セブンスソード
44
中庭での戦いの後、俺は駆を連れて自室へと来ていた。あのまま帰すわけにもいかないからな。
それから香織とも合流する。みんなも連れてきてくれてここに全員が集まった。一人暮らし用のワンルームに七人が詰めて座り込む。
「それでなんだが」
さきほど、俺と駆は悪魔を目撃した。神の言葉を記した書物に出てくるという魔界の住人たち。本来ならあり得ない出来事だ。
だが、体験した。あれらはすべて起こったことだ。
「聞いてると思うが悪魔召喚師と戦ったんだ」
「マジかよ」
「それ本当なの?」
「ああ」
星都と此方が口を開く。その後香織が聞いてきた。
「聖治君、大丈夫だったの?」
「ああ、見ての通りだ」
「よかった」
ホッとしている。心配してくれたんだな。
「俺たちの知らないなにかが起きているのは間違いない。まずをそれを知らせておくべきだと思ってな」
さすがに一人で背負い込むことじゃない。こうなるなら最初の戦闘で伝えておくべきだった。
「ただ、目的や全容はなにも分からない。いったいなぜ戦っていたのか」
駆を見る。部屋の隅で座り込んでおり床を静かに見つめていた。
穏やかな状況じゃないのは確かだ。自分たちが通う学校で悪魔を使った殺し合いがされていたんだから。特に駆はショックが大きいはず。
「なあ、やつらは互いに戦ってたんだよな?」
「そうだ」
星都の質問に答える。悪魔召喚師同士による殺し合い。立場は違えどそれと似た状況を俺たちは知っている。
「まるであの時と同じだな」
緊迫した空気がさらに引っ張られた気がした。
「そうだな……」
そう、既視感すら覚えるこの状況は初めてじゃない。異能を使い、友人と殺し合いをさせる。その非道な儀式。
「セブンスソード」
かつて行われた、最凶最悪の儀式。
そのとき駆が少しだけ顔を上げ俺を見つめてきた。
「駆、悪いな。騙してたわけじゃないんだけどさ。俺たちのことは後で説明するよ。隠してた謝罪もその時する。ただ、俺たちのことは今は後回しにしてくれないか? 今は目の前のことを話し合いたいんだ」
駆は小さく頷いた。気丈だな。冷静で助かる。
「なにはともあれ、俺たちの学校でよからぬことが起きてるのは確かなようだな。放置できない大問題がよ」
星都が言う。
「うん。最近起きてる事件のこともあるしぃ、いつ他の人に被害が出るか分からないんだなぁ」
この町で起きている動物の殺害事件のことか。
「とはいえ相手の狙いが読めない内から動くのもね。要らぬ衝突を生みかねないし」
「でも、犠牲が出てからじゃ手遅れだよ! なんとかしないと!」
此方、日向ちゃんからも意見が出る。
それで、俺は香織さんを見た。
「香織はどう思う?」
いつもはよく喋る香織がさきほどから喋っていない。思い詰めた雰囲気で顔を伏せている。
だが、その口が小さく動いた。
「秩序の指輪(リング・オブ・オーダー)」
その言葉に全員の意識が集中した。
「以前説明したんだけど、覚えてるかな? この世界には超然とした力を扱う組織がいくつもあるって。その最大の組織が、ゼクシズ」
ゼクシズ。その言葉は覚えている。
「確か、構成員わずか三名ながら世界最大規模の魔術結社、だろ? 構成員は三人とも大規模な組織の長で、停戦協定だけが目的の組織だったと思うけど」
「うん」
俺の答えに香織は小さく笑った。
「私はセブンスソードで一度記憶が書き換わってる。だけど魂が肉体に戻ったからかな、以前の記憶を思い出せたの。だから多少だけどみんなよりもそこらへんは詳しいと思う」
「反対に、俺は駄目だな。本体の記憶はなんというかごちゃごちゃしてて。感情はあるのに記憶は不明瞭だ」
「カリギュラの影響だね。それで記憶が欠損してるんだと思う」
嫌になる話だ。仕方がなかったとはいえこうなるなんて。
俺の顔を見て香織の表情が少しだけ暗くなる。
「香織?」
「ううん!」
けれどすぐに元に戻り説明を続ける。
