セブンスソード
27
「え、剣島君どうしたの?」
クラッカーを鳴らしていた一人が笑いながら聞いてくる。
事態を飲み込む。そして、もう手遅れなんだと理解した。
またしてしまった。こんな場所で、俺は。
急いで立ち上がる。みんなから逃げるように教室から駆け出した。走って走って、そのまま自宅に入る。ベッドに横になり瞼の上に腕を置いた。
「うっ」
悔しくて、情けなくて、心が悲鳴を上げている。
「くそ……ッ」
瞼の隙間から思いが溢れる。それを必死に堪えていた。
俺は、なにをしているんだ。なんでこんな。
「う……」
腕で押さえるのに、涙が止まらない。俺はしばらくの間ベッドでそうしていた。
翌日、昨夜はなにも食べる気が起きなくてそのまま眠っていた。洗面台で自分の顔を見るがかなりパッとしない。ぼさぼさしている感じだ。顔を洗いなんとか身なりを整える。俺は外に出た。
足取りは重く顔も自然と下を向く。あんなことがあって学校に行くのはかなり憂鬱だ。突然床に伏せて、大声を出して、そして勝手に帰ったりして。行けばみんなになんて言われるか。確実に変人だと思われる。
「…………」
かなり、気が重い。
そうして教室にたどり着いた俺は扉を開けた。近くにいた人が俺を見る。それにつられて周りのみんなも俺を見てきた。席に移動していくがひそひそと話をしているのが聞こえてくる。あまり気にしないようにして席に着くができれば早く時間が過ぎて欲しい……。
それからホームルームの前に先生から心配されたのを大丈夫ですと断りいつも通り授業が始まっていく。一限目は数学だ。机の中に手をいれ教科書類を探す。
あ。
そこで心が鷲づかみにされる。
しまった。昨日鞄もそのままだったから持ってきていない。これじゃ授業が受けられない。どうする? 隣の人に見せてもらうしかないが、昨日あんなことがあったのに見せて欲しいなんて言えない。こんなことに思い至らないなんて。どうすれば。
ギギ。
すると机を引きずる音が聞こえてきた。見れば隣の人が机を俺と合わせ、さらに教科書を見えやすい位置に置いてくれていた。
「え」
隣を見る。彼は俺を見て小さく笑っていた。
「えっと、いいのか?」
彼が頷く。
瞬間安心感が一気に広がっていく。あんなにも辛かったのが嘘のように気が晴れていく。
「ありがとう。確か」
隣に座る男子生徒。黒い髪に穏やかそうな雰囲気をしている彼の名前は、
「棗、駆君、だったよな?」
そう言うと棗君は笑って頷いた。次にポケットからスマホを取り出すとそこに文字を入力していく。それを見せてくれた。
『剣島聖治君だよね? 改めてよろしくね』
「ああ、俺の方こそ。よろしく。それとありがとう、教科書。めちゃくちゃ助かるよ」
棗君はまたもスマホに入力している。
『これくらいたいしたことじゃないよ』
彼の言うとおり教科書を見せるくらいよほど嫌いな相手でもない限りたいしたことじゃない。でも今の俺にとっては救いそのものだ。
「ううん、ありがと。嬉しいよ」
『どういたしまして』
棗君は笑ってスマホ画面を机に置き俺に見せている。
今は授業中だ、会話は憚(はばか)るべきだしだから俺も小声で話している。だとしてもわざわざスマホで文通しなくてもいいとは思うんだが。
「棗君は真面目だな。ちょっとくらい喋ってもいいじゃないか?」
文通ではどうしても時間が掛かるし、先生だってこれで怒りはしないだろう。
そう言うと棗君は寂しそうに笑いスマホに入力してくる。
『実は喋れないんんだ』
「え?」
顔を見る。笑ってはいるけれど少しだけ陰がある。
そういえば隣にいるのに彼が話しているのを見たことがない。
「ごめん、知らなくて」
棗君は顔を振り『気にしてないよ』と伝えてくれた。
そうだったのか。まさかそんな事情があったなんて。全然気づかなかった。というよりも自分のことばかりで周りが見えていなかったんだな。
その授業は棗君の教科書を借り一緒に読んでいた。授業が終わりお礼を言う。
「ありがとう。棗君は優しいな」
クラッカーを鳴らしていた一人が笑いながら聞いてくる。
