セブンスソード

奏せいや

226

 教室に入り自分の席へ着いていく。こうした流れももう当たり前のものになっている。最初は感じていた違和感も今ではない。

 今日も一日の始まりだ。

 それで昼休み、俺たちは屋上に集まっていた。香織や星都、力也はもちろんのこと此方や日向ちゃんもいる。俺たちは円陣を組むように座りそれぞれの弁当を置いてある。こうしたことはいつものことなので女子組は大きめのハンカチを敷いてその上に座っていた。

「はい、聖治君」
「ありがとうな、いつも」

 隣に座る香織から弁当を受け取る。香織からもらう弁当は毎日のちょっとした楽しみだ。

「聖治さんいいなー。香織さんからいつもお弁当作ってもらえるなんて」
「日向ちゃんだってそれ此方の作ってくれた弁当だろ?」

 安神姉妹はいつも弁当持参だ。たいていは此方が作っている。

「そうだけど~、たまには香織さんのお弁当がたべたーい!」
「いつも私で悪かったわね」
「じゃあ日向ちゃん私のと交換する? 私も此方ちゃんが作ったお弁当食べてみたかったんだよね」
「ほんと!?」
「え」
「うん、私はいいよ」
「いぇーい、やった~」
「えっと、香織? あまり期待しないでね?」
「しちゃうんだなー、これが」
「もう。期待したところで昨日の残り物よ」
「それなら私も同じだし」
「あ! ジンぶたじゃん! 香織さん昨日ジンぶただったの?」
「ジンぶた?」
「豚の生姜焼き」

 あー。ジンってジンジャーのジンか。

「それだと豚キムチだとキムブタになるのかな」
「え、豚キムチはBKだよ?」

 え?

「なあ、それっておかしくないか? だって」
「もーう、聖治さん分かってないな~」

 日向ちゃんがこれ見よがしに言ってくる。分からねえよ。どういうことだよ。

「こういうのは理屈じゃなくてフィーリングなんだって」
「そうなのか」
「そうなの」

 日向ちゃんは自信満々に言っている。どうも俺には女子高生のノリはまだ難しいようだ。

 そうしていると香織が日向ちゃんの弁当を開いた。

「此方ちゃんのお弁当はコロッケ? おいしそう」
「そうそう。昨日いっぱい作ったもんねー」
「あんなに手間かかるのに一食分だけなんて時間の無駄でしょ」
「いいなー、手作りのコロッケってそれだけでおいしいよね」
「マジそれ! できたてめっちゃおいしかったよね?」
「まあ、味はよかったわね」

 香織の弁当にはコロッケが三個入っている。色もいいしおいしそうだ。二人でコロッケを作る場面が容易に想像できる。きっと日向ちゃんがはしゃいでいるのを此方が注意しながら作っていったんだろう。二人の楽しそうな調理姿が目に浮かぶ。味もいいそうで此方もまんざらでもない様子だ。

 それに比べ俺は香織の手作り弁当とはいえ実質なにもしていないし星都は売店のパン、力也もコンビニ弁当二つだ。

「おーおー女子力の高い会話だぜ。おう力也、俺たちは筋トレの話で対抗しようぜ」
「なんの対抗なんだなぁ」

 まったくだ。気持ちは分からんでもないが。

「そうだぞ星都、そんな話より車の話をしよう」
「男子力たけーな」
「それなら僕は肉の話がしたいんだな」
「それもありだな」
「え、肉の話なら私も入りたいんだけど」

 日向ちゃんが食いついてきた。肉だけに。

「駄目だ駄目だ、これは男の話だ。女はむこういってろ」
「えー、いいじゃんか私もお肉好きだもん!」
「お前はそのまま女子力高い話してればいーじゃねえか。お洒落なサラダやスイーツで盛り上がってろ」
「そういうのセクハラなんですけどー?」
「ケッ。相棒、お前からも言ってやれ」
「日向ちゃんはハンバーグとステーキだったらどっち派なんだ?」
「このヤロォオオオオ!」
「がああああ~」

 星都が俺の首を絞めながら前後に振ってくる。

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