それから香織とも合流する。みんなも連れてきてくれてここに全員が集まった。一人暮らし用のワンルームに七人が詰めて座り込む。
「それでなんだが」
さきほど、俺と駆は悪魔を目撃した。神の言葉を記した書物に出てくるという魔界の住人たち。本来ならあり得ない出来事だ。
だが、体験した。あれらはすべて起こったことだ。
「聞いてると思うが悪魔召喚師と戦ったんだ」
「マジかよ」
「それ本当なの?」
「ああ」
星都と此方が口を開く。その後香織が聞いてきた。
「聖治君、大丈夫だったの?」
「ああ、見ての通りだ」
「よかった」
ホッとしている。心配してくれたんだな。
「俺たちの知らないなにかが起きているのは間違いない。まずをそれを知らせておくべきだと思ってな」
さすがに一人で背負い込むことじゃない。こうなるなら最初の戦闘で伝えておくべきだった。
「ただ、目的や全容はなにも分からない。いったいなぜ戦っていたのか」
駆を見る。部屋の隅で座り込んでおり床を静かに見つめていた。
穏やかな状況じゃないのは確かだ。自分たちが通う学校で悪魔を使った殺し合いがされていたんだから。特に駆はショックが大きいはず。
「なあ、やつらは互いに戦ってたんだよな?」
「そうだ」
星都の質問に答える。悪魔召喚師同士による殺し合い。立場は違えどそれと似た状況を俺たちは知っている。
「まるであの時と同じだな」
緊迫した空気がさらに引っ張られた気がした。
「そうだな……」
そう、既視感すら覚えるこの状況は初めてじゃない。異能を使い、友人と殺し合いをさせる。その非道な儀式。
「セブンスソード」
かつて行われた、最凶最悪の儀式。
そのとき駆が少しだけ顔を上げ俺を見つめてきた。
「駆、悪いな。騙してたわけじゃないんだけどさ。俺たちのことは後で説明するよ。隠してた謝罪もその時する。ただ、俺たちのことは今は後回しにしてくれないか? 今は目の前のことを話し合いたいんだ」
駆は小さく頷いた。気丈だな。冷静で助かる。
「なにはともあれ、俺たちの学校でよからぬことが起きてるのは確かなようだな。放置できない大問題がよ」
星都が言う。
「うん。最近起きてる事件のこともあるしぃ、いつ他の人に被害が出るか分からないんだなぁ」
この町で起きている動物の殺害事件のことか。
「とはいえ相手の狙いが読めない内から動くのもね。要らぬ衝突を生みかねないし」
「でも、犠牲が出てからじゃ手遅れだよ! なんとかしないと!」
此方、日向ちゃんからも意見が出る。
それで、俺は香織さんを見た。
「香織はどう思う?」
いつもはよく喋る香織がさきほどから喋っていない。思い詰めた雰囲気で顔を伏せている。
だが、その口が小さく動いた。
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「以前説明したんだけど、覚えてるかな? この世界には超然とした力を扱う組織がいくつもあるって。その最大の組織が、ゼクシズ」
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「確か、構成員わずか三名ながら世界最大規模の魔術結社、だろ? 構成員は三人とも大規模な組織の長で、停戦協定だけが目的の組織だったと思うけど」
「うん」
俺の答えに香織は小さく笑った。
「私はセブンスソードで一度記憶が書き換わってる。だけど魂が肉体に戻ったからかな、以前の記憶を思い出せたの。だから多少だけどみんなよりもそこらへんは詳しいと思う」
「反対に、俺は駄目だな。本体の記憶はなんというかごちゃごちゃしてて。感情はあるのに記憶は不明瞭だ」
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嫌になる話だ。仕方がなかったとはいえこうなるなんて。
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