セブンスソード

奏せいや

209

「相棒! 俺たちも手を貸すぜ!」
「うん、僕たちも一緒なんだな!」
「聖治さん一人に戦わせたりしないよ」
「私も戦うわ」
「聖治君、私も」

 みんなが声を掛けてくれる。

 けれど、俺は片手でみなを制した。

「まさか、お前一人でやるつもりか?」
「聖治君? 無茶だよぉ、魔来名と一人で戦うなんて」
「いや、俺一人でやらせてくれ。この戦いは俺がしなくちゃならないんだ」
「でも聖治さん」
「いいの?」
「ああ」

 みんなの気持ちは嬉しい。だけどここは俺のわがままを通させてくれ。

 この人にしてもらったこと、その思いは俺で返したい。いや、俺が返さなくちゃならないことなんだ。

 隣で香織が心配そうに見つめてくる。

「大丈夫?」

 不安そうな声。これから戦おうとしているんだから当然だ。

 そんな彼女に、俺は振り返る。

「俺は諦めたりしない。最後まで信じる、だろ?」

 最後にふっと笑ってみせる。

 そう言うと香織は不安そうだった顔を柔らかくし頷いた。

「分かった。信じてる」
「ありがとう。必ず戻る」

 俺は歩き出し兄さんの前に立った。二人きりの戦い。これは俺と兄さんの互いに譲れないものをぶつけ合う決闘だ。

「俺は全員でも構わなかったんだが? 今からでも呼んでくればいい、意地で死にたくはあるまい」

 記憶はなくても性格は変わらないな。本当に相変わらずだ。懐かしさすら感じる挑発に怒りなんてなくむしろ笑ってしまう。

「お前一人でなにができる。死ぬだけだぞ」

 兄さんは強い。あの管理人すら倒した男だ。そんな人に俺が一人で挑んだところで結果は見えている。それが分かっているから魔来名も言う。

 俺は表情を引き締めた。目の前に立つ男を真っ直ぐと見る。

「魔来名。俺は今まで多くの世界を巡ってきた。似ていたけれど、まったく違う世界だった。何度も戸惑い、何度も出会い、何度も戦ってきた。時には友と戦い、時には敵だった人とも仲間になった。その最後は悲劇ばかりだったけど、その連なる世界の中で、俺は――」

 言っていて思い出す。本当にいろいろな世界があった。誰も俺を知らない世界で、関係が変わった仲間と出会ってきた。

 それは喜ばしいことばかりではなかったけれど、それはどれも掛け替えのないものだった。

 そして、そこで俺は得た。

 それこそが、

「七本の剣を手に入れたんだ! それはみなと出会ったからこその力。忘れたりしない。なくなったりしない、俺が歩いてきた旅で得た、絆の力だ!」

 俺は手を前に出す。この胸に宿る思い、そして魂に刻まれた力を込めて、俺は念じる。

「これはその証。思い出させてやるよ魔来名。ここで旅路を終わらせる!」

 俺を守るという、あんたの旅を。

「さあいくぜ! 繋がる思いが新たな世界の扉を開ける。七色の絆よ、未来に架かる虹となれ!」

 掲げた手の平から現れる光。それは一つではなかった。

「マジかよ!?」
「きれいなんだなぁ」
「すごい!」
「あれは」

 パーシヴァルが現れる。それと同時に水色、緑、白、赤、ピンク、そして紫の光の玉が刀身の周囲を回り、剣と溶け合った。

 刀身が七色に輝く。俺たちの絆が一つとなって、ここに虹となる!

「神剣、聖杯(ホーリーカリス)!」

 これが七つのスパーダが合わさった剣。セブンスソードが目指した完成形。

 神剣、ホーリーカリス。

 平行世界を旅してきた中で俺は累計で七つの剣を得てきた。これはその結果。悲劇しかないと思えた世界も無駄なんかじゃなかった。そこにあった出会いも思いも今ここで結実(けつじつ)する。

 俺はホーリーカリスを掴む。長い旅を経て得た俺の答え(せいはい)。これを掴むために今までがあったんだ。

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