セブンスソード
29
『喋れない僕だけどそれでも接してくれる。会話には入れないけど仲間はずれにされたことはない。本当にいい友達なんだ』
「そうなのか」
羨ましい。そう思うと同時にすごいと思う。相手が喋れなくたって友達としてやっていける、そんな人たちがいるのか。棗君が言うんだから本当にいい人たちなんだろう。
『小さい頃から一緒にいたから友達というより家族みたいな感じだけどね』
「はは、そうなんだ」
家族か、それはすごいな。
『僕には人とは違うところがある。それでみんなに要らぬ気を遣わせている。だけど今でも仲良くやってるよ。剣島君も同じかもしれない。不安かもしれないけど、避けてるばかりで良くなることはない。一度で良い。試しに会ってみたら? もしかしたら案外簡単なことかもしれないよ』
棗君……。
『まずは会ってみて、それから考えてみても遅くないと思うな』
最後の一文を見せる時の棗君は優しい顔をしていた。
避けていても良くはならない、か。分かってはいた。それは理解していたんだ。でもなかなか一歩が踏み出せなかった。
棗君の言葉は、そんな臆病な背中を押してくれた。
「ありがとう、そうしてみるよ。棗君に言って良かった」
棗君は顔を横に振っているけれど本当のことだ。
『少しでも剣島君の役に立てたならよかったよ』
少しなんてものじゃない。とびっきりだ。控え目に言っても最高の親切だった。
「なあ、棗君はその友達からなんて呼ばれてるんだ? 俺は名前で呼ばれててさ、だから棗君も名前で呼んでくれていいよ。気にしないなら君もなくていいし」
棗君とはもう他人なんかじゃなくて友達だ。それは彼も同じだったようで嬉しそうに頷いている。
『駆でいいよ。友達になれて嬉しいよ聖治』
「ああ。俺もだ駆」
新しく友人ができた。昨日の失態がきっかけというのが皮肉ではあるけれど。俺と共通点を持つ駆と出会えたんだ。よかった。それだけで心強く思える。
それから時間は経って休憩時間、俺は手洗い場で手を洗っていた。いつもなら憂鬱な気分だが今は少しだけ清々しい。これも駆のおかげだ。
なんていうんだろう、同じ弱さを持った、遠慮のいらない友人、っていうか。一人じゃないっていうのがものすごく落ち着く。
俺は手を洗い終え廊下を歩いた。
「駆?」
教室に戻る途中、駆を見つけた。顔を動かしていて誰かを探しているようだ。
「誰か探しているのか?」
俺に気づいた駆がスマホを取り出す。
『友達を探しているんだけど見当たらなくて。今日は来ているみたいなんだけど』
「そうなのか」
それは残念だな。駆も寂しそうだ。
「!?」
その顔が驚きに変わる。なんだろうかと振り向いた。
「お前!?」
そこにいた人物に俺も驚く。
なぜならば、そこには先日襲撃してきた悪魔召喚師。
赤い髪の、あの女の子がいたからだ。
「お前」
「あんた」
女の子と目が合う。
なんでここに。そう言おうとしたがその前に駆が走り出す。
「駆!?」
まずい。止めようとするが間に合わない。駆は女の子の前に立つとスマホを前に出す。
「え」
まさか、駆の友達ってあの子なのか? 
「なに、またその話題?」
駆が必死にスマホの画面を見せる。なのに女の子の方は面倒くさそうにしている。
「知ってるわよ。ただ返信してないだけ」
「!?」
女の子の返事に驚いている。慌てて文字を入力して見せている。
「くどい。何度聞かれても答えないから」
「!?」
女の子はそう言うが駆は諦めきれないようで何度も見せている。それだけ大事なことを聞いているんだと見ていて分かる。今の駆はかなり切羽詰まっている様子で普通なら答えるなりそうでなくとも何事か心配するレベルだ。
「そうなのか」
羨ましい。そう思うと同時にすごいと思う。相手が喋れなくたって友達としてやっていける、そんな人たちがいるのか。棗君が言うんだから本当にいい人たちなんだろう。
『小さい頃から一緒にいたから友達というより家族みたいな感じだけどね』
「はは、そうなんだ」
家族か、それはすごいな。
『僕には人とは違うところがある。それでみんなに要らぬ気を遣わせている。だけど今でも仲良くやってるよ。剣島君も同じかもしれない。不安かもしれないけど、避けてるばかりで良くなることはない。一度で良い。試しに会ってみたら? もしかしたら案外簡単なことかもしれないよ』
棗君……。
『まずは会ってみて、それから考えてみても遅くないと思うな』
最後の一文を見せる時の棗君は優しい顔をしていた。
避けていても良くはならない、か。分かってはいた。それは理解していたんだ。でもなかなか一歩が踏み出せなかった。
棗君の言葉は、そんな臆病な背中を押してくれた。
「ありがとう、そうしてみるよ。棗君に言って良かった」
棗君は顔を横に振っているけれど本当のことだ。
『少しでも剣島君の役に立てたならよかったよ』
少しなんてものじゃない。とびっきりだ。控え目に言っても最高の親切だった。
「なあ、棗君はその友達からなんて呼ばれてるんだ? 俺は名前で呼ばれててさ、だから棗君も名前で呼んでくれていいよ。気にしないなら君もなくていいし」
棗君とはもう他人なんかじゃなくて友達だ。それは彼も同じだったようで嬉しそうに頷いている。
『駆でいいよ。友達になれて嬉しいよ聖治』
「ああ。俺もだ駆」
新しく友人ができた。昨日の失態がきっかけというのが皮肉ではあるけれど。俺と共通点を持つ駆と出会えたんだ。よかった。それだけで心強く思える。
それから時間は経って休憩時間、俺は手洗い場で手を洗っていた。いつもなら憂鬱な気分だが今は少しだけ清々しい。これも駆のおかげだ。
なんていうんだろう、同じ弱さを持った、遠慮のいらない友人、っていうか。一人じゃないっていうのがものすごく落ち着く。
俺は手を洗い終え廊下を歩いた。
「駆?」
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「誰か探しているのか?」
俺に気づいた駆がスマホを取り出す。
『友達を探しているんだけど見当たらなくて。今日は来ているみたいなんだけど』
「そうなのか」
それは残念だな。駆も寂しそうだ。
「!?」
その顔が驚きに変わる。なんだろうかと振り向いた。
「お前!?」
そこにいた人物に俺も驚く。
なぜならば、そこには先日襲撃してきた悪魔召喚師。
赤い髪の、あの女の子がいたからだ。
「お前」
「あんた」
女の子と目が合う。
なんでここに。そう言おうとしたがその前に駆が走り出す。
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「え」
まさか、駆の友達ってあの子なのか? 
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