・・・飴細工の会場で悪さをする人なんているんですか?」
女性職員のところへ連れられた僕とやまい。
これから美人ともいえる目の前の女性に体のすみずみまで検査されるのだ。
というとちょっとドキドキする。
擬態がバレるかもとちょっと焦ったが、触腕が背中から生えてるのを見られない限りは・・・いや、見られても魔人ですよ!と言えばいいか。
ちなみに真っ裸を見られてもまずバレないクオリティなので、それこそ股間の割れ目をじっくり見られない限りは気づかれないはず。
まずそこまではしないだろう。
「あはは、まぁ言いたいことは分かるんですけどね。この街のアイドルのリリィちゃんはご存知ですか?」
「いえ、あまり・・・」
「そのリリィちゃんを拐おうとした輩が数年前から出没しはじめまして・・・かといって彼女と直接話せる機会はこのイベント時のみということもあって、ファンの人を思うと中止するわけにもいかず。警備を厳重にすることによって対応しようといった形になります。」
「なるほど・・・」
「ただ、その代わりと言ってはなんですが中で振舞われるお茶菓子の類は無料で好きに食べていいことになっているので、存分に楽しんでください。」
せめてもの不満緩和の措置かもしれない。
「あ、もういいですよ。」
「はい。」
「余計なお世話かもしれませんが・・・ブラジャーはつけたほうがいいと思いますよ?」
「え?
・・・あ、ああ、はい・・・考えておきます。」
当然、脱ぐ際に問題になったのがブラジャーである。
パンツはスカートやらが翻った際にノーパンってことになるとちょっと面倒なことになりそうだから最低限履いてるだけで、ブラジャーなんかはまず必要じゃない。
もともと僕はタコなのだ。
服を着る必要はないし、一日中人の姿をとっているわけでもない。
変に着込んでも脱ぐのが手間なだけである。
それもあって着けてないのだが・・・やはり不自然に写ったのかもしれない。
「若い時はいいけど、油断すると垂れちゃいます。
これは年長者からのアドバイスですね。
せっかくの良い形のおっぱいが崩れたら嫌でしょう?それに大きさも大きさですから重さでなおのこと・・・」
「ははは、そ、そうですね。今度からつけていこうと思います。」
あまりそんなことを言われても困るだけ。
そもそも僕の胸は脂肪ではなく筋肉である。筋肉であるがゆえに垂れない、というか垂れる様な器官というわけでもなし。
とはいえども柔らかさは本物よりも揉みごたえがある、というレベルだと思われる。
少し固いという程度だろうか。
一応緩めているので。
なんて話もほどほどに。
「・・・。」
「ど、どうしたの。
やまい?」
パンツ一丁で自分の小さな未成熟な胸をもみもみしながら難しそうな顔をしている。
「タコみたいにおっきくならない。」
「いや、やまいはまだ子供なんだからそんなもんだよ。」
むしろ10前後で多少なりとも膨らんでいる彼女は発育のいい方だ。
将来的には少なくとも手でつかめるくらいには大きくなると思われる。
「というか、別に大きくなくても全然悪いことなんてないんだよ?」
大きさを気にするような環境にはいなかったはずなんだけど、どういう心境の変化だろうか?
「でも・・・どうせならタコと一緒がいい。」
「いや、別にそこまで・・・ね?」
「ふふふ、そうですよ。あなたくらいの年頃ならそれだけ胸があれば将来的にはお姉さん並みになること間違いなしです。超えても全然おかしくないですよ?」
「タコと一緒がいいの。」
なるほど。今のセリフから察するに自分の好きな人、身近な人に対して「自分もあの人みたいに!」のような、子供がよくなる真似したがり精神、かもしれない。
よく男の子は父親の背中を見て育つというが・・・女の子は母親の胸を見て育つのかも。
なんて益体のないことを考えながら。
服を着たやまいの髪を手で梳かしつつ、会場へ足を踏み入れるとそこはシャンデリアが天井のいたるところに存在し、中央には大きなステージらしきもの。
そして周りには小テーブルがいくつもあり、まるで大きくて豪勢な結婚式場のような様相だ。
周りのお茶菓子を堪能しつつ、しばらく待つと時間になったのだろう。
ステージの真上の天井が割れて、そこからゴーレムが降ってきた。
ずどーんと大きな音を立てて着地すると同時にゴーレムの周りに花火のような・・・ヒーローショーばりの演出が起こる。
ステージはかなり頑丈で、砕けて石屑がお菓子に降りかかるなんてことはなく、少しだけ巻き起こったホコリもゴーレム登場と同時に発生した突風でお茶菓子に全くかからなかった。
突風は魔法だろうか。
ド派手な演出である。
そしてそのゴーレムの上にはチャイナ服を着た白い髪をポニーテールにしたつり目気味のクールビューティーがアイドルっぽい可愛いポーズを決めて立っていた。
『みんなぁーっ!
