セブンスソード

奏せいや

14

 聖治が去っていった後、星都たちはその場から動けず住宅街に残されていた。みな俯き加減で沈黙している。そんな中香織は心配そうに聖治が走っていった方向を見つめていた。

「聖治君」

 突然の奇行に理由も告げずに消えた聖治。疑問と困惑。心配する気持ちが晴れることなく胸に残り続ける。

 それは彼女だけじゃない。ここにいる全員が同じだ。どうしてあんなことを? 本人もいなくなり答えは分からない。

 彼に対する心配と理由が分からないことへの不安。この事態に皆どうしたものか黙り込んでいる。

「みんな、今時間空いてるか?」

 そこで声を挙げたのは星都だった。尋ねる声に反対がないことを確認すると星都は来た道を戻り始めた。

「ちょっと話そうぜ」

 星都は答えを聞くまでもなく歩いている。みなは顔を見合わせた後それに続き歩き出す。

 普段放課後に集まるなら近くのファミレスでドリンクバーがお決まりだが星都が入っていったのは喫茶店だった。その一番奥、周りに人がいないテーブル席を選んで座っていく。

 奥に星都、その隣に力也。二人の前には奥に香織、真ん中に此方、隣に日向が座っている。最初に注文を店員さんに伝え届くのを待つ。その間ずっと無言だった。緊迫した空気が漂いしばらくすると店員さんが各自の飲み物を持ってきてくれた。

「ごゆっくりどうぞ」

 店員さんが会釈しその場を立ち去っていく。

 それでこの場は五人だけになる。だが会話はなかなか始まらなかった。

 話があると言って呼んだ星都がなかなか話を持ち出さない。それでみなも彼の話を待ったまま沈黙している。

 飲み物が到着ししばらくしてから星都はコーヒーを飲んだ。ゆっくりと喉に通しカップを受け皿に置く。黒い水面が揺れ波が収まっていく様子をじっと見つめている。

 そして波が消える。コーヒーの表面に星都の顔が映った。

「あいつのことなんだがな」

 みなが星都を見る。真剣な面もちで彼の言葉を聞く。

 あいつとはもちろん聖治のことだ。

「セブンスソード。あれ以降様子がおかしいのはみなも分かってると思う」
「でもそれは!」
「分かってる」

 香織が口を挟む。聖治の様子が変わってしまったことを先手でフォローしようとする。だがそれは星都に制された。言いたいことは星都も分かっている。

「あんなことがあったんだ、普通じゃいられないさ。誰だってな」

 聖治の様子はセブンスソード以降明らかにおかしい。それは今日の昼食もそうだし住宅街でいきなりスパーダを出すのもそう。そうでなくても異変は前からあった。それがこうなった以上なんとかしなければならない。

 聖治は問題を起こしてしまった。香織は彼が責められるのではないかと思い庇おうとしたがそうではない。

 星都が続ける。

「最初に言っておくが、俺はなにもあいつを責めるつもりでもましてや嫌いになったわけでもない。あいつは俺の親友だ。今だってな」
「なんだ~」

 それを聞いて日向ちゃんが緊張の糸を切り脱力している。風船に穴が開いたように緩んでいた。

「なんだよその反応」
「だってさあ、てっきりそう言うのかと思ってた」
「お前なあ」
「ごめんってば~」

 日向ちゃんは謝るが実際それくらい空気は張りつめていた。あの場の雰囲気では勘ぐってしまうのも無理はない。

「ごめん」
「ん?」

 日向ちゃんに続き此方も謝った。

「私も最初に言っておくわ。ごめん。もしかしたらそうなんじゃないかって、ちょっと心配してた」

 謝ってはいるがその顔は嬉しそうだ。頼んだアイスティーの中身を微笑みながらストローで回している。

「お前もなー。んなことあるわけないだろ。あいつは俺の相棒だぜ?」
「それで、話っていうのは」

 本題に戻す。此方も表情を引き締め星都を見る。それで星都も顔つきを元に戻した。

「あいつの様子なんだがな」

 聖治の最近の態度は以前のころを知っているからこそ見ていて辛いものがある。星都は思い返すがそのことに目線が下がっていた。

「いつもなにかを警戒している。落ち着きがなく緊張している。そして過剰な反応。思い当たるだろ?」
「最近のあいつの特徴、そのものね」

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