セブンスソード
11
こんなことをしている場合か? やつらは必ず攻めてくる。このままだと未来は悪魔によって人類は滅ぼされる。今だってもしかしたらその準備をしているかもしれない。この時も、気づかないだけですぐそばにいるかもしれないのに。
なんとかしないと。
そう思うと息が乱れる。いつの間にか体は緊張し脈が早まっていくのが分かる。
「なあ相棒、お前はどう思うよ?」
「え?」
いきなり話題を振られ頭が真っ白になる。
「目玉焼きには醤油だよな!?」
「えー。ケチャップに決まってるじゃん、聖治さんはどう?」
どうやら目玉焼きの調味料で争っているみたいだ。
「えっと……どっちでもいいかな」
「んだよつれねーな」
「分かってないなー。本当はケチャップ派だけど星都さんに気を遣ってあげたんだって!」
「ふざっけんな! お前なに勝手に超解釈かましてんだよ!」
「そうかもしれないじゃーん」
「お前ポジティブ越えて妄想じゃねーか」
「なにぃい!」
みんな笑っている。二人のやりとりは天然の漫才みたいだ。それを見て他の三人も盛り上がっている。本当にみんな楽しそうだ。
その輪の中に、俺だけが入れずにいる。
笑えない。そんな気分になれない。いつ攻められるか分からないのに笑うなんて出来ない。
この時をやつらに狙われたら。むしろそう思ってしまう。
「止めろー!」
「!?」
遠くから男子の悲鳴が聞こえてきた。
まさか、本当に!?
悪魔が攻めてきたのか?
すぐに立ち上がり振り返る。
離れたところ。そこには男子数名のグループがいた。見ればその内の一人が肩を抱えて痛がっている。
「痛ってぇええ! お前手加減しろってマジで! お前次ぜってー本気で殴るからな!」
そう言って二人はじゃんけんをし始めた。
どうやらじゃんけんをして負けたら肩パンを受けるという遊びをしていたみたいだ。
悪魔じゃなかったのか。
一気に上がった緊張が落ち着いていく。いつの間にか上がっていた呼吸を繰り返す。
「聖治君?」
香織から心配そうに声を掛けられた。
振り返ればみんな俺を心配そうに見つめている。俺はゆっくりと足下を見る。そこには膝に置いていた弁当箱が落ちて中身がこぼれていた。
「ごめん!」
すぐに拾い弁当箱に入れていく。まだだいぶ残っていたのに。急いでおかずを弁当に戻す。次にこぼれたごはんをまとめて掴んで戻していくが床についている分がなかなか戻せない。指を立て米粒をかき集めていく。
その手を、香織が握ってきた。
叱られると思った。
「大丈夫だよ」
俺をまっすぐと見つめて、香織は優しい顔をしていた。
「誰にだってミスはあるし。私の分まだあるから、ね?」
怒るどころか、自分の分を差し出している。
その顔が、その優しさが直視できない。
再び立ち上がる。あんなに盛り上がっていたのに今では静まり返っている。
「悪い」
みんなを視界に入れないようにして、俺は俯いていた。
「先に戻る」
俺は屋上を後にした。
誰にも会いたくなくて、俺はトイレの個室に入っていく。ズボンを履いたまま便器に腰掛ける。
「はあ…………クソッ」
みんなと上手く話せない。それどころか俺がいることで迷惑をかけてしまう。最悪だ。どうすればいい、俺はどうすればいいんだ。
考えても分からない。答えを出そうと躍起になっても焦りが高まるだけだ。光の見えない暗闇を必死に走って息ばかりが上がる。そんなゴールの見えない焦燥感に包まれる。なんとかしたいと思っているのに。
ふと、自分の手が震えているのに気がつく。こんなに思っているのに体はお構いなしに反応している。俺がどんなに考えても無駄だと言わんばかりに。
ふざけるな。
俺は震える手を壁にぶつけた。足りなかったので強めにもう一度叩く。
「はあ」
ため息が出る。胸が重い。自分が嫌になる。
自己嫌悪の重みで心がへし折れそうだ。
