セブンスソード

奏せいや

233

 日向ちゃんは陽キャだからな、こういうのは好きじゃないんだろう。対して此方は嫌いじゃないようだから対照的な姉妹だ。

「聖治、気付いてる?」
「なにがだ」

 そこで此方が俺に近づいた。

「言ったでしょ、ここは静か過ぎるわ。この世界が人類が滅びた後だとしてもよ、それなら悪魔が跋扈しているはず。なのに姿どころか声すら聞こえない」
「それは」

 それは俺も思っていたことだった。

 ここは悪魔に侵攻された世界。なら人はいなくても悪魔はいるはず。それを警戒して今まで歩いていたんだが遭遇することなく進めていた。俺は運がいいくらいにしか思っていなかったが此方は違ったようだ。

「放棄された地区なんじゃないのか?」

 此方に星都が聞き返す。

「可能性はあるけれど。でも殺戮王が地上に侵攻したとき地球全土が戦争状態だった。それこそ安全地帯なんてどこにもなかったわ。攻めた以上占拠してるもんだけど」
「うーん、悪魔の考えは分からねえからな。けっきょくなんで攻めてきたのかも分からなかったし」
「とりあえず状況が分からない。なにが起こっても大丈夫なように覚悟だけはしておいて」

 真剣な表情で言われ俺は頷く。

「分かった、ありがとな」
「え?」

 此方が少しだけ意外そうな顔をする。

「お前みたいにアドバイスをくれるやつがいると助かるよ。俺はそういうのに疎いからさ」
「まったく。しっかりしてよね、香織を助けるんでしょ」
「ああ、そうだな」

 此方が小さく笑う。それに合わせ俺も頬を緩ませた。

「私もいるんですけどー?」
「ああ、日向ちゃんもありがとな」
「へへ~」

 まったく、寂しがり屋なのは相変わらずか。別に張り合わなくてもいいと思うが。

「みんながいるから心強いんだなぁ」

 そんな中力也まで呑気なことを言っている。

「なに言ってるんだ、力也にも期待してるんだからな」
「でも僕にできるかな?」
「大丈夫、お前はいざとなれば爆発するタイプだ。やれるさ」

 みんなが知ってるかどうか知らないがあの時の力也はなんというか怪物じみた強さだったからな、敵だと怖いが味方なら心強い。

 それで俺たちはホーリーカリスの反応を見ながら町を進めていった。反応からまだ先のようだ。

「近づいてはいるみたいだがまだ距離はありそうだな」
「どうする、俺が先に見ていこうか?」

 星都からの提案に一考してみるが俺は顔を横に振る。

「いや、単独行動は危険だ。偵察するなら相手の居場所が分かった時にしよう。どれだけ離れているかまだ分からないしな」
「じれったいぜ」
「星都さん、一番じれったいのは聖治さんなんだから抑えないと」
「わーってるよ、うるせえな」
「えー、私うるさくないし。むしろ逆だし」
「お子ちゃまが」
「大人げない」
「ああ?」
「なにぃ?」
「二人ともうるさい!」
「へーい」
「私悪くないも~ん」
「まったくもう」
「大変なんだなぁ」
「ははは……」

 背後でみんなの話し声が聞こえる。こんな状況なのに警戒心の足りないのが若干いるようだがそんな普段と変わりない声が聞こえてくるとどこか安心する。肩に力が入り過ぎているのかもしれない。

「おい」

 そこで星都が声を挙げた。

「星都さーん」
「ちげえ! 上見ろ」

 言われて空を見てみる。曇天に覆われた暗い空が広がるが、前方に赤い魔法陣が組み上がり始めていた。

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