事態を飲み込む。そして、もう手遅れなんだと理解した。
またしてしまった。こんな場所で、俺は。
急いで立ち上がる。みんなから逃げるように教室から駆け出した。走って走って、そのまま自宅に入る。ベッドに横になり瞼の上に腕を置いた。
「うっ」
悔しくて、情けなくて、心が悲鳴を上げている。
「くそ……ッ」
瞼の隙間から思いが溢れる。それを必死に堪えていた。
俺は、なにをしているんだ。なんでこんな。
「う……」
腕で押さえるのに、涙が止まらない。俺はしばらくの間ベッドでそうしていた。
翌日、昨夜はなにも食べる気が起きなくてそのまま眠っていた。洗面台で自分の顔を見るがかなりパッとしない。ぼさぼさしている感じだ。顔を洗いなんとか身なりを整える。俺は外に出た。
足取りは重く顔も自然と下を向く。あんなことがあって学校に行くのはかなり憂鬱だ。突然床に伏せて、大声を出して、そして勝手に帰ったりして。行けばみんなになんて言われるか。確実に変人だと思われる。
「…………」
かなり、気が重い。
そうして教室にたどり着いた俺は扉を開けた。近くにいた人が俺を見る。それにつられて周りのみんなも俺を見てきた。席に移動していくがひそひそと話をしているのが聞こえてくる。あまり気にしないようにして席に着くができれば早く時間が過ぎて欲しい……。
それからホームルームの前に先生から心配されたのを大丈夫ですと断りいつも通り授業が始まっていく。一限目は数学だ。机の中に手をいれ教科書類を探す。
あ。
そこで心が鷲づかみにされる。
しまった。昨日鞄もそのままだったから持ってきていない。これじゃ授業が受けられない。どうする? 隣の人に見せてもらうしかないが、昨日あんなことがあったのに見せて欲しいなんて言えない。こんなことに思い至らないなんて。どうすれば。
ギギ。
すると机を引きずる音が聞こえてきた。見れば隣の人が机を俺と合わせ、さらに教科書を見えやすい位置に置いてくれていた。
「え」
隣を見る。彼は俺を見て小さく笑っていた。
「えっと、いいのか?」
彼が頷く。
瞬間安心感が一気に広がっていく。あんなにも辛かったのが嘘のように気が晴れていく。
「ありがとう。確か」
隣に座る男子生徒。黒い髪に穏やかそうな雰囲気をしている彼の名前は、
「棗、駆君、だったよな?」
そう言うと棗君は笑って頷いた。次にポケットからスマホを取り出すとそこに文字を入力していく。それを見せてくれた。
『剣島聖治君だよね? 改めてよろしくね』
「ああ、俺の方こそ。よろしく。それとありがとう、教科書。めちゃくちゃ助かるよ」
棗君はまたもスマホに入力している。
『これくらいたいしたことじゃないよ』
彼の言うとおり教科書を見せるくらいよほど嫌いな相手でもない限りたいしたことじゃない。でも今の俺にとっては救いそのものだ。
「ううん、ありがと。嬉しいよ」
『どういたしまして』
棗君は笑ってスマホ画面を机に置き俺に見せている。
今は授業中だ、会話は憚(はばか)るべきだしだから俺も小声で話している。だとしてもわざわざスマホで文通しなくてもいいとは思うんだが。
「棗君は真面目だな。ちょっとくらい喋ってもいいじゃないか?」
文通ではどうしても時間が掛かるし、先生だってこれで怒りはしないだろう。
そう言うと棗君は寂しそうに笑いスマホに入力してくる。
『実は喋れないんんだ』
「え?」
顔を見る。笑ってはいるけれど少しだけ陰がある。
そういえば隣にいるのに彼が話しているのを見たことがない。
「ごめん、知らなくて」
棗君は顔を振り『気にしてないよ』と伝えてくれた。
そうだったのか。まさかそんな事情があったなんて。全然気づかなかった。というよりも自分のことばかりで周りが見えていなかったんだな。
その授業は棗君の教科書を借り一緒に読んでいた。授業が終わりお礼を言う。
「ありがとう。棗君は優しいな」
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