そんな中午後の始まりを告げるチャイムが鳴る。
「…………」
俺は教室へと向かった。
なんとかしないと。
そう思うと息が乱れる。いつの間にか体は緊張し脈が早まっていくのが分かる。
「なあ相棒、お前はどう思うよ?」
「え?」
いきなり話題を振られ頭が真っ白になる。
「目玉焼きには醤油だよな!?」
「えー。ケチャップに決まってるじゃん、聖治さんはどう?」
どうやら目玉焼きの調味料で争っているみたいだ。
「えっと……どっちでもいいかな」
「んだよつれねーな」
「分かってないなー。本当はケチャップ派だけど星都さんに気を遣ってあげたんだって!」
「ふざっけんな! お前なに勝手に超解釈かましてんだよ!」
「そうかもしれないじゃーん」
「お前ポジティブ越えて妄想じゃねーか」
「なにぃい!」
みんな笑っている。二人のやりとりは天然の漫才みたいだ。それを見て他の三人も盛り上がっている。本当にみんな楽しそうだ。
その輪の中に、俺だけが入れずにいる。
笑えない。そんな気分になれない。いつ攻められるか分からないのに笑うなんて出来ない。
この時をやつらに狙われたら。むしろそう思ってしまう。
「止めろー!」
「!?」
遠くから男子の悲鳴が聞こえてきた。
まさか、本当に!?
悪魔が攻めてきたのか?
すぐに立ち上がり振り返る。
離れたところ。そこには男子数名のグループがいた。見ればその内の一人が肩を抱えて痛がっている。
「痛ってぇええ! お前手加減しろってマジで! お前次ぜってー本気で殴るからな!」
そう言って二人はじゃんけんをし始めた。
どうやらじゃんけんをして負けたら肩パンを受けるという遊びをしていたみたいだ。
悪魔じゃなかったのか。
一気に上がった緊張が落ち着いていく。いつの間にか上がっていた呼吸を繰り返す。
「聖治君?」
香織から心配そうに声を掛けられた。
振り返ればみんな俺を心配そうに見つめている。俺はゆっくりと足下を見る。そこには膝に置いていた弁当箱が落ちて中身がこぼれていた。
「ごめん!」
すぐに拾い弁当箱に入れていく。まだだいぶ残っていたのに。急いでおかずを弁当に戻す。次にこぼれたごはんをまとめて掴んで戻していくが床についている分がなかなか戻せない。指を立て米粒をかき集めていく。
その手を、香織が握ってきた。
叱られると思った。
「大丈夫だよ」
俺をまっすぐと見つめて、香織は優しい顔をしていた。
「誰にだってミスはあるし。私の分まだあるから、ね?」
怒るどころか、自分の分を差し出している。
その顔が、その優しさが直視できない。
再び立ち上がる。あんなに盛り上がっていたのに今では静まり返っている。
「悪い」
みんなを視界に入れないようにして、俺は俯いていた。
「先に戻る」
俺は屋上を後にした。
誰にも会いたくなくて、俺はトイレの個室に入っていく。ズボンを履いたまま便器に腰掛ける。
「はあ…………クソッ」
みんなと上手く話せない。それどころか俺がいることで迷惑をかけてしまう。最悪だ。どうすればいい、俺はどうすればいいんだ。
考えても分からない。答えを出そうと躍起になっても焦りが高まるだけだ。光の見えない暗闇を必死に走って息ばかりが上がる。そんなゴールの見えない焦燥感に包まれる。なんとかしたいと思っているのに。
ふと、自分の手が震えているのに気がつく。こんなに思っているのに体はお構いなしに反応している。俺がどんなに考えても無駄だと言わんばかりに。
ふざけるな。
俺は震える手を壁にぶつけた。足りなかったので強めにもう一度叩く。
「はあ」
ため息が出る。胸が重い。自分が嫌になる。
自己嫌悪の重みで心がへし折れそうだ。
そんな中午後の始まりを告げるチャイムが鳴る。
「…………」
俺は教室へと向かった。
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