セブンスソード
52
「せっかくならこのまま一緒に食べれるかなって」
「そうだな」
「場所どうしようか? 落ち着いた場所の方がいいよね?」
いつも昼食をとるなら屋上が決まりだったがあそこは人気出しな、俺としてもできれば避けたい場所ではある。
「そう思ってね、探しておいたよ。行こ」
香織は小さく駆け出すと振り返る。桃色の明るい髪がふわりと持ち上がり楽しさを隠さない笑顔が俺を見る。
「聖治君、早く早く。時間終わっちゃうよ」
「分かったよ」
時間は経ったがそんなに焦ることはないのに。彼女の笑顔に俺もふと笑みを浮かべる。
「ここは」
連れられてきたのは体育館裏だった。ここなら確かに人はいないが。体育館側面の入り口に並んで腰掛ける。
「はい、どうぞ」
ニコニコの笑顔で手渡される弁当箱を受け取る。中身はなんだろう。
「サンドイッチ」
開いてみると中はサンドイッチだ。具材は王道で、たまごサンドにトマトとレタスのサンド、ハムを挟んだものなどだ。
「たくさん作ろうと思ったから簡単なものばかりになっちゃったけど」
「ううん! ぜんぜん! これだけで十分。どれもおいしそうだ」
「ふふ。食べてみて」
一緒にもらった使い捨てのおしぼりで手を拭き言われるがままに手に取った。まずはたまごサンドを選んでみる。
「いただきます」
それを一口口に入れる。
「んん、おいしい」
「本当?」
たまごのしっとりした食感とパンのふわふわした食感、定番だが安定のおいしさが口に広がる。
他のサンドイッチも食べていく。どれもおいしく次々と口に運んでしまう。そんな俺の様子を香織は笑って見つめていた。
「食べないのか?」
「もちろん、食べますとも」
二人して同じサンドイットを食べる。こうして体育館の隅で二人きりで昼食を取ると思い出す。
「懐かしいな。前の学校でもこうしたことあったよな」
「うん」
あれはいつだっただろうか。久しぶりに香織と二人きりになって、それで俺たちは似たような場所で食事をしたことがある。
「いろいろあったよね」
「ああ」
本当にいろいろあった。ここで語るには時間が足りない。それくらい多くのことが。
「最初聖治君には記憶がなかった。でもそれを取り戻して、それから聖治君の本当の意味での戦いは始まった。みんな自分を知らないのに、それでも聖治君はみんなのために戦っていた」
「当然だ」
当時のことを思い出す。香織の言うとおり二週目以降、俺とみんなは初対面の他人だった。誰も俺のことを覚えておらず言ってもなかなか信じてもらえなかった。だけどだ。
「たとえ覚えていなくても俺は覚えている。見捨てるなんてことはできない。それは香織も同じだろ? 香織だって俺が覚えいなくても頑張ってくれた」
「あはは。あの時はほんと驚いたな」
今だから笑い話だがあの時は本当に洒落になっていない。香織がどれだけショックを受けたか、今なら分かる。
「でも、やっぱり聖治君はすごいと思うな。いろいろな困難があった。何度もあった。だけど諦めなかった」
そう、なんだろうか。いや、そうかもしれない。それもいろいろな出会いがあって、みんなの支えがあったからだけど。でも、そう言われて悪い気はしない。
「みんなで生き残る。聖治君の言葉はみんなに希望と勇気をくれた。聖治君が私たちにじゃない、セブンスソードそのものに立ち向かう決意を表してくれた。それをきっかけとして私たちの胸にあった、本当の気持ちが揺さぶられた。みんな戦いなんてしたくない、生き残りたいって」
好き好んで殺し合いをする人などごく少数だ。みんなセブンスソードなどしたくないと思っていた。それはみんな同じ同じだ。
「一人を除いて、だけどな」
「お兄さんは除外とします」
「妥当だな」
「そうだな」
「場所どうしようか? 落ち着いた場所の方がいいよね?」
いつも昼食をとるなら屋上が決まりだったがあそこは人気出しな、俺としてもできれば避けたい場所ではある。
「そう思ってね、探しておいたよ。行こ」
香織は小さく駆け出すと振り返る。桃色の明るい髪がふわりと持ち上がり楽しさを隠さない笑顔が俺を見る。
「聖治君、早く早く。時間終わっちゃうよ」
「分かったよ」
時間は経ったがそんなに焦ることはないのに。彼女の笑顔に俺もふと笑みを浮かべる。
「ここは」
連れられてきたのは体育館裏だった。ここなら確かに人はいないが。体育館側面の入り口に並んで腰掛ける。
「はい、どうぞ」
ニコニコの笑顔で手渡される弁当箱を受け取る。中身はなんだろう。
「サンドイッチ」
開いてみると中はサンドイッチだ。具材は王道で、たまごサンドにトマトとレタスのサンド、ハムを挟んだものなどだ。
「たくさん作ろうと思ったから簡単なものばかりになっちゃったけど」
「ううん! ぜんぜん! これだけで十分。どれもおいしそうだ」
「ふふ。食べてみて」
一緒にもらった使い捨てのおしぼりで手を拭き言われるがままに手に取った。まずはたまごサンドを選んでみる。
「いただきます」
それを一口口に入れる。
「んん、おいしい」
「本当?」
たまごのしっとりした食感とパンのふわふわした食感、定番だが安定のおいしさが口に広がる。
他のサンドイッチも食べていく。どれもおいしく次々と口に運んでしまう。そんな俺の様子を香織は笑って見つめていた。
「食べないのか?」
「もちろん、食べますとも」
二人して同じサンドイットを食べる。こうして体育館の隅で二人きりで昼食を取ると思い出す。
「懐かしいな。前の学校でもこうしたことあったよな」
「うん」
あれはいつだっただろうか。久しぶりに香織と二人きりになって、それで俺たちは似たような場所で食事をしたことがある。
「いろいろあったよね」
「ああ」
本当にいろいろあった。ここで語るには時間が足りない。それくらい多くのことが。
「最初聖治君には記憶がなかった。でもそれを取り戻して、それから聖治君の本当の意味での戦いは始まった。みんな自分を知らないのに、それでも聖治君はみんなのために戦っていた」
「当然だ」
当時のことを思い出す。香織の言うとおり二週目以降、俺とみんなは初対面の他人だった。誰も俺のことを覚えておらず言ってもなかなか信じてもらえなかった。だけどだ。
「たとえ覚えていなくても俺は覚えている。見捨てるなんてことはできない。それは香織も同じだろ? 香織だって俺が覚えいなくても頑張ってくれた」
「あはは。あの時はほんと驚いたな」
今だから笑い話だがあの時は本当に洒落になっていない。香織がどれだけショックを受けたか、今なら分かる。
「でも、やっぱり聖治君はすごいと思うな。いろいろな困難があった。何度もあった。だけど諦めなかった」
そう、なんだろうか。いや、そうかもしれない。それもいろいろな出会いがあって、みんなの支えがあったからだけど。でも、そう言われて悪い気はしない。
「みんなで生き残る。聖治君の言葉はみんなに希望と勇気をくれた。聖治君が私たちにじゃない、セブンスソードそのものに立ち向かう決意を表してくれた。それをきっかけとして私たちの胸にあった、本当の気持ちが揺さぶられた。みんな戦いなんてしたくない、生き残りたいって」
好き好んで殺し合いをする人などごく少数だ。みんなセブンスソードなどしたくないと思っていた。それはみんな同じ同じだ。
「一人を除いて、だけどな」
「お兄さんは除外とします」
「妥当だな」
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