今日は来てくれてありがとぉっ!!』
という声に反応したか、周りの人たちが一斉にオォーッと沸き立つ。
やまいがびっくりして思わず僕に抱きつくくらいだ。
僕もびっくりした。
どうやら彼女がリリィちゃんとやらのようだった。
「え?」
「わたがしだよ。」
というラインハルト君。
うむ、確かにわたがしは欲しい。
駄菓子菓子。
困ったことにわたがしを食べると腰が抜けてしまう難儀な体なのだ。
これから街をぐるりと見て回るつもりなのにこんな序盤で足腰立たなくなるのは避けたいところである。
「・・・タコ、食べたいの?」
「べ、別にそんなことないよっ!?」
「でも・・・」
僕の視線はやまいの手にあるわたがしに向かっていたようだ。
やまいは少し葛藤した様子を見せたあと、そのわたがしを僕に差し出す。
「はい。」
「だ、大丈夫!いらないからっ!!」
「で、でも美味しいよ?」
「ほ、ほら・・・食べかけだし・・・」
「食べかけ嫌だった?」
「え゛?いや、そういうわけでは・・・」
「よだれ汚いもんね。」
わたがしを食べると唾液で口に付けた部分が変色して溶ける。
そこを見て、悲しそうにするやまい。
「別にそんなこと気にしないよ!?
やまいのよだれは大好きさっ!!」
「うん、私も。タコのよだれなら大丈夫。」
というと、また別の意味に取られかねないが。
今の言い方はちょっとなかったきがする。
「・・・でも、じゃあ、どうして?
タコは昔言ってた。好き嫌いしちゃダメだよって。」
「いや、だから・・・わ、分かった。食べるよ。」
少し泣きそうな顔で言われてはしょうがない。
せっかく自分が食べたいのを我慢してくれたのだ。
一口。
そう、一口ならなんとか耐えて見せる!
・・・。
・・・・・・。
はむ。
「にぃひゃうっ・・・っ!!」
キターーーーーーーーーーーーーーッ!?
やっぱりキテしまったかぁあああっ!!
舌に伝わる超絹ごし食感が僕の舌を犯していくっ!!
「た、たこっ!?」
いきなり腰が抜けた僕に対して驚くやまいであった。
☆ ☆ ☆
ちょっとした休憩を挟みつつ、ラインハルト君と別れ、次にやってきたのは大通り。
いろいろな装飾で飾られた街並みのいたるところに飴を売っているお店がある。
わたがしはもちろんのこと、こんぺいとうや普通の硬い飴、キャラメルのような物を売っているお店もある。
「だいじょうぶ?」
「うん、もう大丈夫。美味しすぎて腰が抜けただけだから心配しなくていいんだよ。」
「・・・う、うん。」
と言っても怪訝な表情は晴れないやまい。
僕だって逆の立場だったらそうなるだろう。
しばらく見て回っているとやまいの興味をいたく引いた飴があったようだ。
やまいが興奮して僕の手を引っ張ろうとする。
「あ、あれ買う!」
「もう少し落ち着きなよ。別に飴は逃げないから。」
やまいは見たこともない飴の数々にただただ驚き、喜ぶばかり。
やまいが買うと言ったのは細長い飴をグルグルに巻いたものに串を刺した物・・・俗に言うペロペロキャンディである。
子供の頃に食べたことがあるものの、あまり美味しくなかったような覚えがある飴である。うろ覚えであるが。英名ではロリポップとも呼ばれ、割と有名どころの飴だろう。
「すいません、これを2つください。」
「はいよ、まいどあり。」
というわけで久しぶりに食べるペロペロキャンディ。
・・・うん、まぁ悪くはない。
日本で食べたものよりは少し柔らかく作ってある。
ずっと舐め続けてると他の飴が食べれないので、ちゃっちゃと噛み砕く。
やまいはその名のとおりペロペロと舐め続けている。
食べ終わるまでにかなりかかりそうなので、他の飴は食べずに持ち帰ることになりそうだ。
事前にいろいろな飴を買って帰ろうと思っていたので、飴用の袋はすでに買ってある。
どこの飴屋にもいくつかは専用の飴袋が売っているのだ。大きさは人の頭くらい。
飴吹雪のチューイングキャンディが売ってるお店も見つけたので、そこで5袋分買った。
