セブンスソード

奏せいや

228

 香織が続けて言う。

「セブンスソードは終わった。けれどまだ解決していない問題がある。このままじゃ間違いなく未来は現実のものとなる。それをなんとかしなくちゃいけない」

 香織の表情は真剣だ。彼女の言葉に俺も内心で頷く。

 悪魔による侵攻。それによって未来では人類は滅亡した。それをこの世界でも起こしてはならない。

「で、具体的にどうするかだ」

 そこで星都が話し出した。

「このままだと大変なことになるのは分かっている。だがどうすればいいのか、それが分からねえ。この世界には七本のスパーダがある。侵攻してきたなら戦うつもりだ。前の世界の時よりうまくやれるだろう。だがだからといってなにもせず待ってることはない。備えが必要だ」

 前の世界ではスパーダが欠けていた。今回はみんながいる。だから最低限は満たせているが俺たちにはそれ以上が必要だ。

「悪魔の数は膨大だ。そして単体での戦力は人間を大きく越えてる。俺たち七人でどうにかなる数じゃない」
「となると、仲間を増やす必要があるな」

 単純に数で負けているんだ。なら俺たちも増やさなければならない。

「そういうことだ。悪魔の侵攻、これに対抗できる人を見つけること。そして協力体制を築くこと。それが目下の目標だろう」
「でも星都さん、仲間を見つけるってどうやって?」
「そこなんだよなー」

 星都が背中を反り青空を仰ぐ。なんでもいいからアイディアが欲しいが見上げる先には雲が浮かぶばかりだ。

「警察とか政府に言ってみるっていうのはどうかなぁ?」
「聞いちゃくれないだろ。ガキのいたずらさ」
「やっぱりそうだよねぇ」

 ダメもとで言ったんだろうが力也も残念そうだ。

「そもそも私たち以外にいるの? 対抗できるやつなんて」
「俺が知ってる範囲だと魔卿騎士団。それ以外だと」

 此方が聞いてくる。俺は顎に手を添えかなり前香織が言っていたことを振り返っていた。

「以前香織が言っていたことなんだが、この世界にはゼクシズと呼ばれる組織があり、その内の一人が魔卿騎士団の前団長。他には悪魔召喚士を率いる秩序の指輪(リング・オブ・オーダー)。魔術師の集団である週末の図書会。それぞれの首領が所属しているらしい」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「えーと、みたいだね。その頃のことはもう覚えてないんだけど……あはは」

 以前の香織は本当にいろいろなことを知っていたよな。今更だがもっと聞いておけばよかった。

「聞いた話だと、そのリング・オブ・オーダーっていうのは無理そうね」
「ああ、むしろ敵側だろ」

 此方の意見に星都も同意する。

「じゃあ週末の図書会ってとこか?」
「候補の一つではあるだろうけれど実態が不明だし油断はならないわ。楽観は禁物ね」
「残るは魔卿騎士団か」

 星都の一言にみながその可能性を考えていた。

 魔卿騎士団。もっとも身近に聞こえる名前だが俺たちにはなにも分からない。

「思えばそれも謎の組織だよな。けっきょくセブンスソードもよく分からんまま終わっちまったし。それ自体は別にいいんだけどよ。なにも分からないっていうのはな。セブンスソードは団長創造の儀式。それが失敗に終わった今どうなってることやら」
「もしかしたら、接触してくるかも」

 香織の一言に緊張の糸が引っ張られる。

「魔卿騎士団にとって私たちは不安要素のはず。団長の座は今も空席だろうし新たな団長を誰にするか、その選定に揉めていると考えるのが普通。そこにセブンスソードは失敗したとはいえ生き残りがいるとなれば選定に絡んでくる」

 確かに。その可能性は捨てきれない。

「そうでなくてもなにをするか分からないんだから、放っておくなんてかなり危険なはずよ」
「沙城の言うことは尤もだ。俺もそう思う。むしろ今まで接触する素振りすらないことが不思議なくらいだ」

 それもそうだ。セブンスソードが失敗したことは魔卿騎士団側も知っているはず。なぜやってこない?

「なにか事情があるとか?」
「そうだな、泳がせてなにか不祥事を起こしてから処分するか、構っていられないほどに内部が混乱しているとか。考えればいくつか浮かぶがけっきょくのとこ分からんな」
「だが、いずれくるだろうな」

 現在の魔卿騎士団が俺たちをどう思っていようがいつまでも放置していていい問題じゃない。

「魔卿騎士団にとって俺たちは邪魔ものだ。もし接触してきた時は警戒してくれ」
「でもある意味ではチャンスだぜ? その団長の選定に入り込んで勝ち残れば魔卿騎士団を指揮できるってことだろ? 俺たちの中で団長候補といえば」

 そこで星都が俺を見た。それに続いてみんなも俺を見る。

「その時は頼んだぜ」

 俺の肩をぽんぽんと叩かれる。

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