べ、別に僕が欲張りなわけではなく、ここでしか買えないというレアリティとそこまで高いものではないということ。さらには旅のお供にと思ったからであって別に僕が欲張りというわけではないのだ。
大事なことなので二回言った。
やまいだってそんな僕に対して言った言葉は「欲張りだね」ではなく「大好きなんだね」だ。みっともなくもない。
ちなみに、やまいもいろいろな飴をいくつか買ったので、すでに合計7袋目である。
袋はすべて持ち手がついていて、そこに尻尾としてワンピースから出した触腕でもって持ち歩いている。とは言えど多くなるとかさばってくるので途中で冒険者組合の中にある冒険者用のショップにて、リュックサックを買ってそこに全部まとめて入れている形だ。
ザーボンにも何か買っていってあげようか?
木を食べ、果物を食べるし、一応は植物食よりの雑食である亀のザーボンなら飴だって食べるはず。
りんご飴を1袋分、買ってあげることにした。食べなければ僕とやまい、ティキで食べてしまえばいい。
りんごを刺している串は木なのでザーボンならまとめて食べてしまえる。
『さぁさぁみなさまっ!!
本日のメインイベントッ!!
飴職人による飴細工勝負が水晶砦内で開催されますぅっ!!
すでにお楽しみの方は美味しい飴の数々に舌づつみを打たれていることでしょうっ!
次は飴によるエンターテインメントをその両目で味わってみるのはいかがでしょうかっ!!
飴細工勝負は今から30分後に開始されます!
皆様ふるってご参加の程をっ!!』
とのアナウンスが街全体に流れる。
またもやリリィちゃんコールがあたりに響くが、それよりも気になることが。
飴細工勝負、とな?
『繰り返しますっ!
本日のメインイベントッ!!
飴職人による飴細工勝負が水晶砦内で――』
再度、響くアナウンス。
「あめざいく?」
「飴細工っていうのは柔らかくなるまで炙った飴を使って、いろいろな飴を作ることを言うんだ。」
「・・・?」
「まぁ、見に行ったほうが早いね。」
というわけで街の中央、水晶砦に来た。
さっきのアナウンスを聞いたのだろう。
人ごみがすごい。
荷物を置いてきたほうが良かったかもしれない。
受付にくると、受付の人に身体検査をされる。
女性は女性の職員に、男性は男性職員に。
肌着の姿になる必要があるらしい。
「申し訳ないのですが、身体検査をさせていただきます。
拒否する場合会場には入れないので、ご了承ください。」
「別にいいんですけど・・・飴細工の会場で悪さをする人なんているんですか?」
女性職員のところへ連れられた僕とやまい。
これから美人ともいえる目の前の女性に体のすみずみまで検査されるのだ。
というとちょっとドキドキする。
擬態がバレるかもとちょっと焦ったが、触腕が背中から生えてるのを見られない限りは・・・いや、見られても魔人ですよ!と言えばいいか。
ちなみに真っ裸を見られてもまずバレないクオリティなので、それこそ股間の割れ目をじっくり見られない限りは気づかれないはず。
まずそこまではしないだろう。
「あはは、まぁ言いたいことは分かるんですけどね。この街のアイドルのリリィちゃんはご存知ですか?」
「いえ、あまり・・・」
「そのリリィちゃんを拐おうとした輩が数年前から出没しはじめまして・・・かといって彼女と直接話せる機会はこのイベント時のみということもあって、ファンの人を思うと中止するわけにもいかず。警備を厳重にすることによって対応しようといった形になります。」
「なるほど・・・」
「ただ、その代わりと言ってはなんですが中で振舞われるお茶菓子の類は無料で好きに食べていいことになっているので、存分に楽しんでください。」
せめてもの不満緩和の措置かもしれない。
「あ、もういいですよ。」
「はい。」
「余計なお世話かもしれませんが・・・ブラジャーはつけたほうがいいと思いますよ?」
「え?
・・・あ、ああ、はい・・・考えておきます。」
当然、脱ぐ際に問題になったのがブラジャーである。
パンツはスカートやらが翻った際にノーパンってことになるとちょっと面倒なことになりそうだから最低限履いてるだけで、ブラジャーなんかはまず必要じゃない。
もともと僕はタコなのだ。
服を着る必要はないし、一日中人の姿をとっているわけでもない。
変に着込んでも脱ぐのが手間なだけである。
それもあって着けてないのだが・・・やはり不自然に写ったのかもしれない。
「若い時はいいけど、油断すると垂れちゃいます。
これは年長者からのアドバイスですね。
せっかくの良い形のおっぱいが崩れたら嫌でしょう?それに大きさも大きさですから重さでなおのこと・・・」
「ははは、そ、そうですね。今度からつけていこうと思います。」
あまりそんなことを言われても困るだけ。
そもそも僕の胸は脂肪ではなく筋肉である。筋肉であるがゆえに垂れない、というか垂れる様な器官というわけでもなし。
とはいえども柔らかさは本物よりも揉みごたえがある、というレベルだと思われる。
少し固いという程度だろうか。
一応緩めているので。
なんて話もほどほどに。
「・・・。」
「ど、どうしたの。
やまい?」
パンツ一丁で自分の小さな未成熟な胸をもみもみしながら難しそうな顔をしている。
「タコみたいにおっきくならない。」
「いや、やまいはまだ子供なんだからそんなもんだよ。」
むしろ10前後で多少なりとも膨らんでいる彼女は発育のいい方だ。
将来的には少なくとも手でつかめるくらいには大きくなると思われる。
「というか、別に大きくなくても全然悪いことなんてないんだよ?」
大きさを気にするような環境にはいなかったはずなんだけど、どういう心境の変化だろうか?
「でも・・・どうせならタコと一緒がいい。」
「いや、別にそこまで・・・ね?」
「ふふふ、そうですよ。あなたくらいの年頃ならそれだけ胸があれば将来的にはお姉さん並みになること間違いなしです。超えても全然おかしくないですよ?」
「タコと一緒がいいの。」
なるほど。今のセリフから察するに自分の好きな人、身近な人に対して「自分もあの人みたいに!」のような、子供がよくなる真似したがり精神、かもしれない。
よく男の子は父親の背中を見て育つというが・・・女の子は母親の胸を見て育つのかも。
なんて益体のないことを考えながら。
服を着たやまいの髪を手で梳かしつつ、会場へ足を踏み入れるとそこはシャンデリアが天井のいたるところに存在し、中央には大きなステージらしきもの。
そして周りには小テーブルがいくつもあり、まるで大きくて豪勢な結婚式場のような様相だ。
周りのお茶菓子を堪能しつつ、しばらく待つと時間になったのだろう。
ステージの真上の天井が割れて、そこからゴーレムが降ってきた。
ずどーんと大きな音を立てて着地すると同時にゴーレムの周りに花火のような・・・ヒーローショーばりの演出が起こる。
ステージはかなり頑丈で、砕けて石屑がお菓子に降りかかるなんてことはなく、少しだけ巻き起こったホコリもゴーレム登場と同時に発生した突風でお茶菓子に全くかからなかった。
突風は魔法だろうか。
ド派手な演出である。
そしてそのゴーレムの上にはチャイナ服を着た白い髪をポニーテールにしたつり目気味のクールビューティーがアイドルっぽい可愛いポーズを決めて立っていた。
『みんなぁーっ!
今日は来てくれてありがとぉっ!!』
という声に反応したか、周りの人たちが一斉にオォーッと沸き立つ。
やまいがびっくりして思わず僕に抱きつくくらいだ。
僕もびっくりした。
どうやら彼女がリリィちゃんとやらのようだった。
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